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リリック〜魔法使いアイアンの冒険伝〜  作者: 風来坊 章
第1章 ベルンファーストと始まりの章
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第38話 預言師ショーン 前編

「大丈夫ですよショーン、むしろこの方が好都合」


 いや何が好都合!?


 大丈夫じゃねえじゃん死んでるし!


 冗談じゃねえし、意味わかんねえええええええ。


「あなたの魂を呼び寄せたここは、精霊界と人間界の間にある時間の概念がない幽界。こうでもしないと、神でもある私と人間界にいるあなたとの接触が難しい状態なので」


 いや、だから俺死んでるんだけど!


 全然俺に都合よくねえんだけど!


「私が選んだ精霊の勇士よ、あなたにこれからそれに相応しい力を与えましょう」


 相応しい力とかいらねえええええええ!


 仮に生き返っても、そんなもんいらねええええ!


 ていうかよ、ゴメスのいう通りマジで俺が精霊の戦士ってやつなのか?


 いやいや、やりたくねえよアホか!


 俺がやりてえのは、ラブ&ピースなんだつうの!


 フィクションにあるような、バトル的な展開とかぜってえやりたくねえよ!


 確かに昔、川﨑でヤンキーやってて多少は喧嘩慣れはしてっけどさ。


 バチバチにバトルしたり暴走してる東リ●やO●Tみてえな族とかじゃねえから。


 どっちかって言うと、ファッションヤンキーみたいな感じで、ダンスとナンパと女遊びくれえしかしてねえし、その後はホストやってスカウトだし。


 スカウトっつっても新宿スワ●の主人公みたく悪いやつと戦うとか、俺無理だからね平和主義者だし。


 どっちかって言えば、夜●の聖也的な感じでよ、貴族令嬢を口説いてロマンスな一夜楽しんだり、普通のなろう系的なチートハーレムとか作りてえわけよ。


 それが精霊の勇士だか戦士だって!?


 馬鹿こいてんじゃねえぜまったく!


 俺がそんなキャラかってんだ。


 つうかマジふざけんなよ、この世界。


 魔王軍復活するわ、よくわかんねえ吟遊詩人に脅されるは、俺の組合に加入したラッパーみてえなやつがガチの魔王かもしれねえわ。


 おまけに、教会組織がやったなんかで俺死ぬわ、下手すりゃあ国家規模の陰謀とか働いてる可能性もあるし。


 マジでふざけんなバカ! 


 アホ! ドアホ!


 ボケ! クソボケ! 


 お前の母ちゃんデーベソ!!


「何やら精神状態が混乱してるようですね。無理もないですか、私の母君はデベソじゃありません」


 !?


 心読んできた。


 マジかよやべえよやっぱこの妖精様。


 つうか俺、何度も言うけど、もう死んでるんだったら力だとかもらっても意味なくね?


 するとアイアンと一緒にいたはずの、ドレス姿で羽を生やした可愛い妖精も幽界だか何だかわかんねえ空間に姿を現した。


「ご苦労、ティターニア。私に彼の報告を」


「はい、お父様」


 うぉ、喋った。


 この子の声、初めて聞いたぜ。


 なんとも可愛らしい妖精って感じだわ。


 ていうかお父様?


 この子、妖精王さんの子供?


 するとティターニアと呼ばれた妖精の女の子が、妖精王が差し出した右の手のひらに立ち、何かを念じる。


「……わかりました。では引き続き彼の動向を」


「でも彼は、お父様が言うような……わかりました。サポートと監視を継続します」


 いやお互い何がわかったの?


 意味がわからんし監視?


 アイアンのことを言ってるのか?


