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紅の術者  作者: 結城光
第1章・1節 学園編
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第19話 恐怖の旧館探索!? 6



「イツキッ!!」


「さぁ、ここからが絶望へのショータイムだ!!」



何が起こったんだ!? 確かに俺はティアと二重の障壁を作っていたはずなのに。破壊されたとしても少しの時間が生まれるはずだ。それに俺は普通よりも能力値が飛びぬけているはずなのに防御の体制をとろろする事も出来なかった。そこまで早い攻撃だったのか!?



「イツキ、しっかりしてよイツキッ!!」


「だ、大丈夫だ……」



すぐさまティアが駆け寄って来る。悪魔はそれを楽しそうに見ながらこっちに近づいてくる。



「怖いだろ? 自分に見えない攻撃をされて戸惑っているだろう? だがそれでいい、そうでなくてはワシがわざわざ戦っている意味が無い」


「ペッ、抜かしとけよインチキ悪魔。何か仕掛けがあるんだろ?」


「まだ自分の身に起こったことが信じられないか? いいだろうっ!!」



笑っていた顔が消え、悪魔の姿も消えた。奴の最後の言葉から察するとおそらくもう一度攻撃を仕掛けてくる。普通だったら守ってもう一度様子を見るんだろうけど、俺は生憎常識が通用しないんでね

さっきは立ってた所から一直線に吹っ飛ばされたから、攻撃してきたのは俺の目の前。もう一度同じ事をやるっていうのを前提としたら……


俺は剣を強く握り締めて魔力を込める



『断罪の剣~疾風~』



詠唱を短縮して剣に縫わせる。本当はちゃんと詠唱した方が威力も精度も上がるんだけど今は時間が無いからしょうがない。ティアを後ろに下がらせて俺は目の前に思い切り振る

かまいたちの様なものが目の前を走り、途中で何かぶつかって黒いものを飛ばす。



「当たった!?」


「だが止まらんよ!!」


「ッ!? ティア!!」



俺はとっさにティアを突き飛ばした。そして次の瞬間、俺のわき腹に激痛が走る。見るとさっきまで展開していなかったはずのカマが再び悪魔の腕に再構築されていたのだ。確かに奴が消えた時には確かに普通の腕だったはずなのに



「ぐっ、テメェ……」


「おや、まだ元気そうだな。だったらコレはどうかな?」



『闇よ それは始まりにして破壊の使者』



「くっ!! 詠唱呪文だと!?」


「イツキ!! 逃げてぇ!!」



逃げないとヤバイ。俺のわき腹に奴のカマが刺さっているからここで魔法を使われたら零距離での魔法を喰らう事になる。でもカマが刺さっているって事はそれを抜かないと逃げられないって事になる。この状況でカマを抜く事は今は不可能に近い



『闇の彼方へ今誘わん 悪しき暗黒』



カマを出しているところと逆、つまり左手に魔方陣を展開してくる。そしてその魔方陣を俺の鳩尾辺りにゆっくりと近づけてくる。障壁を展開しようとは今はするが無駄だ。属性魔法を付属させた障壁も、補助魔法での障壁も耐えれる攻撃の量があるように、範囲もある。一見遠距離に展開できないと思われがちだが、近距離、つまり自分の体に張ることも難しいのである

それも誰かから直で触れられている所がある場合は障壁を展開しても、無意味になっているってか使えない。自分ではないものが触れている場合の障壁の展開は、その触れているものを覆うやり方でないと使えないのだ

つまり、現時点で悪魔に触れられている俺は障壁を展開できない



「眠れ」



そして俺の体は発動した魔法によって無理やりカマから引き離される形で吹っ飛んだ。



「イツキーーーー!!」


「奴はしぶとそうだな……」



その言葉と共に再び手を前に突き出す悪魔。さっき飛ばされたイツキがそこには居るはずだ

それを見たティアは杖を出し、無詠唱で火の球を何十個も形成する



「イツキにはこれ以上攻撃させない!!」



そういって自分の周りに停滞させていた火球を悪魔に放つ。もちろんそれだけで奴にダメージを与えられるとは思っていない。しかし一瞬の隙を作り、自分の次の攻撃を放つ準備をするつもりだった

