第12話 実戦3
やっと実戦編が終わった……
side:イツキ
「ねぇ、イツキ君」
「なんですか?」
「本気を出しなさいよ? 私を殺すくらいの勢いで来ないと、アナタが死ぬわよ?」
向かい合った瞬間にヤスラ先生は冷たく鋭い視線でそう言ってきた。今までの明るい表情、雰囲気はどは欠片も無く、そこに居るのは本当にヤスラ先生なのかと疑うほどだった。
「死ぬなんて、先生大げさですよ」
「いえ、あのクロッド君はSクラスの中でもかなり上位に位置するはずの人。それをいとも簡単に倒してしまうなんて、通常はありえない」
もはや本気で戦わなかったら俺の人生はここで終わってしまうかもしれない。最悪、クロッドの時に使った創造の能力を使用しなければならないか? そういえば創造の能力なんだけど、あれは効果に時間があるみたいだ。そこも含めて戦わないと今回は絶対に勝てない。
「武器は無しよ。アナタの純粋な戦闘能力が知りたいから」
「……分かりました」
そういって武器の展開をやめる。ヤスラ先生自身も武器を持っていないので、近距離戦に持ち込もうとしているのか? それとも遠距離からの一発?
とりあえず何処かに魔法石を隠し持っているのは間違いないだろう。俺だって、ガンドロフに魔力を通して発動した方が威力も精密度も全く違うのだから。
「じゃあ実戦の最終戦。私VSイツキ レディーーーファイト!!」
●紅の術者
第12話 実戦3
『業火よ 地より出でし奈落の焔』
「くっ!! いきなり上級呪文かよ!? 先生!!」
『瞬動』
魔力を足に込め急いでその場から離れる。前にも言ったとおり詠唱呪文の威力の決定の仕方は2つが組み合わさって初めて決まる。宣言する属性の大きさ。例えば火なら、火<炎<業火 である。そして詠唱の長さは、言わずとも分かるだろう。
『その形は剣 役割は汝を燃やす ただ1つなり 業火の剣』
「ちょっ!? 先生、武器は無しって言ったでしょ!?」
「魔法で作った攻撃よ?」
そういって俺に接近してくる先生。確かに瞬動は、俺以外にも使える初歩的な補助魔法だ。しかし俺は自分の魔力の高さを利用して、この補助魔法に通常以上の魔力を掛け使用している。もちろんその事により、速さも通常以上だ。しかしヤスラ先生はそれと同じ……イヤ、それ以上のスピードで接近してきている。
「くっそぉ『業火よ 烈風よ 迅雷よ』」
「ッ!! やっぱりこのチームは異常だわ。全員が上級魔法を使えるなんて」
『それは奈落の焔 それは彼方より駆けし疾風 それは天より降りし稲妻』
前回唱えた呪文よりランクを2も上げて詠唱している。ティアが言っていたが、上級呪文はちゃんとした詠唱を覚えないといけないってのはウソだな。だって俺が今詠唱しているの適当だもん。とりあえずそれっぽい事を並べているだけだし。創造の能力が勝手に働いて修正してくれてる可能性もあるけど……
「はぁっ!!」
ヤスラ先生が剣を槍の如く投げる。その瞬間、今まで剣の形を保っていたものは炎の鳥のようになり俺に向かってくる。
『共に交じり 共に全てを消し去らん 業火の雷撃風』
瞬時に魔方陣が発動して剣に向かっていく。風を基本として、雷と炎がありえないほどに混ざり合う。前回の発動した魔法の何倍もの威力があるものを展開している。しかし、イツキと先生の決定的な差は経験の量。
「うそっ!?」
「いくら大きな威力の魔法でも、広範囲の攻撃を相殺するのにはかなり消費するのよ」
「くそっ」
side:ヤスラ
「ねぇ、イツキ君」
「なんですか?」
「本気を出しなさいよ? 私を殺すくらいの勢いで来ないと、アナタが死ぬわよ?」
本当に殺す気は無い。彼はおそらくこのSクラスの中で1番強いだろうから。Sクラス同士のケンカは前にも何度か見た事がある。しかし、その戦いで両者はボロボロになっていたのだ。しかし、今回の事はどうだろうか? クロッド君は入学前の実力判定で、上位10人に入るくらいの実力の持ち主だったはずだ。しかし、イツキ君は彼をほぼ無傷で倒した。それがどういう意味かは……
「死ぬなんて大げさですよ」
確かに大げさかもしれない。しかし、そのくらいでないと君の全力が見れない。
「いえ、あのクロッド君はSクラスの中でもかなり上位に位置するはずの人。それをいとも簡単に倒してしまうなんて、通常はありえない」
私も本気が出せるほど強かったらいいのだけど……
そう思いながら、戦闘準備を始めた。
side:イツキ
やるしかないのか? ヤスラ先生は、たかが火の上級魔法で俺の3つを掛け合わせた上級魔法を相殺した。
「先生……」
「なに?」
「本気を出せって言いましたよね?」
「ええ、言ったわよ」