 あ、妖精の女の子が姿消した。


「ショーンよ」


「は、はい妖精王様」


「私は君を高く買っている。君も薄々気がついているみたいだが、この世界は危機に瀕してる」


 そりゃあそうでしょうっての。


 よくわかんねえ邪神だとか暗躍してたり、まだ完全に壊滅してねえ魔王軍だとかいるし。


「君が思ってるより事態は深刻です。元は地球から来たレムリア人や邪神バロールのみならず、正体不明の謎の世界から侵略を受けている」


「はい? 正体不明の謎の世界……ですか?」


「そう。我々神々にも匹敵するような存在が暗躍している可能性があります」


 なんだよそれ。


 魔王軍とかでも怖えのに、神様もやべえとか言ってるそんなの相手にしたくねえよマジで。


 ていうかよお、そんなにやべえんだったら、あんたがこっち来てなんとかしろっての!!


「私が人間界に過度に介入するわけにはいきません。法令違反ですし、前にそれをしてしまったことで、遺憾ながら邪神の一派に捕まったことがあったので……」


 法令!? 知るかよそんなもん!!


 俺になんなの関係があるんだよ!!


「……君、私に否定的な気を発しているようだが、私の忍耐力を試すようなことはやめた方がいいですよ」


 うっ!? やべえ。


 今、微笑みが消えて真顔になって怒ってる。


 いやいや、自分を貴族に転生してくれてすげえ感謝してますよって妖精王様。


「落ち着いてくれたようですね、ショーン」


「……はい」


「それでは君に相応しい力を授ける前に、君からも疑問点だとか色々あると思うのです。質問があれば答えられる範囲で答えましょう」


 質問か……山ほどあるぜ。


 まず……。


「今日うちに加入したアイアンですが、ぶっちゃけ正体は魔王ですよね?」


「……申し訳ありませんが答えられません」


 答えてくれるんじゃないんかーい!


「正確に答えるなら、彼が例の学院に入る前の一切の経歴は、あらゆる世界で抹消されています」


「経歴が抹消って……誰が? なんのために? それに学院ってなんなんすか?」


「私の免責特権で話せる範囲ですが、世界を救済するための専門職を訓練し育成する目的で設立された学院です。設立者は極秘事項のため君には話せません」


 世界を救う専門職?


 何それスケールでか!


 いや待てよ……そしたら……。


「えーとその、例えばですが100年前に世界を救ったとか伝説が残る勇者さんみたいな?」


 すると妖精王さんの体がビクッとして、側から見てもわかるくらい、めっちゃテンパってるのか、目が泳ぎまくる。


「そ、そうですね。世界救済のために送り込まれる、神に仕える戦士を勇者。または神に仕える魔法使いを救世主といいます。人間界では英雄や聖人、預言者とも言われます。彼ら、または彼女達が送り込まれる世界にはそれぞれ難度が数値化され、適任者が送り込まれるよう、定められています」


 勇者と救世主か。


 ドラ●エみてえだな。


 難度設定とかまるで冒険者組合みてえだが。


 あ、そうか。


 冒険者組合を設立したって言われる勇者さんは、それを元にしてクエスト難度だとか、冒険者のランク付とか設定したんだ。


 じゃ、じゃあ100年前現れた勇者さんは魔王軍大幹部や伝説のドラゴンがビビッちまうくれえだし、勇者としてどれくらいのランクなんだろう。


 あのアイアンが勇者の中の勇者とかって言ってるくれえだし、どうなんだ? 


 100年も前の話だし多分もう、生きてはいないんだろうが。


「……例の勇者ですか。アレは……人間界の闇が生み出したような規格外の怪物としか言えません」


「はあ……怪物ですか」


 偉い神様のはずの妖精王さんが、勇者さんにめっちゃビビってるよ。


 ていうか人間界が生み出した闇とか、マジでいかちいしやべえだろ。


「あらゆる世界で蔓延る悪を悉く滅ぼす、逸脱者。近年稀に見るほどの邪神と化した戦神オーディンを完膚なきまで滅ぼし、悪神ロキですら従わざるを得なかった化物。あんな怪物、人間界に放つほうがどうかしてる……うっ、思い出したら頭痛が……」


