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第13話:灯心術・護結、ふたりの共鳴

ドーラです。

今週もよろしくお願いします。

灯霧の庭に戻った律とあいは、静かな霧の流れの中で再び歩みを進めていた。戦いの余韻はまだ残っていたが、ふたりの表情には確かな成長の色が宿っている。


「律、手……出してみて」


あいが少し照れながらも、笑顔で手を差し出す。律は驚きながらも、その手に自分の手を重ねた。あいの指先は柔らかく、霧の粒がふたりの間にふわりと舞った。


「灯心術の共鳴、試してみたいの。律となら、きっとできると思うんだ」


律は頷き、目を閉じる。澪の記憶、願い、そしてあいとの絆――それらが胸の奥で静かに重なっていく。


霧がふたりの周囲で円を描き、淡い光が灯る。あいの声が律の心に響いた。


「記憶修復・環結・共鳴――」


律の折り紙が光を放ち、星の形が霧の中に浮かび上がる。


「星閃・心環・護結――」


ふたりの技が重なった瞬間、霧が大きく揺れ、庭の奥に新たな記憶のかけらが現れた。


「……これは」


律が手を伸ばすと、霧の粒が集まり、澪の声が微かに響いた。


『律、あのね……もし私がいなくなっても、律が笑ってくれたら、それだけでいいの』


あいがそっと律の袖を引く。


「澪の“願いの核”に近づいてる。でも、まだ足りないみたい」


律は頷き、霧の中に浮かぶもうひとつの光に目を向けた。そこには、澪が描いた絵が映っていた。校舎裏の桜の木、ふたりが並んで座る姿。


「……この場所、澪と一緒に過ごした春の日だ」


あいが微笑む。


「記憶のかけらって、感情と結びついてるんだね。律が澪を想う気持ちが、灯霧に届いたんだと思う」


ユウが霧の奥から現れ、ふたりの様子を見守っていた。


「よくやったな。共鳴は簡単じゃない。ふたりの心が通じ合っていなければ、灯霧は応えてくれない」


律は照れくさそうにあいを見つめる。あいも少しだけ頬を染めながら、律の手を握り直した。


「……私、律と一緒にいると、心がぽかぽかするの。名前をもらってから、少しずつ……嬉しいって気持ちがわかるようになってきたんだ」


ユウが目を細めて、感心したように言った。


「ほう……あい、お前、ずいぶん柔らかくなったな。最初は機械みたいだったのに、今じゃすっかり“人の顔”だ」


あいは照れながらも、笑顔で頷いた。


「律が、優しくしてくれるから。……私も、もっと笑えるようになりたいな」


律は微笑みながら答える。


「僕も。あいが隣にいてくれると、澪の記憶に触れるのが怖くなくなるんだ」


霧がふたりの周囲で優しく揺れ、庭の空気が温かく変化していく。


ユウがふたりに歩み寄り、静かに語り始めた。


「灯霧の奥には、まだ多くの“かけら”が眠っている。だが、律とあいの共鳴があれば、きっと辿り着ける」


律がふと、以前見た“謎の男”のことを思い出す。


「ユウさん……あの男のこと、もっと教えてください」


ユウは目を伏せ、霧の泉を見つめながら語る。


「彼は、かつて願いを叶えられなかった者。灯霧に囚われ、記憶の中で彷徨い続けている。強い願いに引き寄せられ、それを喰らうことで自分の願いを再構築しようとしている」


あいが不安げに問う。


「じゃあ……律の願いも、狙われる可能性があるってこと?」


ユウは頷く。


「そうだ。律の願いが強くなるほど、彼は近づいてくる。……だが、願いを守る力もまた、強くなる」


律は拳を握りしめ、あいの手を強く握った。


「僕たちで、澪の記憶を守る。どんな奴が来ても、絶対に」


あいが力強く頷く。


「うん。律と一緒なら、きっと守れる。……私、信じてるよ」


その時、霧の中にふわりと新たな光が灯った。澪の声が、微かに響く。


『律、次は……あの場所。覚えてる? 夏の夜、花火を見たあの丘』


律とあいは顔を見合わせ、静かに頷いた。


「次の記憶のかけらは、あの丘にある」


ユウが微笑みながら言った。


「灯霧が導いてくれるさ。律たちの願いが、正しく届くなら」


霧が優しく揺れ、月の光がふたりの背を照らしていた。

やっと中盤も展開しそうな感じにしてきました。

あいの成長を書くのがムズイ。誤字脱字ありましたら教えてくださいね。

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