表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリック〜魔法使いアイアンの冒険伝〜  作者: 風来坊 章
第1章 ベルンファーストと始まりの章
3/91

第2話 騎士ショーン

 すげえ、やべえ逸材見つけた。


 年頃は、見た感じ中坊って感じだが……俺が手配してた盗賊達をあっという間にノシちまうなんて、すげえぜこいつ。


 どっかの冒険者か?


 いや階級示す、バッジやプレートも身につけてねえから違う。


 もしかして盗賊の仲間割れか?


 まあそんなのどうでもいい。


 うちの組合(ギルド)にスカウトしてえな。


 それにこいつの服装、どっかで見たことあるようなないような……まあいいか。


「おい、盗賊達を捕縛しろ! 牢にぶち込め!!」


「は! ショーン様!!」


 よおし、今のうちにどさくさにまぎれて、そこでのびてる盗賊共を、俺が率いる騎士隊に命じて捕まえさせちまおう。


 ああ俺?


 俺の名前はイケメン騎士にして伯爵、ショーン・スレイン・ゴールドマン・マクドネル。


 美しいって単語は俺のためにあるようなもんだ。


 この世界で物心ついた時、ハイランド聖王国の伯爵家長男として生まれた俺の第二の名前さ。


 まずファーストネームのショーンって響きからして、めっちゃイケメン感出てるし、ミドルネームの一つゴールドマンってのも金持ち全開で悪くない。


 え? 第二の名前ってことは、今の名前とは別に、最初の名前があるんじゃないかってなツッコミを、なんか感じがしたがあたりだ。


 そう、俺は勝ち組ライフを送ってる、いわば異世界転生して無双状態の俺すげえってやつよ。


 金、地位、ルックス。


 そんで日本時代の記憶とか経験で、この世界で王様の覚えめでたくなるくれえ、のし上がったのさ。


 俺をこのアルスターって世界に転生させた大妖精様の話だと、地球出身で使えそうなやつを自分の世界に転生させるのがブームらしく、天国にいた俺も、このビックウェーブに乗るっきゃねえと思ってよ。


 ダメ元で履歴書書いて妖精の偉い人と面接したら、なんと一発合格。


 大妖精様はこの俺のキャリアと、前に過ごしてきた人生を買ってくれたってわけだ。


 俺が転生前に何をしてたかって?


 まあ話せば長くなるが聞いてくれ。


 俺は日本の神奈川県川﨑市川崎区出身。


 金田(アキラ)って名前を持ってて、もう一つまるでゲームみてえだが、真の名を金晶秀(キムチョンス)って言う。


 そ、俺は日本生まれだが日本人じゃねえ。


 いわゆる、在日韓国人の母親から生まれた在日ってやつよ。


 ちなみにこれが俺の大元の名じゃなくて、小学校まで暮らしてた団地じゃ、安西晶って名前だった。


 もっと前の苗字はわかんねえし、俺の実の親父もわかんねえ。


 まあ言うなりゃ、おふくろの色々な都合でコロコロ苗字が変わったわけよ。


 で、最終的におふくろの元々の姓、金田って感じで落ち着いたわけで、川﨑じゃたまにあることさ。


 つっても俺は日本名で暮らしてたし、おふくろ側の婆ちゃんら世代が言うような差別なんざ受けたこともねえ。


 どっちかと言うと、前世じゃ日本人の友達の方が多いし、韓流も流行ってたから全然いいじゃんってよ。


 まあ……地元の団地の先輩も小学校からの付き合いで、悪い先輩多かったよな。


 俺も人のこと言えねえヤンキーだったし、先輩らも同じ在日コリアンだし、川崎じゃよくある話だ。

 

 表向きは他文化共生、人権に配慮、みんなの個性が尊重される、好きです川﨑、愛の街ってな感じ。


 だが世間一般じゃあ川﨑国なんて言われちまう。


 俺の前世の河川敷で起きた同世代の殺人事件がきっかけだ。


 俺の昔の地元、多摩川の川﨑側じゃ、たまにこう言う事件が起きるし、昔から族の抗争でもヤクザの抗争でもよく人が死ぬ場所ではある。


 それもしょうがねえ、俺が住んでた川崎区の民度がもうやべえ。


 例えば昼間っからプラついて、競輪場や競馬場近くで、いきなりキレ出すおっさんなんざごまんといるし、同学年の朝鮮学校の奴らが、公園で親父狩りやカツアゲなんざするのもたまにある。


 夜は銀柳街で、麻薬中毒(ポンチュウ)のヤクザとか半グレと酔っ払いのオヤジが喧嘩しまわり、しょっちゅうパトカーと救急車のサイレン鳴るわ、区役所や消防署の裏手なんかソープ街だぜ?