 どうやら100年前に現れた勇者様は、神様でもブルっちまうくれえ、それはそれは恐ろしい人のようだった。


 完全に怪物だとか化物呼ばわりされてるし。


「はあ、でも人間だったらもうお亡くなりに……」


「違います」


「へ?」


「そもそも私が君達を転生させた件、あの化物が大きく関わってるのです。アレは……不滅の勇者。きっとこの会話も、どこかで聞き耳立てて……うう、吐きそう」


 生きてるんだ勇者さん。


 ていうか妖精王さんのビビりかたが尋常じゃない感じで、俺まで怖えんだけどその人。


 それに俺やゴメスの転生に大きく関わっているって……なんで?


「ああ、そうでしたねショーン。君は私が指名したから知る権利がある。100年前、君達の伝説に残る魔王、レムリア王だったアトム・レムールは勇者によって倒された。邪神バロールも、聖女として君達が語り継ぐ、シャーロット・ピクタニヤ・マルカム・アルピオ・ダンケルトン・シュチュアートが封印した。そして囚われの私は勇者により救出されました」


 聖女様の本名、長っ!!


 ていうかバーベンフルトさん交えたアイアンの話は、やっぱマジだったんだな。


 そして妖精王さんは言及を避けてやがるが、多分アイアンこそが当時の魔王だろう。


「そのあと例の勇者は、私が担当するこのアルスターに蔓延る悪という悪を、徹底的に容赦無く、二度と立ち上がれぬくらいの恐怖をもって対応してくれました」


 ああ、それはあの魔王軍大幹部のワイドを見てわかったわ。


 アンデッドのくせに恐怖で吐いてたもん。


「勇者はアルスター世界の王侯貴族に対して、力を持って影響下に置き、新たな悪が生まれても滅ぼせるような組織も作り上げます。それが冒険者という存在とその組合です」


 ああ、ここまでは俺もなんとなくアイアンの話や、世界に残る伝承から推測して理解してる。


 問題は……。


「ええ、君も気付いているようですね。魔王がかつて率いた魔王軍残党や、モンスターと呼ばれる異業種は、いまだ健在。それどころか数を増やしつつ、かつての勢力を取り戻し、一方では人間達の争いも減りません。おかしい状況です」


「え、あはい。冒険者組合のクエストでモンスターは狩りの対象ですし……世界中でも軍隊が活動して小競り合いが……まさか」


 そう、俺は気付いちまった。


 冒険者組合やモンスターや魔王の手先や100年間生き残ったのは、どこか別の避難場所みたいなところがあったんじゃないかって。


 それと聖女教会を設立した聖王の陰謀の疑惑も。


「ええ、魔王の協力者及びその関係者は、勇者から徹底的に恐怖を植え付けられたはずでした。例の聖王と名乗る男も例外なく」


……うちの王様やっつけられたんだ伝説の勇者に。


 でも伝承じゃ魔王軍に立ち向かったのは、うちの王国ってことになってるけど……まさかうちの王国が戦ったのって……伝説の勇者?


 だとすると聖王の片腕なかったけど、あれは魔王軍との戦いじゃなくて、勇者の戦いで無くした?

 

「例の聖王と名乗る男は邪神の手先でした。それと彼が設立したと言われる聖女教団も、元はあの勇者が弱者救済のための医療と教育機関として設立したのです」


 あ、なるほど。


 聖女教は、聖王じゃなくて勇者さんが善意で作ったってことか。


 じゃあ、今のザマは?


