攻略が難しすぎる乙女ゲーに転生してしまった私の前に並行世界の私ズが現れたんだが!
倒れた私に対して、アリス二人が私の右斜め下から覗き込んできて言った。
「良いですか。落ち着いて聞いてください。あなたが眠っていた間にアリスが増えたんです」
「そんなわけあるかーーー!っていうか私眠ってなんかいないし!」
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学園の入学式の日に、鏡に写るピンク髪を見て前世を思い出した。
私はヒロインのアリスに転生していた。
前世の私は、人見知りで、あまり外に出歩くということもなく、家でコツコツと編み物をするのが好きだった。そんな私に姉が教えてくれたのが、「独りでは進めない僕ら」という乙女ゲーだった。
現実では人見知りな私でも、ゲームの中では、色々な人と話をしたり、交流を深めたりすることができて楽しかった。私は夢中になって、攻略対象を攻略したのだった。
でも、このゲームは、巷ではクソゲーと呼ばれていたのだった。
ダメなところ、その1。ストーリがひどい。
このゲームでは三人の攻略対象キャラとして、王子ロイ、宰相の息子フィリップ、騎士団長の息子ライザが出てくるのだが、それぞれヒロインが攻略しなかった場合、死亡する。
うん、わかる。どういうことーーーーー。と叫びたくなるよね。
でもタイトルの通り、攻略対象は独りでは前に進めないような悩みを抱えていて、ヒロインが攻略して救ってあげないと前に進めないと思い悩んで自殺してしまうのだ。それなら悩みだけ解決してあげればってなると思うけど、そう単純ではないのだ。悩みを解決だけしてあげて放置すると、ヤンデレ化して、ヒロインを攫って閉じ込めてバッドエンド。
つまり、プレイヤーは攻略対象三人のうち二人が死ぬのを横目で見ながら、残り一人を攻略しなければいけないのだ。多分ゲームをやった人ならわかると思うけど、これが辛い。全員助けてあげたいような子たちなのだ。それぞれ悩みを持っているけど、死んでいいような人なんていないのだ。でもこのゲームでは一人しか救えない。私は、何度もトライして、全員を救おうとした。でもダメだった。攻略サイトを見ても、「救えるのは一人だけ。逆ハーエンドのような全員を救うエンドはありません」と記載されていた。
そしてダメなところその2。攻略するためのミニゲーの難度が異常。
それぞれの攻略対象の悩みを解決する上で、ヒロインは攻略対象ミニゲームで対決しなければいけないのだが、これが鬼畜難度なのだ。
例えば、王子ロイは、早くに亡くなった母の思い出の曲をピアノ演奏し、パーフェクトになると王子が「ああ……。そうだった、お母さんは僕を愛してくれていたんだ。僕はずっと独りではなかったんだ。それを君が思い出させてくれた。本当にありがとう」と言って攻略完了となる。が、これがメチャクチャテンポが速いし、操作としても1オクターブ上、下、半音上、下、ドレミファソラシの合計11ボタンを駆使して演奏しなければいけない。普通にクリアできる人は人間じゃないと思う。
ではどうやって攻略するのか攻略サイトを見ると、
「テンポが速く一見難しそうに見えるが、各ボタン単位でみると、押す頻度はそこまで高くない。そこで、5〜6人を集めて、一人2〜3ボタンを担当してもらえばなんとなる」と書いてあった。
そこで私は、お母さん、お父さん、姉の紗希、弟の浩太に声をかけ、
「あ、お母さんそこちがう!」「ごめんごめん」「あ、ごめん私だった」「どんまいだよ」「よし次こそー」「姉ちゃんいった側から」「あはは」
と家族総出で1時間もかけて、クリアした。うん、本当に良い家族だった。
その他の攻略対象もひどい。宰相の息子のフィリップとの対決で挑むのはチェスだ。普通このようなゲームでは、特殊ルールが追加されていて、それを攻略アイテムや主人公パワーでなんとかするものだけど、このゲームは違う。普通のチェスなのだ。
普通のチェスで何が問題かと言えば、フィリップは誰も僕と対等に戦えないと思ってしまうくらいチェスが強いという設定をそのままゲームに落とし込んだ結果、プロと同レベルの強さを持っているのだった。
攻略サイトを見ると以下の記述になっていた
「フィリップとのチェス対決は以下のようにクリアします。
1.直前にセーブし、フィリップが先手でなかったら、ロードしてやり直します。
2.フィリップが先手になったら、別のPCで、極みチェス(最高難度のチェスゲーム)を立ち上げ、超絶級を選択します。