 まずその時点でやべえべ?


 そんなんだから、野球球団のロッテが千葉へ逃げ出しちまうんだ。


 聞いた話じゃ、本拠地にしてた川崎球場の試合中の観客席では、即興の麻雀大会開かれたり、七輪で焼肉焼いてるヤカラ達がいたり、アベックが青姦しだしたり。


 かといって選手がエラーでも起こそうもんなら、アル中の客達から缶と一升瓶が一斉に飛んでくる。


 そんなんじゃ、野球選手も球団も嫌気がさすわな。

 

 まあ他にも川崎じゃあ色々あるけど、特に酷いのが他府県の奴らが顔をしかめるやつ、交通マナーってやつよ。


 例えば自転車通行帯ってあるじゃん?


 それ川崎じゃあ意味ねんだわ。


 だいたい川崎市民なんざ、歩道と車道の区別つかねえもんだから、老若男女みんな歩道とかで歩行者にベル鳴らしまわって、自転車爆走してて通行帯の意味がねえ。


 そこら辺でガキらが乗ってるチャリンコや原付なんかも、結構な割合で他人名義のもんだしさ。


 原付とかなんて普通に乗ってただけで、対抗車線にいるヤカラの飛び蹴りとかくらって、そのまま永久に借りパクされる時もたまにあるしね、夜とかに。


 ま、バイクシェアリングのはしりみてえなもんだよ。


 川﨑以外では窃盗とか強盗とか言われてるけど。


 しかも電車の踏切なんざあってないようなもんだから、しょっちゅう無断横断が横行して、その度に六両編成の南武線が遅延する。


 下手すりゃあ、喫煙所も公衆便所もあってないようなもんだから、ところ構わず吸うし出すし、南武線、いや大師線もそうか。


 電車内もホームも、朝方と深夜で小便とゲロの据えた臭いがするのもご愛嬌。


 その要因は、単純な話でコンビニより焼肉屋や飲み屋の方が多いから、アル中が大量生産されるのも川崎じゃよくあることよ。


 夕方くれえになると、コンビニ前で買ったワンカップ飲んだ工員や土方のおっさんが、中身一気飲みしたあとで、よしって気合い入れたあと、駐車場でビンを叩きつけて割る儀式も見れたりする。


 夜中に交通の往来で一升瓶片手に、ランニングシャツ姿で人生の悲哀を口ずさんでるおっさんを見ると、思わずヒップホップなビート流したくなる気がするのも、川﨑市民の人情ってもんよ。


 そんで近くの多摩川じゃ、土日になると川の向こうの東京世田谷では青少年が公共スポーツ広場で爽やかな汗を流してる中、川﨑側じゃ行政無視した違法建築のお手製屋外ゴルフ場で、いい歳した酒臭え親父共が脂ぎった汗流しながら朝から打ちっぱなし。


 たまに川っぺりで寝てる、住居不定無職のルンペンのおっさんにゴルフボールが当たって、おっさん同士で掴み合いしてるのは、この街ならではの日常風景さ。


 夜の多摩川じゃ俺がガキの時代、先輩らが始めたヒップホップのラップバトルが流行った時なんかアレ。


 河川敷とか橋の上でラップバトルトーナメントとか開くじゃん? みんな暇だから。


 で、最下位だったやつが罰ゲームで橋から飛び降りて、死んじまった事件もあった。


 まあ川﨑じゃたまにあることだし、しょうがねえ。


 で、俺が通ってた中学なんざ、日本人が半分しかいねしヤンキーばっかなの。


 俺みたいな在日出身が幅利かせてて、残りをチャイナだとかフィリピンだとか、親がブラジルだとか、あと日本人だけど親が沖縄出身ってのも多い他文化強制よ。


 当然喧嘩なんか絶えねえが、なぜか昭和時代の老舗の族のチームが存続してるし、チーマーギャングが流行った他所(よそ)とは違って、川﨑だけ昭和ヤンキー全盛だった。

 

 正直、時代から取り残されてる面が否めない感じがしたが、逆に地元をマジで愛してる奴らがいるのは本当の話さ。


 俺? 