 なんかもう聖王の私兵みてえになってて、俺死んでるし、シンボルマークもアイアンの話なら邪神がモチーフみてえだし。


「アルスターの時空で言うと50年ほど前です。かの男が例の教団を私物化し、世界各地で陰謀を企て始めたのは。それに人間ならとっくに寿命を終えているはずなのに存命している」


 あ、うん。


 うちの聖王、今年で120歳だもんな。


 普通に考えてありえねえ。


「ここから導き出される推測は、例の勇者を敵に回しても勝てるくらいの勢力が背後につき……なんらかの力を得て、邪神バロールの復活を目論んでる可能性」


「ああ、読めてきました妖精王様。例の魔王軍もそのよくわかんねえ世界の勢力が影響して、その……復活したと」


「はい。だから私はあなたを含めて、世界のために4人の地球出身の勇士を用意していた。それぞれの適性を判断し、時間軸をずらして転生させたのです」


 それがゴメスが言ってた精霊の戦士ってやつか。


 じゃあアイアンは?


 それにおっかねえあの吟遊詩人は何者なんだ?


「ああ、それについては……!?」


 妖精王さんの背後の空間がグニャリと歪み、背丈が俺より高い180センチはありそうな、スマートな体型を、濃紺の着物で包んだ日本人っぽい男が突如出現する。


「おお、いたいた。ご無沙汰ですねえ、妖精王兼精霊界元老のオベローン様」


 顔は……俺とタメはれるくれえイケメンだが、俺でもわかるくれえ、もうね、放つオーラがやばい。


 ワ●ピでいう他を寄せ付けないような、すげえ覇気とか放ってて、本能とか魂でやべえ奴ってわかる感じだ。


 それに、着物とか着てるしお侍さんなのかな?


 何者なんだよ一体全体。


「あ、あ、あ、あなたどうしてここに!?」


「そりゃあこっちのセリフですぜ。うちのもんが出した例の世界の申請と決済、止まってるって聞いたもんで」


 なんか声もやべえ。


 イケボなんだけど、なんかドスが効いてるっていうか、重低音効かせててなんていうか、暴力じみてる。


「あ?」


 げっ、目が合った。


 怖えよ、アイアンよりいかちいレーザービームみてえな目付きしてやがる。


「おう、ちょっとそこの妖精王様とお話があるから、待っててくんね?」


「あ、え? はい、わかりました」


 怖すぎるし、この有無を言わさねえ圧力。


 いいえの選択肢が、圧がやばすぎて掻き消されて、こんなの……はいか、わかりましたしか言えねえじゃんか。


「で、話の続きですがよろしいですかね?」


「え、あ、はい」


 妖精王さんも、はいというしか選択肢がねえようだった。


「あたしの方で用意した3人のうち、先行させて派遣した1人からの情報じゃ、魔法戦士に必要な道具が届いてねえようなんですわ。早急に許可して欲しいのと、賢者の派遣許可よろしく願いやす」


「その、はい早急に」


 ぺこぺこしてる、妖精王さんが。


 この妖精王さんって、神の中でも結構偉い人じゃなかったっけ。


「そちらさんで用意してた4人に関しては、そちらさんできちんと面倒見するように願いやす。現地で使えそうな人材のサポートも。それと例の4人の選定ですが、先に自分に話通してもらわねえと困りますぜ。もしやと思いやすが、自分のことなめてます?」


 相手神様なのに、めっちゃ圧力かけてる。


 この怖い人、多分妖精王さんより強い。


 もしくは妖精王さんより、しっかりとした後ろ楯とかあるか、もしくは両方だ。


「い、いえ本件は万全を期そうと思ってまして。もしものために転生させてた4人が、ちょうど適性がありましたんで、はい」


「そうですか、ならいいんですわ。今回の件、精霊界や神界含め、うちの親分の面子もかかってますんで。お願いしますよ妖精王様」


「は、はい。そちらの最上級神様と上級神にはよしなに」


 なんか、誰を派遣させてとか道具がどうだか言ってるし、妖精王さんが用意した4人って俺らのことだよな?


 しかも妖精王さんよりも、かなりの上役っぽい神様の意向とか、なんか働いてる?


 じゃ、あの人が用意した3人ってまさか……。


 すると、またおっかねえ人と目が合う。


「こっちの話はついたからよお、話の続きしろよ。いや待てよ……ふーん、おめえがそうか。確か日本からの転生者で金田晶だったか?」


「え、はい? えっと」


 この人、気付いた?


