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紅の術者  作者: 結城光
第1章・1節 学園編
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第22話 報酬



「ヤスラ先生……」


「イツキ君、人の顔を見てガッカリしないの」



いや、朝からボコボコにされてヤスラ先生の顔なんか見たらそりゃこんな声も出ますわ。一応こっちもケガ人なんですよ。なんかみんなが大げさにするから創造能力で自分の体を治す事も出来なかったし。出来るのか? なんか人の命に関わる事は無理とか言ってたけど治すのは別なのか? 今度試してみよう



「で? 先生なんのようですか?」


「あなた達、前に集まった場所は覚えているわね? そこに今すぐ集合。すぐに私も行くから」



俺達の意見は何も聞かず自分の用件だけ言うとさっさと走っていってしまった。




「えっと、前に集まった場所って……」


「教室だったはずだぞ。イツキ君、歩けるかな?」


「多分大丈夫だ」



そういって歩き出そうとしたが、横からティアとアイリが肩を貸してくれてヨミは後ろから支えてくれた。ヨミまでもが俺に気を使ってくれるという事はさっきのO・HA・NA・SI☆が役に立ったのか?



「さっきの埋め合わせよ」


「ボクもちょっとやりすぎちゃったかなって思って」


「イツキの体の事を考えなかった事は謝る。今度はちゃんと元気な時にやる」


「おい、元気な時にもやんなよ」



とりあえず他の人の視線を無視しながら歩き出す。うん、セイウェンもかなり近いから近くの人(男限定)が嫉妬の目で見ているのが分かる。

女子の方がキャーキャー騒いでるのは意味が分からないけど。



「ねぇ、あれが噂の『紅』?」


「あのSクラスの?」


「噂には聞いてたけどイツキ君って……」


「いやいや近くの人たちだって……」



俺がなんなんだよ? てか噂ってどんなのがどんなのがかなり気になるんですけど?

他のみんなの顔を見るけどさっぱり分からないって顔をしてるし



「長居は無用だな。急いで行こう」



変な事になる前に俺達はさっさと教室に歩き出す。









●紅の術者

第22話 報酬







「で、ヤスラ先生は何処よ?」



呼ばれていた教室に行くと誰も居なく、人数分のイスと席が用意されていた。

俺はとりあえず1番真ん中に座る



「あっ、イツキがそこなら私はココ」



そういってアイリが俺の左隣に座ろうとする



「ならば私はここだな」



セイウェンも続いて右隣に座ろうとするが



「アイリ、セイウェン。ちょっと来なさいよ」


「ん? なにかなティアちゃん」


「む? そのような顔をしてどうした?」



なぜか鬼のように怖い顔をしながら腕を組んでいるティア。

アイリもセイウェンもティアに怒られるような事はないと思うんだけど、やっぱりあの状態のティアは怖いらしい。2人共おとなしくティアの所に行った

その後俺の顔をチラチラ見つつ小さい声で何かを話し始めた



「……あんた達いつからイツキの隣に座る権利を持っているのよ?」


「別にいーじゃん。ティアちゃんに断らないといけない訳?」


「私は好きでイツキ君の隣に座っているのだ。っと言っても彼を好きでという訳ではないぞ……//」


「とにかく私はイツキの隣に座るの」


「いーや、ボクだね」


「否、私だ」



何を話しているのかは分からないけど、確実に3人の間に火花が散っているのは間違いないだろ。ヨミは半ば諦めたような表情をしているし、分からないのは俺だけ?

