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リリック〜魔法使いアイアンの冒険伝〜  作者: 風来坊 章
第2章 王都ダブリンスと追憶の章
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第69話 容疑者リチャード

 こいつ、いつも以上に言ってる意味がわからんぞ。


 親父、ドニゴールが殺された?


 嫌疑が俺? なんだそりゃ!?


「意味がわからねえんで、最初から説明してもらっていいですかね団長」


「黙れ!! 状況的に貴様が我が祖父を殺害したのは明白!! 証拠があるのだぞ!!」


「なんのだよ!?」


「昨日、最後に祖父の部屋で会ったのはギルバート、貴様だ!! それを証拠に、祖父の部屋に貴様のペンが部屋に残されていた!!」


 早口で所々わかんねえよアホが!


 それに俺のペンが殺人現場にあっただと?

 

 誰かが俺をハメやがった!?


 ていうか親父がマジで死んだのか!?


「ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ! そんなもん、誰かが俺のペンを放り込んだんだろうが! だいたいドニゴール侯になにがあったんだ!?」


「黙れ!! 状況的に貴様しか下手人は考えられない! 騎士達、副団長を拘束せよ!!」


 馬乗った俺の騎士団が周囲を囲む。


「あ? お前らごときが俺を捕まえられんのか?」


 騎士の小僧共に睨みをきかすと、全員俺に目を合わせられなくて、ビビってやがるな。


……クソが、誰が親父を殺しやがった!


 ちくしょう、くそ!! 


 ただじゃおかねえぞ!!


 逮捕して裁判かけるなんざ生温い!!


 やった野郎探し出してぶっ殺してやろうか!


 クソが! クソッタレめ!! 


 頭に血が昇ってきやがる!! 


 俺を、刑事なめんじゃねえクソ!!


 その時、ふいに前世の絶望の記憶を思い出す。


 前世で刑事やって30代も半ばに差し掛かり、一等刑事かつ警部補(ルテナン)に昇進して、自分のチームを率いていた時だった。


 いわば人生の絶頂期ってやつで、片っ端からギャング共を締め上げて、俺は市に大きな成果を上げ、ニューヨーク市警察最強の刑事とも呼ばれていた。


 刑事やりながら、制圧術のインストラクターなんかもやったりしてたのもこの時で、プライベートではおふくろの死を経験して、彼女が面倒を見てた兄嫁のジェシカと甥っ子のショーンを扶養家族にする。


「叔父さん、俺、大きくなったら警察官になるんだ。死んだパパや叔父さんやお爺ちゃん、ひいお爺ちゃんみたいに、ニューヨークの街を守る警察官になりたい!」


 ショーンは刑事の俺に憧れてて、嬉しくなった俺はよくショーンの頭を撫でてやってたが、大きくなると兄貴にそっくりになった。


 スポーツも勉強もできる優等生ってやつさ。


 すでに退官した叔父貴達も、ショーンを兄貴の生まれ変わりだって言って可愛がってたな。


 それとジェシカ。


 彼女も俺も、多分互いに惚れてたかもしれなかったが、お互い死んだ兄貴の顔がチラついて、男女の関係にはなれなかったことを思い出す。


 そんなもどかしい毎日送りながら、俺はブルックリンで、とあるギャング抗争の内定をしていた。


 だが……。


「ギブソン刑事、残念です。検視官によれば、被疑者の死因は胸部圧迫からの心不全と判明。委員会は職務執行を違法性が高いものと認定し、第二級殺人罪容疑で身柄を拘束させてもらいます」


「おいおい、ちょっと待ってくれよ! 昔はよくあったことだろうって! あいつはギャングだ!! 俺が職質した時、ヤローはダッシュボードに手を入れようとして、武器出そうとする素振りした! 俺は自分と部下を守ろうと、ヤロー車から引き摺り出して、取り押さえたんだ!!」


「残念ながら凶器等は発見されませんでした。被疑者の車両運転席ダッシュボードからは、運転免許証が入っており、状況からこれを出そうとした可能性は高い」


「そんなの結果論じゃねえか! 部下が照会かけたら、Gマークこそなかったが、暴行、傷害、強姦、麻薬不法所持で前科6犯! 二度も刑務所送りになってるクソ野郎だぞ!? やつはギャング共の顔役に間違いねえんだ」