3.フィリップが指した手を極みチェスで入力し、CPUが指し返してきた手を、乙女ゲーム内でプレイヤーの手として入力します。
4.「3」を繰り返して、負けたらロードしてやり直します」
バカなの?最高難度のチェスゲームの超絶級でも必ず勝てるわけでもないような難度をミニゲームで出すとか!!と思ったのは私だけではないはずだった。ちなみに152回目にやっと勝った。姉の沙希と一緒に頑張った。「えっと、次はこの手だよね」「あ、バカそれ一個ずれてる!」「えっ嘘でしょ」「ほんとだよ。見てごらん」「あああああああーーーーー」「えっとドンマイ?」「ううう」と。
ちなみに、最後には死んだ目をした沙希が「ウヘヘヘヘ」とか言いながら、PCを見ずにポチポチしてクリアした。翌日に聞いたら、「えっ?なんのこと?100回目くらいから記憶がないんだよね・・」と言ってた。無意識怖い。
えっ、正確に入力していたらもっと早くクリアできたんじゃないかって?うん、私もそう思う。
そして最後もひどい、騎士団長の息子のライザ。元々の生まれの才能から戦いでは負け知らずで、ひとりぼっちになっているので、剣術で戦って叩きのめす必要がある。ランダムに出してくる10種類の攻撃を見極め、それに対応するボタンを押下するのを30連続成功でクリア。攻略サイトを見ると、
「ライザとの戦いは以下のようにクリアします。
1.ライザの攻撃は、攻撃前に腕を上げます。
2.腕を上げた角度から攻撃の種類を推測します。腕の角度が35度なら…(以下略)
3.同時に対応するボタンを押下します」
うん、これも酷かった。30連続攻撃とか開発者は正気じゃないと思った。2時間頑張っても手も足も出なくて、運動神経抜群の弟に泣きついた。「姉ちゃん、これほんと無理」「がんばだよ。浩太ならできる」「えええ」「ファイトファイトー」「ああ〜。もうわかったよ。やればいいんでしょ」「ありがとう」
とかそんなやりとりをしたのを覚えている。
このように攻略対象をクリアするのがめちゃくちゃ大変なゲームだったのだけど、私は全攻略対象を完全クリアしたのだ。正直いうと最後は徹夜だった。
朝になって喜びを伝えようと、下の階にいる家族のところに降りる途中で寝不足のためか、足を滑らせそのまま意識を失ったことを覚えている。
そうか、私それで死んでしまったんだ…。お父さん、お母さんごめんなさいという気持ちでいっぱいになる。姉や弟にもまた会いたいなーと思う。こんな私でごめんなさいって。
あと、幼馴染の一樹からも大切な話があるって言われていたような気がする。聞けておけばよかったな。
そんな思い出に浸りながらも、私は学園生活をスタートした。遠目で見ているだけだったけど、攻略対象の王子ロイ、宰相の息子フィリップ、騎士団長の息子ライザはいつも辛そうな目をしていた。
なんとかしてあげたいと思う。でも私は一人しかいない。そして、それぞれのトラウマを解消するためのミニゲームはセーブ&ロードして何度も繰り返しできるようなものではない。というか現実世界であの鬼畜難度をクリアできる気は全くしない。
でも、それでも、彼らが死ぬのが嫌だった。私は前世で家族と幸せに生きることができた。だからその幸せを彼らにも分けたかった。
攻略対象には、最後のイベント以外のタイミングで、練習用として難度が大幅に落ちたミニゲームに挑戦することができる。現実世界でも同様だったみたいで私は何度も挑戦した。
その結果は本当に惨敗だった。ピアノは何度練習しても指が絡まるし、チェスは「後手五手待ち」とかしても全く歯が立たない。ライザとの対決にいたっては、試合開始と同時につまらなそうな顔をして振ってきた剣に全く反応できずに負けてしまった。
どうしよう…。全然クリアできる気がしないよ…。
そう思って一人落ち込んで座り込んでいると、目の前に影ができた。
ん?と思って見上げると、4人組のピンク髪の集団がいた。
髪型は私と同じだけど、雰囲気は違っていた。
ちょっと小太りでメガネをかけていていたり、私より背が大きくてスタイルが良かったり、
身長は私と同じくらいだけどなんか頭が良さそうだったり、日に焼けていて運動神経が良さそうだったり……。
「あなたたちは一体………」
「私たち?私たちはアリスよ」
代表して一人が応えてきた。
「そんなことあるわけないでしょ。私がヒロインのアリスなんだから」
思わず言ってしまった後、しまった……と思った。
ヒロインって、おかしい人と思われるだけじゃないかって。これは現実世界なんだからって。
でも、私の予想とはうらはらに、アリスたち?はうんうんと頷いていた。