 俺が妖精王さんから選ばれた存在だって。


 ていうか俺の前の名前バレてるし。


「おう妖精王様よ! こいつ本当に使えるんですかい?」


 ぶっ!


 俺まさか、この怖い人から使えねえって思われてる?


 だとしたらチャンスだぜ。


 この人に適当なことフカシまくって、その精霊の勇士とかいう面倒くせえ認定を解いてもらうっきゃ……。


「小僧!」


 ドスが効いた声で呼ばれ、魂ごと怖気が入った感じになった俺は、声すらも発せずビビり上がった。


「俺にフカシなんざ通用するわけねえだろ? てめえふざけてんと、ベロ抜いて埋めちまうぞ小僧この野郎」


 こ、こえええええよ。


 この人超こえええ。


 なんか俺の考えとか思考を読んできたよ。


 しかも脅し文句がエグすぎてやべえし。


 まるでヤクザ……。


「チッ!」


「ヒッ!!」


 怖い人の舌打ちに、またまた俺がビビる。


 もうなんなのこの人、怖すぎるよ。


「これくれえの圧でビビり上がりやがって。そういう時はよ、へその下に力と気合いを入れて肝を練るんだ。そんで目に気迫を込めろ。今のおめえのザマ、不細工にも程があんぞ。この野郎金玉付いてんのかよ?」


 うっ、そんなこと言ったって……。


 ああ、そういえばヨガとかスピ系に詳しい女の子から、そんなことを聞いたことある。


 人にはチャクラって気の力があって、へその下の丹田ってところに力を込めると、精神が安定するとかなんとかって。


 俺は言われた通り、へその下あたりに力を込めると、そっちに意識が集中して、確かに落ち着いた気がした。


「そうだそれでいい。こういうのを胆力って言うんだよ」


「は、はい」


「どんな場面でもよ、根性(いも)引いてビビったら男として終わりだ。今の言葉を忘れんな」


「あ、はい」


 何がしたいんだこの人。


 俺にプレッシャーかけてきたと思ったら、今度は俺に教え諭すようなことしてきたり。


「あとおめえに確認してえことがある」


「は、はい」


 えーと、確認ってなんだろ。


「妖精王さんが転生した野郎らは、こっちでも経歴を調べさせてもらった。だが、わかんねえことが1つあるわけだ」


「え? あはい」


「おめえの前の母ちゃん、本名は金明子(キムミョンジャ)だっけか。本名じゃなくて、明子(あきこ)って名に聞き覚えがある。おめえが生まれる前、お母ちゃんはどこで働いてた? 平成の何年だったか、2001年あたりか? 神戸で暮らしてたとか……」


 いや知らねえ。


 俺が前世で生まれた時は川崎の団地暮らしだし、物心ついた時には義父もいたし、何が知りてえんだこの人。


 確かに俺の母ちゃんは、昼はパートやりながら夜の仕事したりしてる感じだったけど……母ちゃん。


 俺の前世で唯一の心残りだ。


 事故とはいえ、先におっ死んだ俺、親不孝にも程があるよな。


 すると超怖い人が、俺の顔をジロジロ見つめたあと、クッソでかいため息を吐いた。


 なんだそのため息? なんなのこの人。


「ちなみにおめえ、血液型何型だ?」


「あ、はい前世でもBでこっちでも多分Bっす」


 するとまたでっけえため息つく。


 何が聞きてえんだよ一体!?