「しかし状況が悪い、ギブソン刑事。一般人もその様子を動画撮影し、あなたがチョークホールドまでして、白人警察官の違法逮捕でないかと騒いでます」


「薬中を逮捕するには、それくれえやんねえと制圧できねえんだぞ! あんた現場知ってんのか!!」


「……ご同行を、ギブソン刑事。今は昔とは違うんです」


 ギャング疑惑がある麻薬所持容疑の男を逮捕しようとした際、コカインやってる野郎の体を締めすぎたせいで、心臓に負荷かかったのか被疑者死なせちまう。


 俺の警察官人生で、最大の失態と言っていい。


 しかも当時は、ミネソタ州のジョージ・フロイト事件とブラック・ライブス・マター運動が取り沙汰されてた時で、黒人暴動や社会不安を恐れた市警内部の懲戒委員会は、俺を第二級殺人罪で逮捕した。


 屈辱だったよ。


 刑事だった俺は房にぶち込まれ、来る日も来る日も、内部監査官から調べを受けて俺の刑事としての名誉も、警察一家で生まれた俺の誇りは地に落ちた。 


 一応、俺の実績を鑑みたようで、委員会は免職猶予処分にした。


 懲戒免職にしねえ寛大な処分ってやつだが、このせいで俺は刑事のバッジを取り上げられて、異動先はコミュニティ事務局地域福祉課、地域相談係長。


 内勤の閑職に左遷ってやつだ。


 その頃には甥っ子のショーンが成長して、俺の養育費で学校に通ってる時で……俺は……汚職に手を染めて、ちくしょう、クソ。


「市警察最強の刑事って言われたあのギブソンも、落ちぶれたもんだな。見ろよあの腹、ドーナツの食い過ぎとアルコールのせいで、ブクブク太りやがってみっともねえ」


「声がでけえよ馬鹿! 聞こえてるぞ!」


「構いやしねえよ。知ってるか? あいつが住民相談って名目で、ギャング共から袖の下もらってる噂。市警トップの検挙数誇ってたのに、ああなると終わりだぜ」


 周りの同僚は、ゴミを見る目で俺に接してきて、孤独に陥って、それでも俺はショーンとジェシカのために……俺は……。


 クソが、嫌な記憶を思い起こさせやがって。


「すぅぅぅ、ふうー」


 深呼吸で落ち着け、冷静になれよ俺。


 じゃねえと取り返しが効かなくなる。


 まずはこの状況をなんとかしよう。


 話を総合すると団長も俺の部下も、俺を無実の罪で逮捕する気か。


「うっ、どうした騎士達よ! 殺害犯とそこの少年、魔王軍の関係者の疑いがかかった者を拘束するのだ!! 聖王陛下の勅令である!!」


 けっ、勇者の話や小僧の話、ショーンの話も合わせて、誰が俺をハメやがったか丸わかりだぜ。


 俺はAトムの小僧と顔を見合わす。


「どうやら、俺ともあろう者がハメられたくせえぜ、小僧」


「はっ、多分ジェームズの野郎が動いたっぽいぜ。どうするよおっさん、なんなら俺が……」


「待て、ここは俺に任せておけ」


 俺はマーガレットの嬢ちゃんの目をじっと見る。


 怒りで冷静さが全くねえが、身内を殺されたらそうなるだろう。


「おい、団長。俺が世話になったあんたの祖父、ドニゴール侯を本気で殺したと思ってんのか?」


「……今更弁明か?」


「質問を質問で返すんじゃねえよ。俺が恩人のあの人を殺す動機がねえって言ってんだ!」


「じゃあ、お前じゃなければ誰だと言うのだギルバート副団長」


「それを調べんのが、俺ら王都防衛騎士団だろ?」


 この騎士団には当然、宮中とかで起きる不審死だとか刑事事件になりそうな時の対処のやり方、犯罪捜査の規範を教えてる。


 まず事件現場は証拠の宝庫。


 アカデミーで刑事教官から習ったことだが、これはマジな話で、刑事の犯罪捜査の基本は現場を納得できるまでよく見ること、そして記録を残すことだ。


 現場の状況をありのままの状態にして、できる限り多くの情報を採取することが事件解明の糸口になるからな。


 そのために重要になるのは現場の保存状況だ。


 犯行現場の物に手を触れない、動かさない、部外者を入れさせない、歩き回らせない、立ち入り禁止の規制線を引く。


 現場が屋内なら最低でも部屋を立ち入り禁止にし、屋外なら出来る限り広範囲に封鎖。


 こうすることで、なるべく被疑者と被害者の痕跡のみを残す状況にして、事件当時なにが起きたかを解明しやすくするってわけだ。