「そうね。あなたはヒロインのアリスで間違いないわ。自信を持って」
「えっと、ありがとう?」
「そして同時に私たちもヒロインのアリスなのよ!」
アリスたちが4人でポーズをつけると、どどーん!っと、アリスたちの背後で戦隊ヒーローものでよく見るような爆発が発生した。
なんだこれかっこいい。前世では小さい頃よくみんなで戦隊ヒーローのポーズとかやったんだよね。
って違う、これは戦隊ヒーローものではなく、乙女ゲーのはずだ。
「ど、どういうことなの!」
と私が思わず叫ぶと、まあまあ落ち着いてと言いながら、アリスの二人が私を両側から掴んで、後ろに傾けた。
「本当にどういうことなのーーー」
そして、倒れた私に対して、他方のアリス二人が私の右斜め下から覗き込んできて言った。
「良いですか。落ち着いて聞いてください。あなたが眠っていた間にアリスが増えたんです」
「そんなわけあるかーーー!っていうか私眠ってなんかいないし!」
なんかどこかで見たことがあるような構図を再現しながら、アリスたちが言ってきたので思わず叫んでしまった。どうしたんだろうと自分でも思う。内気な性格だから家族以外にはこんなにリアクション取れないはずなのに。すると何故かアリスたちは、そうだね、眠ってなんかいないねとか何か寂しそうに呟いた後、一転して楽しそうな顔になった。
「でもアリス。それならどうやってこの状況を説明するの?」
「う……。それを言われると弱いかも」
「ふふふ、それならこう考えなさい。並行世界の自分が現れたのだって」
「そんなまさか!私のヒロイン力が高すぎて、並行世界からも引き寄せてしまったってこと!」
なんてことだろう。世界まで変えてしまうなんて、私は私の優秀さが怖い。そう思ってフルフルと震えていると、パチンとハリセンが頭の上に落ちてきた。
「自意識過剰か!」
「な、何するのよ!」
「えっと……。ごめんね。何故か勝手に手が動いてしまった」
「ひどい。こんなこと家族にもされたことなかった……」
と言いかけて思い出してみると、私のボケに結構家族みんなツッコミを入れていた。
「……こともなかったわ」うんうん。
それなら仕方ないと納得していると、何故か逆にアリスたちが逆ギレしてきた。
「そこは、親父にもぶたれたことないのにー、というところでしょ!」
「いやいや、私ニュータイプじゃないから」
「そっかアリスはオールドタイプだったか、それなら可哀想だけど仕方ないな」
「私がオールドタイプなら、あなたたちだってそうだからね!」
「えっ?ということは私たちはニュータイプだった?」
「私の話の何を聞いていたんだよ!」
何か楽しい。何故かよく知っている人みたいに感じる。
と、そんなことより本題に入らないとだ。
「無駄話をしている状況じゃないよ。乙女ゲーの攻略が無理すぎるんだから」
「ふふふ、それなら心配いらないわ」
「何でよ!」
「何故なら——私たちが来た!」
ドンっ!と、どこかのヒーローみたいにカッコ良いポーズを決めながらいってきた。
「一人のアリスではクリアできなくても、沢山のアリスでやればクリア出来るのよ」
そういって、一人のアリスがウインクしてきた。
早速王子ロイの攻略をすることになった。
アリスたち曰く、ここが一番人がたくさん必要だからね。といっていた。
便宜上アリスたちをアリス1、アリス2、アリス3、アリス4と呼ぶことになった。
私?もちろん番号なしのアリスですが。私がそういうとアリスたちも笑っていいよっていってくれた。
とはいってもアリスが何人もいたら攻略対象に何なんだと思われないかと思っていたが、どうやら他の人たちからみると、私たちは5人で一人に見えるらしく、問題なく5人で演奏を開始することができた。
「よしいくよ!」
「「「「おおー」」」」
演奏を始めて気がついたのだけど、さすが平行世界の私ということなのか、初めて会ったばかりなのに、何故か息がピッタリで、なんと高難度の演奏をミスなくクリアできてしまった。
「うそん、初回でクリアしちゃったよ」
そういって私が喜んでいると、他のアリスたちは何故か微妙そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「いや何でもない。そうだね、初回だね」
何か変な反応されたけど、これでロイはクリアだ。
あ、でもどうしよう。ロイをクリアしたら他の攻略者のところに行くと嫉妬されて大変なんだよね。
そう思っているとアリス1、アリス2が私の方を向いてウインクしてきた。
