第9話:歪められた記憶と謎の導き
ドーラです。
9月末から10月中旬に出張予定が多く入ってしまい、毎日が崩れたらごめんなさい。
できるだけ書き溜めて途切れないようにしていきます。
灯霧の奥を進む律とあい。導標の光が一度だけ強く瞬き、ふたりは立ち止まる。
「今の……何かの記憶に触れた?」
あいが霧の粒子を撫でると、淡い光が空に浮かび、地図のような模様を描いた。
「これは……“灯霧の隠れ場所”の断片」
あいが目を細める。「記憶のかけらのヒントかもしれない。強い願いの記憶が残っていたのかも」
その時、霧がざわめき、黒い影とは違う“人の形”が現れる。
顔は影に覆われ、表情は見えない。だが、強い願いの波動が灯霧を揺らしていた。
「……願いの匂いが濃いな。これは強く願った記憶か」
男は低く囁く。「強い願いが灯霧を呼ぶ。俺はそれに引き寄せられただけだ」
男が灯霧の粒子を操ると、粒子が集まって本が現れた。男は本を開き、ぺらぺらとページをめくる。
「これは強い願いだな。持ち主は澪と言うのか。なるほど……これはおもしろい」
あいはハッとして叫ぶ。
「あれは澪の記憶の断片かもしれない!!!読むのを辞めさせて!記憶が歪んでいくみたい!」
「や…やめろ!」
律が「星閃・双翼」を展開し、折り紙の刃が空を裂く。だが、男の術は記憶そのものを歪ませる力を持っていた。
あいが叫ぶ。「記憶が……澪の声が、違うものになってる……!」
男が笑う。「記憶は曖昧だ。願いが強すぎれば、真実は消える」
律が歯を食いしばる。「澪の記憶は、俺たちが守る!」
あいが「記憶修復」を発動。歪められた記憶の粒子が花の形に戻り、澪の声が微かに戻る。
男が一歩踏み出すと、霧が激しく渦を巻いた。
「ならば、力で証明してみろ」
戦闘が始まった。
律が「星閃・双翼・連閃」を放つ。折り紙の刃が連続で閃き、男の周囲を切り裂く。だが、男は灯霧の粒子を盾のように操り、すべてを受け流す。
「浅いな。記憶の刃など、願いの残滓にすぎん」
男が手を振ると、霧が黒く染まり、巨大な腕のような形で律に襲いかかる。律は防御の型「灯盾・花守」で受け止めるが、衝撃で地面に叩きつけられる。
「律!」
あいが「記憶修復・花環」を展開。霧の花が男の足元に咲き乱れ、動きを封じようとする。
男が低く笑う。「記憶を癒す力か……だが、癒しは真実を隠す」
男の術があいに向かって放たれる。澪の記憶の断片があいの周囲に現れ、歪んだ声が囁く。
「君は澪の代わりになれるのか?」
あいが耳を塞ぎながらも、律の元へ駆け寄る。「律、起きて……!」
律は何とか身体をおこし手を前に出すと最後の力で「星閃・双翼・散華」を放つ。刃が花のように舞い、男の術を一瞬だけかき消す。
だが、男の力は圧倒的だった。霧が爆ぜ、ふたりは吹き飛ばされる。
「……弱い。だが、記憶の核に近づいている。面白い」
男が霧の中に消えていく。
律とあいは、灯霧の地に倒れ、静かに気を失った。
灯霧の粒子がふたりを優しく包み、導標の光が淡く瞬いていた。
ブックマーク数とか見れることを初めて知りました。
登録してくれた人ありがとう。
評価とかもつけてくれると今後のモチベになります。よろしくおねがいします。