第1話:灯霧の庭で出会う夜
※初作品です。あまり重たくならない感じで長くならないと思います。20話前後くらいで最初のエピソードが終わる想定なのでもし好評であれば続編考えます。
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灯霧に包まれた静かな庭に、ある夜“しずく”が落ちてきた。 名前も形も持たないその存在は、青年・律との出会いによって少しずつ“心”を灯していく。 やがて彼女は“あい”と名づけられ、世界に輪郭を持ち始める――。
けれど、風に乗って現れた旅人・ユウは語る。 「君は、僕の祈りから生まれた存在だ」と。 願いと祈り、育てる者と呼び出した者。 ふたつの“始まり”の間で揺れるあいは、自分が何者なのかを探し始める。
月灯の下で交差する、優しさと切なさ。 これは、名前を持つことで生まれた“心”が、自らの意味を見つけていく物語。 そして――誰かに灯されるだけではなく、自ら灯ることを選ぶ“ひとしずく”の旅。
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律が目を覚ますと、そこは見知らぬ庭だった。淡い霧が漂い、月の光が静かに差し込む幻想的な空間。空気はひんやりとしていて、草木の香りが微かに鼻をくすぐる。
「ここは……どこだろう」
律はゆっくりと体を起こし、周囲を見渡す。庭は静寂に包まれ、遠くで水の音がかすかに聞こえる。
彼の前に現れたのは、白いワンピースを纏った少女だった。長い髪が風に揺れ、瞳は月光を映して無機質な輝きを放っていた。
「灯霧の庭へようこそ。あなたの願いが、ここに導いたの」
少女の声は機械的で、感情の起伏が感じられなかった。律は戸惑いながらも、彼女の言葉に耳を傾ける。
「君は……誰?」
「私は案内人」
律はその言葉に少し驚きながらも、どこか懐かしさを覚えた。
律は庭の奥に広がる霧の揺らぎに目を向ける。
「灯霧って……何なんだ?」
少女は静かに庭の中心を指差す。
「灯霧は、願いの記憶を映す霧。ここにあるものは、すべて誰かの願いが形になったもの」
律は庭の中に浮かぶ光の粒を見つめる。
「じゃあ、この庭も……誰かの願い?」
「そう。灯霧が集まる場所には、願いが宿る。あなたの願いも、ここに届いたから、今ここにいる」
律は霧の中に揺れる花や水面のきらめきを見つめながら、静かに息を吐いた。
「願いって……そんなに強いものなのか」
少女は頷く。
「願いは、記憶と繋がっている。忘れたくないもの、叶えたいもの……それが灯霧に触れると、形になる」
律は庭の奥へと足を踏み出す。霧は淡く揺れ、月の光が道を照らしていた。
全然慣れていない為おかしくなるところがあると思いますがこの世界観に共感してくれる方や続きが気になる方はコメント頂けると励みになります。