これがチームの中で1人だけ男である俺の運命なのか



「どうしても譲らないようね」


「そっちもね」


「こちらも退けぬのでな」


「だったら……」


「「「ジャンケンで勝負!!」」」


「っ!? なんだなんだ?」


「「「うるさいっ!! 黙ってて」」」



やっぱり俺は蚊帳の外みたいですわ。もう俺涙目状態ですよ。ヨミだけじゃなくってチームメイト全員から邪魔者扱いされて……



「いくわよっ!!」


「「「ジャーン、ケーン、ポンッ!!」」」








ポン






「ゴメン、遅くなって。って、なんでティアさんがそんなに暗いの?」


「さぁ?」


「どうせ私はモブキャラなんでしょ? 序盤の方は結構役に立ったりするけど、中盤から出て来たキャラの方が使いやすくって捨てられるキャラ。主人公に恋をしても結局は実らない脇キャラA。そうよそうよ、なんだって毎回私はこんな貧乏くじを引いちゃうわけ? これは神様のイタズラなのかしら? そうよ、これから起こるイベントのための準備なんだわ。そうじゃなかったら例え神様だったとしても、私が地獄の果てまで追いかけて……」



ティアがブラックモードに入りました

これ以上は構わない事にします。

結局ジャンケンをした後、アイリとセイウェンが物凄い嬉しそうな顔をして俺の両隣に座り、その時からティアはあんな感じになってしまった。いったい何が原因なんだよ?



「とりあえずティアさんの事はおいときましょう。」


「ってかなんで先生が遅れたんです? 俺達よりも先に教室に向かってたでしょ?」


「ムフフ、聞きたいかねイツキ君」



あっ、ヤベ地雷踏んだ。

俺が先生に質問した瞬間目を輝かせながら自分の影に手を突っ込み、何かを取り出す。



「それではこれより第1回、クエスト報酬発表会を行いますっ!!」


「「「「おお~!!」」」」


「何よクエストって。私はイツキの……」



いつまでやってんだよブラックティアさん。いい加減戻ってこような?

とりあえずヤスラ先生の話から察するに、影から出したのは今回の報酬って訳だよな。闇属性の魔法ってあんな便利な使い方があるのか。



「とりあえずギルドからの報告書を読み上げるわよ?」



『今回のクエスト「旧館探索」はクエストランクBと表記しておりましたが、『チーム紅』の報告書を見てみると、このクエストはただの旧館探索ではありませんでした。謹んでお詫び申し上げます。なお、このクエストの最終ランクはAAAで、討伐した魔族数十体、魔族の術者1名、魔族の上級種族の悪魔の討伐という事でそれなりの報酬をこちらでも上乗せしておきました。今回はこちらの調査が不十分だったため紅の皆様に危険な戦闘を経験させてしまった事を深くお詫び申し上げます』



「だってさ」


「AAAって、多分この学園の上級生でもあんまりやらないわよ? 次のランクはもうSランクだもの」


「オイオイ、俺達Bランクからすげぇ事になっちまってんな」


「この事はもちろん学園全体に流れてるから、はれて君達は有名人になったわけだよ。顧問としても鼻が高い」



なるほど、だからさっき近くでなんか言われてたわけだ。いい意味でも悪い意味でも俺達はかなり有名になったと。Sクラスって事だけでもかなり目立ってんのにこれ以上は……



「で、報酬はこちらですっ!!」



そういって袋の中に入っていた金貨を机の上にぶちまける。

最初の報酬は金貨5枚だったはずなのに、今目の前にある金貨は500枚くらいだろうか?

これなら俺の超電磁〇にこまら……使えるわけねぇわ



「先生は50枚でいいから、後はあんた達で山分けね」


「へっ? いいんですか先生、こんなに貰っちゃって」


「いいの、いいの。他にも色々貰ってるし、顧問としてのお給料も……」



地味にいやらしい所があるんだな、ヤスラ先生。

てか俺達一応学生なのにこんなにお金貰っていいんですか? だって街に行った時だって、かなりお高いホテルでも銀貨10枚もしなかったぞ?