 その後は証拠収集の専門官に引き継ぐのが基本で、あとは俺だとか保安部隊の専門官、異端審問官が実況見分を実施する。


 この世界にある物で色々試したが、食用ゼラチンとスライムの死骸を混ぜて薄くしたもので指紋や足痕、工具痕を採取。


 屋外では石膏流し込んで採取する方式や、銀の食器使って、毒殺だとかを判別する方法だって編み出した。


 あとは事件現場の状況の見取り図だとか、立体図法なんかもやって、絵でその状態を残したり、発見者の調書を取ったりな。


 前みたいに写真撮ったり、血液から遺伝子判定だとかできればいいんだが、贅沢は言えねえ。


 それに前世じゃ法医学の基礎だって習ってたし、他殺かそうじゃねえか、死因の究明くれえはこの世界の奴らにも教えてやれるくらいの知識もあった。


 本当は前世で、解剖学とか勉強してればなおよかったが、その辺は王宮の医者とか呼んでやらせている。


 とまあ、捜査、捜索、差押まで実践できるように、保安部門と異端審問部門は徹底的に鍛え上げた。


 いわば俺自慢の異世界警察ってやつで、宮中における不審死や陰謀の類も、俺らのおかげでだいぶ減らしたしな。


 いつも通り、こいつらがキチンとしてれば、俺の無実は証明できるんだが……まずは確認が第一。


「ドニゴール侯の死因は? 死亡推定時刻は? 検視はやったのか? 下足痕は? 外部からの侵入の可能性は?」


「うるさい!! わたしがそんなこと、わ、わかるわけないだろ!!」


 こ、このポンコツがああああああああああ!


 開き直りやがって、直に俺が犯罪捜査の基本教えただろうがよおおおおおおおお!


 待て! 落ち着け俺。


 俺の部下共ならきっと大丈夫だ。


 現場保存や実況見分もキチンとやってるはず。


「ふ、副団長。現場の状況はその……」

「昨晩、団長と侍従達が第一発見者で……」

「ええ、団長と侍従達がすでに中に……」

「事態が事態なので現場封鎖もかなわず……」

「残念ながら足跡多数で取れませんでした……」

「ご遺体もすでに団長と侍従達が棺に……」


 くっ、クソボケがああああああああああ!


 現場壊してんじゃねえええええ!!


 だから反対したんだよ、このお嬢ちゃんが団長やるのをよおおおおおおおお!!


「ともかく出頭せよギルバート! 貴様の身柄は一旦、大主教ジェラルド卿アルバート公爵が預かり、しかるのち裁判にかける!!」


 チッ、異端審問より上の、王家と外戚関係にある大主教司祭様ときやがったか。


 あのジジイ、宮中で力つける親父や俺の騎士団をうっとうしい目で見てやがったが……野郎、聖王とグルになって親父を亡き者にし、この俺をハメやがったか。


 それに俺が関わる魔王軍への単独捜査を知ってるのは、俺、親父、団長、それと大主教。


 事前に俺の動きがわかっていた大主教率いる教会側が、本ボシの可能性があるか……だとしたらこれ以上、教会の僧侶と一緒にいるのはリスクがあるな。


 それにマーガレット嬢ちゃんも怪しい。


 彼女が第一発見者であるのが間違いないのなら、気が動転して現場を壊したんじゃなく、はなっから俺をハメるために協力していたとしたら?


 いや、彼女にも動機は見当たらない。


 ありうるとしたら、第三者に利用されてる線か。


 それに、親父が宮中で出世したことに不満を持ってた武断派の上級貴族共も多い。


 王国侍従長のポストと、実質的に騎士団を率いてる俺がいなくなれば、王家側近と最強騎士団が手に入るからな。


 となると奴ら上級貴族の思惑が絡んでいる線も考えられるが……クソが、情報が少ねえ。


 この状況、推理の線を間違えるとエライことになっちまうぜ。


「副団長、不本意かと思いますが……」

「陛下の勅令ですので」

「ここは一つ我らと王都に」

「ご同行を副団長」


 ていうか揃いも揃って馬上から、上官見下ろしやがってイラつくぜ。


「おい、貴様ら俺を誰だと思ってんだ。ていうかよ、こんなんじゃ本ボシ誰かわかんねえじゃねえか!」


「うっ……」


 肝心なところで仕事できねえボンクラ小僧共が。


 基礎教練を一から教育し直してやろうか?