火球の直撃を確認して一気に間合いを詰めようとする



「ッ!? 足が……」



地面を蹴ってその場から離れようとしたが、足に黒い鎖のようなものが巻きついており身動きが取れない。



「邪魔をするな。ワシが欲しいのは彼の魔力であって貴様では無い。しかし焦るな、彼を始末した後で貴様もゆっくりと始末してやろう」



そういって再び構えなおしてイツキを狙う。



『悪しき暗黒』



「イヤーーーーー!!」









●紅の術者

第19話 恐怖の旧館探索!? 6










side:ーー






「君達には出て行ってもらうよ。ここは我が主の家なのでね」



そういって吹き飛ばした3人を闇属性の魔法で作った鎖で捕まえて拘束する。ぐったりとしている3人をここで始末してしまうのも悪くは無い。後で主に聞いておこうと決め、隅に拘束した3人を置いていく。



「さて主もそろそろ終わるだろう。お茶でも入れておくか」



そういって部屋から出ようとする男。



「ふむ。確かにこの時間では紅茶を飲むのもいいだろう」


「ッ!? お前どうして!?」



そこに立っていたのは最初に倒したはずだったセイウェンだった。もちろん彼女に浴びせたはずの攻撃は一切効いておらず無傷であった。



「僕たちもいるんですけど?」


「人の事お化けみたいに言って、ヒドイ」


「貴様達どうやって鎖から抜けた!?」


「どうやってと言われても、最初から捕まっていなかったとしか答えられんが?」


「ウソを言うな!!」



再び杖を振り、衝撃波を放つ男。しかしセイウェン達は先ほどまでとは違い、容易に攻撃をかわす。



「ウソだ……ウソだ…ウソだ、ウソだーーー!!」


「発狂しましたね」


「おい貴様。もしかして私達の魔力量が感じられない・・・・・・のでは無いのか?」


「ッ!? なぜそれを」


「簡単な事だ。貴様がいくら凄腕の術者だったとしてもこの空間の魔力は異常だ。貴様が展開した魔法かもしれないが上位の者たちが分かるような中途半端な魔法を展開すれば、分かる人には分かってしまう。だから自らも分からないほどの術式を組んでいたのだろう? 弱者ザコが入ってこようものなら魔力の大きさで倒れてしまうほどのな」



セイウェンが言った通りだった。ここは悪魔しゅじんの封印された場所と共に、復活させるための隠れ家。何十年もの間で封印の術式を解いてしまったと分かればSランク級の術者が何人も集まって討伐してくるのは言わずとも分かる。だから自分の感覚すらも麻痺させるような術式を何年もかかって構築したのだ





「その証拠に今私達を見てはいないだろうが?」


「なに!? 貴様達は確かに目の前に居るではないか!?」



ーパチンー



セイウェンが指を鳴らすと鎖に捕まっていた3人と男の前にいた3人が一瞬で消えた。そして床には大量の水が漂っている




「水の人形。私の魔法だよ」


「バカな、あの魔法は少しでもダメージを受ければ水に戻ってしまう下級魔法のはずだ!!」


「だから強化しましたよ? 土を上からコーティングすればかなりの強度になるのだよん」


「さてここで問題です。私達は今何処で何をしているでしょう?」



ヨミの問いかけに息を呑む。今まで見ていたものはセイウェンが作った身代わりのようなものだった。だったら今彼女達は何処に?



「「「答えはコレだ(コレよ)(コレです)!!」」」



『始まりの吹雪』


『破砕の矢』


『烈風の覇者』



「上にいたのか!?」


「もう遅い」


「くそっ、障壁展k……」



ードンッー



男の言葉よりも先に3つの攻撃が重なり合って1つの爆発的力を生み出す。もちろん彼は防御も出来なければ、避ける事もできない。完全に直撃したそれは普通のものならば形すら残らぬほどの威力。