「じゃあとりあえずみんな均等に分けるから、90枚ずつな?」


「ねぇイツキ」



そんな時、ティアが後ろから小さな声だが話しかけてきた。今だブラックなオーラは絶賛放出中でさすが

の俺でも怖くなったのは内緒だ。



「アンタ約束覚えてるんでしょうね?」


「約束?」


「もうっ、あの旧館で言ったでしょ? その、デートに連れてって言ったでしょ//」


「あれ本気だったのか!? 俺はてっきり冗談「バカッ!!」フガッ、ティアてめっ」


「いいから何処か連れてってよね」



うん、色々マズイな。何がかって? そりゃティアとデートなんて行ってみろ、ヨミに何をされるか分からん。本人はどうせ遊び感覚で言ってるんだろうけど、こっちは命かかってんだよ。

それにさ、後ろから2つの魔力が俺のほうに向いてるのが分かる訳。



「「イツキ(君)」」


「はい?」


「どういう事か……」


「説明してもらおう!!」



さようなら、俺の初めてのクエスト報酬。これは3人の女の子の為に使う事になりそうです。

くそぅ、俺のオート乳サーチがレベルアップしちゃうぞ。パーソナルリアリティーを拡大してレベル5になっちゃうぞ。そんでオマエラの胸を揉んでやるんだ!!

アイリとティアはそこまで2つの果実は発達してないけど……

実に残念です



「「何か言った?」」


「いえっ、別に」


「ああ、そういう事なら」



突然ヤスラ先生が話し出した。俺が困っているときには全く助けてくれなかったくせによぉ



「明日は休みにしてあげるから3人ともイツキ君を好きにしちゃってもいいわよ? その代わり次の日からはみっちり魔法訓練するけど。ってかそもそもこの学園にバーチャルでの模擬戦闘を行えるマシーンがあったのよ。わざわざクエストなんか行ってこれ以上ケガされても困るしね」


「じゃあなんでクエストをやらせたんですか!!」


「ん~、単純に今月私お金なかったのよね」



もうイヤだ……



「じゃ、そんなわけで今日と明日はオフでいいから。解散」



その声と共にみんな席を立つ



「ああ、イツキ君。君はちょっと残って」


「へっ? いいですけど」


「外で待ってるわ」


「早くしてよ? ボクは早くイツキと……」


「私達が居るとまずいのだろうな。大丈夫だ、私はいつでも君の見方だ」


「とうとうイツキも王宮行きですね。さようなら」



なんか俺が完全に悪いもの扱いになってないか?

ってかヤスラ先生も否定してくれればいいのに黙ってるなんてひでぇ




「悪いわね、君1人だけ残しちゃって」


「だったらアイツらがなんか言ってる時に、否定くらいしてくださいよ」


「いやぁ、面白かったもんでつい」



何がついだよ、何が!!

俺はアンタ達のおもちゃかよ!?



「で、用件はなんなんです?」


「悪魔に何か言われたそうね?」


「ッ!? なんでそれを!?」


「ティアさんから聞いたわ。最後にイツキ君が悪魔と何かを話してたって」



いちいちイラン事を言うなぁ、アイツ。俺とアイツが話していた内容までは分かっていないようだけど。



「先生、俺の能力は本当に今まで誰も使い手が居なかったんですか?」


「記録上ではないわ」


「あの悪魔の話だと、少なくとも魔界のほうにはあるみたいですよ? この能力」


「そうなんだ」


「ヤスラ先生。もしも俺がこの能力で暴走した時は、アナタが……」


「縁起でもない事を言わないで頂戴。悪魔に何を言われたのかは分からないけど、アナタがそう簡単にくたばるような人間かしら? それだったら私はアナタをこのチームのリーダーとして指名してないし、Sクラスからだって追い出してるわよ」



それでもあの悪魔の言葉は気になる。確かに俺がこの能力で死んでしまったら自業自得だ。しかし、この能力が暴走して、もしもティア達を傷つけてしまったら?



「まぁ今の所はなにも問題がないんでしょ? だったらちゃんと胸を張って前に進みなさい、少年」


「なんかオヤジ臭いですよ? ヤスラ先生」


「オヤジ臭いってイツキ君!? 私はただアナタを心配して」


「分かってますって、じゃあ失礼します。先生」



俺はそういいながら扉を開けて部屋を出て行った。
















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