「ここは私たちがロイの相手をしておいてあげるから、残りの2人の攻略をしておいで」
「で、でも、こんなところに二人をおいていくなんてできないよ!」
「いいんだ!いけ、いくんだ!アリス!」
「アリス1、アリス2!」
「はいはい、小芝居はいいから行くよ」
アリス3、4に呆れられなが、引きずられてしまった。解せない。
そして次は宰相の息子フィリップだ。
「でもどうするの?現実世界と違って極みチェスとかのソフトでカンニングできないよ?」
「まあ、心配知らないわ」
そういってアリス3がフィリップの前に進んだ。
そして「ウヘヘヘヘ、見える、見えるわ」と何故か死んだ目をしながら次々と手を打っていた。
「なかなかやるなアリス、見違えたぞ」
フィリップも私と戦った時とは違い本気の目をしていた。
私とアリス4は何をしていたかって?特にすることもないので、観戦していたよ。
「すごい、アリス3がすごいよ!」
「まあ、100回以上やらされていたからなー」
「何のこと?」
「ああ、何でもない何でもない」
何故かアリス4が遠い目をしていた。
「チェックメイト!」
「……まいった降参だ」
「ほんとに勝っちゃった」
私が唖然としていると、アリス3が自慢げにこちらを見た。
「ふふふ、何となくわかるようになっちゃったのよね」
「すごい、すごいよアリス3」
「もっと崇めなさい。そうすれば救われるでしょう」
「怪しい宗教か!」
何だこのアリス3は本当にすぐ調子に乗るんだから。
ん?すぐ調子に?何か変な感じがしたような。
私が悩んでいるとアリス3が声をかけてきた。
「じゃあ、フィリップは私が相手をしておくから、騎士団長の息子ライザを攻略しておいで」
「そんなアリス3をおいていくなんて!」
「いいの!いって!」
「はいはい、それはもういいから」
私とアリス3がお約束の別れをしていたら呆れた目をしたアリス4に引きづられた。
なんてひどいんだ。
そしてライザである。
「じゃあ、アリスはここで待っていろよ」
「アリス4、大丈夫なの?」
「まあ、任せろって」
自信満々にいってくるが、私が気にしていたのはそこじゃなかった。
「いや、大丈夫なの?っていうのはその口調よ。男っぽすぎるからもっとこうお淑やかに。私みたいにね」
「鏡持ってこようか?」
「何だろこらー!しゃー!」
「はいはい、化けの皮が剥がれているぞ」
「ぐぬぬ」
「あはは、まあ剥がれても良いけどな」
そういってアリス4がライザに立ち向かった。
そして私が一発でダウンするような攻撃を「よっ」「はっ」とかいいなが軽やかによけると
なんとクリアしてしまった。
思わずアリス4に駆け寄った。
「すごいすごいよアリス4!」
「そう思うなら、もう少し労わってくれよ」
「はいはい、コンビニのアイスを買ってあげるから」
「コンビニのアイスくらいで何とかなると思うなよ!」
「なんてこと……。無償でやってくれるなんて。もっとお願いしないと」
「どこをどう考えたらそうなるんだよ!」
「じゃあ、アイスいる?」
「いる」
そういって笑った後、あっと思った。
「よく考えたらコンビニなんてこの世界になかったわ」
「大丈夫だよ。あるから」
「えっ?」
「何でもない。それよりこれでライザもクリアだな」
そうだった。これで乙女ゲーの攻略対象全員クリアだった。
「本当にクリアできちゃった」
「じゃあ、フィリップは引き受けておくから、次にいくんだ!」
「わ、わかったわ、アリス4」
そして特に意味もなくフィリップから立ち去って、あれ?と思った。
私乙女ゲーに転生したのに攻略対象全員、並行世界の私に取られてしまったのでは?
そう思って立ち止まって悩んでいると、攻略対象を宥められたのかアリスたちが近づいてきた。
なのでアリスたちに相談してみた。
「並行世界の私に攻略対象全員を取られた件について!」
「何てことだ、並行世界のやつら許せないわね」
「全くだなんてやつらだ」
「本当だな」
「あなたたちだよ!」
「あはは、ごめんね。いつの間にかアリスから取ってしまっていたなんて」
アリスたちは、形だけはごめんなさいをしつつ、顔は笑っていた。
まあ、攻略対象をゲットできたんだから嬉しいのはわかるんだけどね。
「本当だよ。せっかく乙女ゲーに転生したのに私の相手が残っていないじゃない!」
腕を組んでぷんぷんと怒りを表現した。
でもアリスたちはニコニコしていた。
「大丈夫、アリスの相手はいるから」
「どこに残っているのよ!」
攻略対象以外の男性なんてよくわからないのに、相手を見つけるなんて無理では?