「そうか……ここで会ったのもなんかの縁かもわかんねえな。まあいいや、こいつを頼みましたわ妖精王さん」


 い、いやいやあなたのようなクッソ怖い人と縁とかマジで持ちたくねえし。


「あ、はい。彼はそこそこ優秀で、これから必要な力を与えますんで」


「わかりやした。で、そっちが用意した専門職は、商人、格闘家、警官? 預言師? まあいいや。では例のワル連中の端緒が取れたらご連絡を。失礼しやした」


 おっかねえ人が俺達の前から姿を消した。


 多分妖精王さんの反応や、話してる内容から見るに、あの人こそが多分……。


「妖精王様、伝説の勇者様めっちゃ怖いんすけど」


「察したようですねショーン。絶対に怒らせたり根に持たれたりしてはダメですよ」


 カマかけて聞いてみたけど、やっぱあの人が伝説の勇者様なんだな。


 見た目とか若いっぽいし、年とかとってねえし、多分あの人は不死身の力とか、そういうの持ってそうだ。


 ていうかあの人は日本人なのか?


 なんか俺に前の母ちゃんのこととか血液型とか色々聞いてきたけど、なんだったんだあの人。


「おほん、それではあなたに力を与えましょう。あなたの適性は預言師です。これは人間界ではなかなかレアな適性で、あなたこそ私の切り札と言ってもいい」


 何それ!?


 預言師!?


 あれか? 未来が見えて預言できるとかいう?


「まず、主な能力は二つ。一つは、魔力を消費して未来を見る能力。これについて見たい未来を見るには、経験とトレーニングが必要になります。また1日1回のみ、夢を見ることで魔力を使わず発動可能です」


 経験とトレーニングが必要か。


 でもこれ、使いようによったらめっちゃ便利じゃんか。


 なんとかものにするっきゃねえな。


「続いて、あなたが預言師たる最大の能力、スキルとでも言いましょうか? 例えば時空を操り、自分以外の時空間を巻き戻せます」


 へー時を巻き戻せるわけね、ふーん……。


 ふぁっ!? 何そのチート能力!?


「そ、その時空間を巻き戻すって、そ、そのアレですか? 現在進行で進んでる時間を、巻き戻せるってことなんすよね?」


「はい、その通りです。この能力を利用すれば、意識はそのままに時を遡ることが可能。すなわち、状況を過去に戻すことで先に起きた状況を知れるというわけです。これによって預言も可能というわけです」


 す、すげえ。


 ジョ●ョの奇妙なラスボスみてえな、スタンド能力じゃんか! 


 つ、つまり例えばよお、パーティ会場で貴族令嬢のドレスのスカートめくりとかやるじゃん? 


 そしたらどんなパンツかわかるし、うまくいきゃノーパンじゃん?


 でもそんな狼藉をダンスパーティでしたら、国中の貴族から、俺はアホのキチガイ呼ばわりされて評判ガタ落ちになるじゃん?


 でもこれがあれば、それが無かったことにできるし、貴族令嬢のパンティーがわかるわけだろ、おい!


 チートじゃん、すげえチートじゃん!!


 ほ、他にもやべえ事態に遭遇したとする。


 でも時間を巻き戻せば、そのやべえ事態を回避可能、バ●の合気道の爺ちゃんみたいに護身完成するじゃんか!!


 すげえ! やべえ!


 転生してようやくこの俺も、俺つええええ無双ができるってわけだな!!


「ただし、この能力は人間のあなたには負荷が大きい」


 へ? 負荷? なんの?


 聞いてみよう。


「マジですか。例えばどんな負荷がかかるんですか?」


「例えば1秒巻き戻すと、あなたの寿命が1日分消費されてしまいます」


 マジか。


 つまり、1秒で1日寿命が減るってことは、1分だと60日分、6分で約1年分寿命が減っちまうか。


 てことは1時間で、約10年……6時間だと約60年分でほぼ一生分……けっこうやべえ制約だ。


「理解したようですね。それでは、この幽界からあなたの世界に戻りなさい。何かあればまた私の方から接触します」


「あ、はい」


「戻った先では、あなたの肉体はダメージを受けて心臓が停止しています。すぐに授けた預言師のスキルを使用するのです」


 こうして意識が暗転すると同時に、俺は目を覚ました。

後編に続きます

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