かろうじて魔族の中でも上位だった事もあって男は生きてはいたものの、完全に気を失っていて当分は起きないほどのダメージだった。



「ね~セイウェン、コイツどうする?」


「そこら辺の柱にくくり付けておけ。後で回収しに来よう」


「OK♪」


「さあ急ぎましょ。お嬢様達が心配です」


「イツキもね?」



そういってほとんど壊れてしまった部屋に背を向けて走り始めた









side:イツキ




「さて君には退場してもらおうか。無益な殺しはワシとしてもあまり好かんのだが、致し方がない」


「イツキ……イツキ……イツキ」


「精神がおかしくなったか……仕方が無い、死ぬ時は楽に消してやろう」



そういって手を前に突き出し魔方陣を展開させる。もちろんティアはソレに気付いてはいない、いや気付いていたとしても反応できないのだろう。

魔力が徐々に集まってきて黒い球体が魔方陣の前に生成される。さっきイツキを倒した『闇の苦渋』だ。もちろんあんなものを防御無しで喰らってしまえば体が無事なわけが無い




「さらばだ。力なきモノよ」



収縮した力が一瞬にして放出される。そしてそれは一直線に飛んでいきティアにーー




ーバウンッー



ティアの目の前に行った黒い球体は大きく膨張してティアを包み込む。そしてそれは収縮していきティアの体を破壊していこうとする。その姿を見てにやりと笑っている悪魔。

そしてティアは……



「ってもらったら……」


「ん?」


「コイツに消えてもらったら困るんだよっ!!」


「なっ!! お前どうして!?」



そこにはイツキが立っていた。ボロボロになっていながらも立っている彼はわき腹からは簡易魔法での止血を行っているが、かなりの量の血がにじみ出ている。零距離での魔法も喰らった事で腕の所々から血が出ており、肋骨は数本折れているようだった



「イツキ……? どうして?」



今まで精神が崩壊しかけていたティアの顔が戻っていく。イツキの怪我の酷さは目を瞑りそうになったがそれでもイツキが生きていた事が彼女を暗き精神の闇から引きずり出した


「説明は後だな……ってか知ってるか? 俺の好きだったマンガに出てきた一言だが、悪はいつか滅ぼされる覚悟をするらしいぜ。お前にその覚悟があるのか?」


「うるさいっ!! 大体お前等人間は悪を嫌い、善を好む。たとえ自分がやっていた事が悪だとしても、善のように振舞うではないか!!」






「確かに多くの人間は善を好み偽善者みたいに振舞う。でもなぁ、俺は善か悪か選べって言われたら……




悪を選ぶね」




ティアの前に来たはずの球体はイツキの手の中で物凄い音を立てながら停滞していた。そしてイツキはそれを思いっきり握りつぶす



『換装 常闇暗黒』



「なっ!? 魔法を吸収しただと!?」


「上位属性を吸収できるか分かんなかったからお前の『悪しき暗黒』を受けた振りをして少し吸収してみたんだよ。だからわざと攻撃を受けた。予想外にダメージを負っちまったけどな」


「バカッ!! アンタ、アタシにどれだけ心配かける気よ!!」


「ゴメン」



体から闇を放ちながらも雰囲気は保ってる。どうにか魔法喰らいエンペルゲレトを使いこなせているみたいだ。昨日ヤスラ先生からこの事を聞いて調べてみたんだけど、魔法喰らいエンペルゲレトを使いこなせていない、または使いすぎると吸収した魔法で精神が異常になって暴走するらしい。だからあんまり使わない方がいいってヤスラ先生に……



「帰ったらお仕置きだからね!!」


了解ヤー



涙を流しながら俺に怒ってくるティア。俺はアイツがどれだけ心配してくれたのかは分かんない。

それでもあれだけ泣かしてしまったのだから後のお仕置きは……考えたくないな




「いつまで喋っている気だ!!」



悪魔が不安や疑問を浮かべた顔をしながらも俺に闇属性の球体を放つ。もちろん俺はそれを吸収した




「そんなに早く死にたいみたいだな。だったらお望み通りにしてやるよ」



俺はニヤリと笑った。



紅 魔法辞典Vol.



闇の苦渋



大きな球体を形成して相手ごと呑み込んでしまう魔法。相手の前に行くと球体が膨張して相手を呑み込み、そのまま体を侵食していく。


使用者:悪魔



悪しき暗黒



大型の砲撃。いかなる属性でも吸収しながら相手に向かっていき、吸収した魔法の威力も上乗せして攻撃する。この魔法よりも威力の高い属性攻撃を当てれば相殺できるが、それでも吸収される場合がある


使用者:悪魔



換装 常闇暗黒


闇属性の中でも比較的上位の魔法を取り込むと換装できる。体からは闇を放っており、中級魔法くらいまでなら何もしなくても吸収できる。能力付与として吸収が確認できるが、他の能力は未知数


使用者:イツキ:ジングウジ





次回で旧館探索終わりです

さて学園編に戻ったら、ラブコメを展開させなくてはww

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