「乙女ゲーで独身エンドってどうなんだろう」と落ち込んでいると、アリスたちが微笑んだ。
「アリスったら、よく耳を澄ませないとダメよ」
「どういうこと?」
「いいから、よく耳を澄ませて有栖」
「えっ?」
何か懐かしい響きに、誘われて耳を澄ませてみると声がした。
「有栖!有栖!」
何か泣きそうな声だった。悲しさが伝わってくるような叫びだった。
それを聞くと心が張り裂けそうな気持ちになった。すぐにいってあげないとって。
でもどうすれば良いんだろう。
そう思ってアリスたちをみると、何故かアリスたちの姿がだんだん透明になっていた。
いや違う。アリスたちだけでなく周囲の建物や人たちも透明になっていってる。
私がこの世界から消えかけているってこと?
「ふふふ、この世界の攻略対象はもう大丈夫だから」
「だから、有栖が本当に必要としている人のところにいってあげて」
アリスたちが手を振っていた。
「どういうことなの!」
疑問がいっぱいで混乱している。でもそれ以上に「有栖!有栖!」と呼びかける泣きそうな声のところにいってあげたいと思った。
「もう!よくわからないけど、いってくるね」
「いってらっしゃい」
そうして、どこか懐かしいアリスたちに別れを告げて、声のする方に浮かんで行った。
そして………。
目を開けると、目の前に泣いている幼馴染の顔が映った。
「もう、うるさくて目が覚めちゃったよ」
「有栖ーーーー!」
そして、抱きしめらえた。
周りをみると、両親と姉と弟が私の手を握って眠っていた。
「ちょっと。一樹苦しいよ」
「うるさい。有栖、心配したんだからな!」
「うう……。それはごめん。でも私どうなっていたの?」
「徹夜でゲームをやりこんだ挙句に階段で転んで頭を打って意識を失っていたんだって」
「あちゃー。恥ずかしい」
「家族全員ずっと付きっきりでお前のことみていたんだぞ」
「本当に感謝だよ」
そういって家族の頭を撫でる。すると、
「もう攻略対象のミニゲー嫌だー」
「もうピアノ演奏やりたくないー」
「反射神経の限界だよ。姉ちゃん」
という寝言が聞こえた。
「だよね。私もそう思う」そういって笑っていると、真剣な目をした一樹と目が合った。
「一樹どうしたの?」
「有栖、大事な話があるんだ」
「ちょっと急にどうしたのよ」
いつもおどけている幼馴染の様子に心臓が何故かドキドキしてしまう。
「お、俺……」
「う、うん……」
何だこれ、思春期の男女か!心の中で突っ込んだ後、気がついた。
うん、私たちそうだった。
何かとても恥ずかしくて、ふわふわする。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
とても幼馴染の顔が見れなかった。
「有栖のこと好きだ。ずっと一緒にいてくれ」
俯いている私に幼馴染の一樹が告白してきた。すごく嬉しかった。
ああ、そうだった。攻略対象を救うとかいっていたけど、第一にこの人を見なければいけなかったんだ。
「有栖?」
心配そうな声がしたので、私は笑顔になって顔を上げた。
「うん、私もだよ。ずっと一緒にいようね」
そして一樹が私を抱きしめた。
すると、
「ヒューヒュー」
「ラブラブだな」
「まあ、一樹兄ちゃんなら許してやるよ」
「お前は何様のつもりだ、こら」
「いてて紗希姉ちゃん痛いよ」
家族がわいわいしながらこちらを見ていた。何だこれ、家族に告白シーンを見られるとかめちゃ恥ずかしいんだが。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいから見ないでよ!」
「えーいいじゃん。けちー」
家族がニヤニヤしながら反応してきた。
「お、俺は見られてもいいぞ」
そして幼馴染も混乱しているのか目をぐるぐる回しながらそんなことをいっていた。
そしてワイワイと騒いだ後、家族と目を合わせて笑った。
「ただいま、ヒロインさんたち」
「おかえり、ついに攻略対象を見つけた大切なヒロインさん」