ふうっ…… 本当はこの能力を使うつもりは無かったんだけど、どうせ色々な事を抱えてるチームだ。俺が創造の能力を使えるなんて事を知っても大丈夫だろう。
ー創造ー
我が身は魔法を喰らい、飲み込む。いかなる魔法でも、我が身と同化する力とならん
ー創造終了ー
「行きますよ? 先生!!」
「ふっ、いつでも来なさいって言ってるでしょ!!」
俺は何もせず、立ち止まる。ヤスラ先生は一瞬戸惑いつつも詠唱を始める。予定通りですけどね
『業火よ 地より出でし奈落の焔 その形は剣 役割は汝を燃やす ただ1つなり 業火の剣』
すばやく詠唱を終えると先ほどと同じく剣を投げてくる。俺はその攻撃を見つつ、手を前に出して1つの魔方陣を展開する。
先生の放った魔法は俺の魔方陣に当たり、大きな炎となっていく。
「なっ!?」
「吸収」
『換装 獄炎業火』
俺の体は火に包まれていく。それはまるで某魔法先生の(ry
てか、この技自体そこから取ってんですけどね
「魔法を止めた……?」
「イヤ、それどころか握り潰したわよ!?」
「やっぱり人間じゃないですね……」
「ははっ、やっぱりすごいや」
思い思いの感想を述べるチーム紅。とりあえず説明は後にして俺は戦いに集中する。
「アナタ、レアスキル持ちだったの!?」
「レアスキル?」
「レアスキルって言うのは、個人の先天的な能力の事。アナタが今使った魔法を吸収する能力、『魔法喰らい』は何千年も前の神話にしか出てこない能力よ!?」
ワーオ……やってまった……
俺が創造して能力は、何千年もの昔、しかも神話にしか出てこない技らしいです。これで俺は死の階段をまた一段上ってしまったように思います。
「まぁ、ちょっと分けありで……」
「なるほどね……だからティアさんもボディーガードを頼んだのね」
「えっ!? ええ、そうです……」
受け答えをしながらも、睨んでくるティア。後で絶対説教が待っているのは言うまでもない。
てか、もう実戦終わりでよくね? 怖いんですけど……
「じゃあ私も本気を出さないと……」
「はっ!?」
先生はとんでもない事を言った。本気を出さないと? 今までの攻撃は本気ではなかったという事ですか?
『闇よ 我が影を矢と化せ 暗黒矢』
俺が構え直した瞬間目の前を黒い矢が飛んできた。俺は体から出ている炎で矢を燃やし尽くす
「やっぱり炎と同化しているのね」
「そういう先生は、上級魔法の闇を使ってるじゃないですか」
「「ふっ……」」
『闇よ それは漆黒の闇 闇の空間』
ヤスラ先生が俺より先に詠唱をはじめ、繰り出す。それは黒い魔方陣から放たれる、漆黒の闇。すなわち闇の結界のようなものだった。しかし、俺の直感はそこに飲み込まれてはいけないといっている。
『我が身に宿りし大いなる焔よ 我が前にその力を現せ 鳳凰召喚』
もちろん本物の鳳凰など召喚する事はできない。獄炎業火の炎を全て体内から放出する事により、鳳凰の形をかたどった炎を作り出すのだ。さっきのヤスラ先生が放ったものの何倍もの大きさの鳳凰と闇の結界
威力は同じくらいで、全く引くことの無い2つの力
「ねぇ、先生」
「ん? 何かしら?」
俺はおもむろにポケットに手を入れながら先生に話しかける。
「この銀貨を、光の速さで飛ばしたらどうなるでしょうかね?」
「はぁっ!? なにいって……」
俺は銀貨を上に投げる。それこそ某ビリビリ少女の必殺技の如く。なにも鳳凰が闇に勝たなくてもいいのだ。最終的に立っているのが俺であれば……
手には雷を停滞させており、バチバチと音を立てている。ヤスラ先生は何をやるのかさっぱりわからず、ただそれを見ている。
「超電磁砲!!」
銀貨が落ちてきた瞬間、俺は叫び声と共に指ではじく。銀貨は雷により音速の3倍の速さで飛んでいく銀貨。まさしくアレのパクリだが、闇の結界を破壊するには十分だった。
「ウソッ……」
「これで終わりですよね? 先生?」
驚いている先生をよそに、俺は瞬動で先生の元に行き拳を入れるまねをする。先生も少し悔しそうな顔をしていたが。
「私の負けよ、イツキ君」
その顔は、いつものヤスラ先生そのものだった。
最終戦 イツキVSヤスラ
勝者 イツキ
「で、あなた達にはこれから説明する事がたくさんありそうね。10分後に職員室に来てね?」
「なして10分後?」
「いや、だってほら……」
後ろを指差すヤスラ先生。そうでした……俺はすっかり忘れておりましたわ
後ろに立っていたのは、ティアを筆頭とする紅のメンバーだった
「「「「説明してもらうわよ(してくれ)(しなさい)(してね♪)」」」」
だから実戦なんてやりたくなかったんだよぉ!!
ストックがなくなりそうなので、もうすぐ毎日投稿が出来なくなりそうです……
てか、なのはの方も……