 延々と方向変換の訓練を日が暮れるまでさせて、朝日が昇るまで駆け足やらせてやるぞ小僧共!


 するとAトムの小僧は俺を見上げる。


「おっさん、こいつらに何やったんだよ? あんたにめっちゃ怯えてるぜ」


「あぁ? お前の親父が海兵時代、俺に叩き込んだことをやっただけだ。おかげで俺が号令かけると、体が反応しちまう。こんなふうに……全隊〜〜〜〜気をつけぇっっ!!」


 俺の号令で騎士団の騎兵達が手綱を握ったまま、馬を静止させて次の号令に備えるための準備に入った。


 体に叩き込んだクセってのは、人間なかなか抜けねえからな。


 これにより小僧共と馬達は、訓練のクセで一斉に次の指示を待つようになり、マーガレットの嬢ちゃんを見やる。


「そもそも令状は? その発布者は?」


「うぅ、それを言う必要は卿にない!」


「あっそ。だったら、この逮捕拘束に正当性がねえぞ? あんたに教えたはずだ団長。王国訴訟法に基づき、貴族身分を拘束するには、まず令状を示し、被疑者の権利を告げるようにと」


 この王国訴訟法は、俺とドニゴール親父が作った法律。


 今までこの国の貴族共は、法律の枠外でやりてえ放題だったから、悪徳貴族を拘束して裁判かける場合の令状制度と、ミランダルール参考に、貴族権保護を盛り込んで作ったわけだ。


「黙秘権、裁判の際の自白の採用と弁護人の選定、逮捕日、時間、容疑名、発布者を告げるようにって。そうしねえと、被疑者側は自衛の権利ってのが出来て抵抗されるから、キチンとしろとよお。例えば……」


 力を使用して、ブリューナクの槍を警棒(バトン)に変えて、一気に距離を詰めてお嬢ちゃんの愛馬のケツに打撃をぶち込んだ。


「こんなふうに!」


「な!?」


 俺の一撃で馬が恐慌きたして、方向転換して逆方向へ走り出す。


「ヒヒーーーーーーーン」


「きゃあああああああああああ!」


 その様子を唖然として、部下共が見つめる。


「おい、暴れ馬から団長助けに行けよ。心配しなくても俺は殺しなんかやってねえし、王都に出頭してやるから」


「は、はい! だ、団長をお救いしろおおおお!」


 小僧共がお嬢ちゃんの馬を追いかけてる、今がチャンスだな。


「お前ら馬車に、まずはここを離れる!!」


 俺達は急いで村に留め置いた護送馬車まで戻る。


 おそらく今のまま対策もせずに逮捕拘束された場合、俺は貴族殺害容疑で裁判で有罪くらって、よくて終身刑か、最悪は絞首刑。


 だったら、俺の容疑を覆すだけの証拠集めと、それまでの身の安全の最優先が先決!


 思いながら、護送馬車の荷台のホロを開けた。


「降りろ異端者共!! 俺の馬車から失せやがれ!! 僧侶達は、村の騎士団に異端者を引き渡せ!!」


「ヒッ!」

「言う通りするんで!」

「命だけは何卒!!」


 護送中の馬鹿共と、同行中の僧侶共をホロから追い出し、クリスタと馬車で居眠りしてやがるドラゴン女を見る。


「乗れお前ら!! 僧侶クリスタは残れ!」

 

「アイアン、この状況なんなの!?」


「エレナ、話はあとだ。ここは俺らに任せとけ。おっさん、まずは安全確保だ」


「アイアンの言う通り乗ろう、みんな」


 小僧達が馬車に次々乗り込み、俺は先頭の馬達の手綱を握ると、村に駐屯させてた部下が来る。


「ふ、副団長! 先程本隊から連絡があり、副団長を殺人容疑で拘束せよと。な、何かの間違いですよね、副団長」


 こいつらか、俺の位置を本隊に教えたのは。


 だが、こいつらはこいつらで仕事を全うしたんだから、責められねえか。


「ああ、間違いは正さなきゃならねえ! とりあえず貴様らは僧侶達と共に、馬車に乗せてた異端者共を連行しろ!! 俺はこれから急ぎで王都に行く!」


 馬達のいななきと共に、俺は馬車を走らせて村から脱出し、とりあえず街道を走らせた。


 すると前のホロからAトムの小僧が顔を覗かせ、俺の側に座った。


「おっさん、このあとどうする?」


「ああ? とりあえず王都の西側! ウェストタウンで馬車を降りて、俺が面倒見てる安全地帯まで行く! 緊急走行(エマージェンシー)!!」


 俺は力を発動すると、馬達に特殊金属がまとわりついて馬鎧になり、馬二匹の頭に青と赤のパトランプがつく。


「ヒヒーン!!」


 すると馬車が通常じゃありえねえ速度に加速して、街道を駆け抜ける。


「wow!! まるでCop carだ!」


「ふん、まるでじゃなくてまんまさ。一気に飛ばすぜ!」


 村からウェストタウンまで、15マイル。


 飛ばせば15分とかかんねえ。


 俺の帽子をマイク付きのヘルメットに変えて、状況を確認する。


「僧侶クリスタ! そいつ大人しくしてるか?」


「はい騎士様、ずっと彼、アイアンを魔導士と呼んでましたが、泣き疲れて眠ってしまいました」


 それなら好都合。


 俺のパトカーの中で、うるせえことされると困る。


「小僧モテモテだな?」


「うるせえよ! 仲間から頼られんならともかく、付きまといやがってビッチが」


 すると冒険者達がホロから顔を覗かせた。


「どうしようかアイアン。お師匠様やショーン様に連絡取った方がいいかもしれないよ?」


「あたしもそう思う。特にショーン様にできるだけ早く報告したほうがいい」


 それもそうだな。


 とりあえず、ウェストタウンの安全地帯に着いたら馬車に積んでる大鏡で連絡だ。


「なあ、おっさん。俺が聞きてえのは、その安全地帯についたあとの動き方だ。このままだと、俺はともかくやべえぞあんた」


「ふん、被疑者になるのは何も初めてじゃねえ。だがこの状況で出頭すれば、多分大主教のヤロー、王都にある通称『絞首台の丘』に俺を送ってそのまま縛り首だ。となると、それを覆せるだけの証拠と、有力貴族の弁護人が必要になる」


「オーケー、弁護士のコネは?」


 それが問題だ。


 確かに俺は武断派の貴族共の子息共には、任期付きで騎士団長や中隊長に据えたりして、教育をしたから、ある程度の影響力は持ってると自認してる。


 だがしかし、大教主の公爵が出てきてる現状じゃ、今回の件で俺を庇う貴族はほとんどいねえと見ていいな。


「おっさん、そしたらショーンが適任だ。あいつ、仮にもこの王国の侯爵だからよ。あんたが冒険者組合に依頼って形にすればよくねえか?」


「なるほど、その手があったか。じゃあ、その段取りつけるために、王都の安全地帯に行くぜ」


 しばらく馬車を走らせると、王都ダブリンスを囲むレンガと石造りの高さ50フィートはありそうな、防壁が見えて来た。


 中世ヨーロッパとかにありそうな、典型的な城塞都市がこの王都って感じだ。


 この防壁は北門、南門、西門があり、俺の王都防衛騎士団がシフト組んで防備にあたらせている。


 本来なら余裕で入れるが、殺人容疑かかってる俺がそうすんなり入れるほど、俺が作った騎士団は甘くねえ。


 だが、この防壁はウェストタウン側の防備が薄い。


 なぜなら運河として利用してる、ルフィー川が通ってるためで、ここの防備は水路に利権持ってる、カニンガム侯爵の私兵がやってる。


 私兵といっても、貴族じゃなくて港湾関連で仕事してる水夫や労働者共だから、俺からしてみればどうにかするのはチョロい話。


 川の水路沿いからウェストタウン側へ侵入できるはずだ。


「よし、そろそろ王都ダブリンスだ。お前ら馬車の中にいろ。俺が対応する」


 俺は馬車を元に戻して、水門沿いをゆっくり走らせた。


 すると通行管理してる労働者共が、やってくる。


「王都防衛騎士団だ! 周辺警戒を終えてここを通る。道を開けろ」


「へ、へえ! すぐに」


 やすやすと通過して水路沿いを通ると、徐々に水路に悪臭がし始めた。


 貧困窟とも呼ばれる、王都ダブリン西側のウェストタウンへ入る。

陰謀で容疑者となった彼、現場下士官としての能力や刑事としての推理力、警察官としての戦闘力は優秀です。

しかし前世のトラウマの影響で、まだ上手い具合に全ての力を発揮できていません。

次回は王都の話になります。

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