 最初族やってた地元の同中(おなちゅう)の先輩らが、スケボーとラップとダンス中心のギャングチーム作るから族解散ってな感じの方針になって、俺もそっち方面に行ったんだ。


 そっから俺も、地元川﨑でそこそこダンスと喧嘩で有名だったが、だからなんだって話さ。


 そんな感じで、横浜と東京に挟まれちまった中途半端なこの街で、在日出身の俺が大金手にしてのし上がるには3つしかねえ。


 一つはフロンターレのサッカー選手になること。


 二つ目は、個性を活かしたラッパーになること。


 三つ目は、ヤクザになることだ。


 この街じゃ工場で働く腕利きの職人や、名のある飲食なんざありふれてるし、自分の名を残すにはこの三つくれえしかビッグになれねえのよ。


 会社起こそうにも、同胞系のなんちゃらだとかいう団体に関わったら関わったで面倒くせえ。


 それに在日って生まれから、中には拗らせた先輩もいて、俺の先祖が差別されたんだから、日本人に何やってもいいんだって無茶苦茶する人もいた。


 よくある、地元で恐れられた年少帰りの先輩ってやつで、内心うぜえから嫌われてるようなよ。


 その先輩は俺が高二の時に死んじまった。


 本当かどうかは知らんが、ヤクザの女(まわ)したとか、ヤクザ土下座させたとか吹き回ってたら、しばらくして行方不明さ。


 また逮捕(ぱく)られたんじゃねって思ったら、そのイケイケだった先輩は、丹沢の山ん中で腐乱した状態で首括ってんのが見つかったそうだ。


 一応自殺ってことらしい。


 それを聞いた俺はこう思ったね。


 よくわからん恨みだとか人を憎んだって、救われることなんざねえのさ。


 だからこそ、(ラブ)アンド平和(ピース)よ。


 愛が平和を生むんだ。


 それに同胞同士のおせっかいという名の、地元の上下関係とかも俺的に面倒でウザくてしょうがなかった。


 そんなわけで俺は、夜間の定時制高校卒業したら親元離れてこの街を出るわけ。


 多文化共生とかいいながら、社会や大人の都合でよくわからんルールを押し付けようとしやがる多分化矯正、いや強制しやがる所なんざにいても、俺に芽は出ねえって思ってよ。


 川﨑南部で生まれても、高卒なら高学歴だし東京でも通用するって思ったんだ。


 こうして俺は東京進出して、身一つで新宿の歌舞伎町に流れ着く。


 俺が求めるラブアンドピースを目指してよ。


 18になった俺は、晶の名前から翔って源氏名でそこそこ名が売れたホストやった。


 ほら、俺ってイケメンだし。


 愛を語る仕事って言えばホストじゃんってなったわけよ。


 店のオーナーからは、川崎出身だとなんかアレだから、横浜出身ってことにしておけって、売り出されたけど。


 川﨑出身ってのは、生まれた時にくっついてきた呪いの装備かよっての。


 そもそも横浜なんざ、中華街や新幹線の新横浜くらいしか行ったことねえし、巨人ファンだから横浜スタジアムなんかにも縁がねえ。


 ていうか俺的には、チネチッタやラゾーナ、ルフロンにアゼリアがある川崎の方が、めっちゃ洒落てて栄えてるのに、世間的には横浜の方がオシャレな街だそうだ。 


 それにオーナーの地元の足立区の方が、川﨑よりガラ悪いじゃねえかって思ったが、これが功を奏して俺もそこそこ売れ出した。


 だがコロナが流行ってよお……客も減って女関連でヤクザにも目をつけられたし、ナンバー入りするも結局長続きしなかった。


 ホスト業界じゃコロナ禍あたりから、ホストのホの字も知らねえようなペテン野郎が、その辺にいるガキ騙して売り掛けさせて、売春(ウリ)とかさせたりするのも流行ったんだわ。


 俺が思い描いた大人の女相手と遊んで楽しませる、愛の伝道者的な理想のホスト像から、業界全体が遠のいちまった感じがして……これじゃあ女衒で悪いことしてるヤクザじゃねえかってね。


 だから俺はホストから足を洗った。


 本当は自分の店とか持って、オーナーやってみたかったが。


 でもじゃあ、次はどうすっかってなるじゃねえか?


 そういうわけで、20になった俺は晶の名に戻って地元川崎の先輩達が関係する、歌舞伎町のスカウト会社に入社した。


 このスカウトってのは俺の天職だった。


 どんな仕事かって言うと、道ゆく女に声かけて風俗だとかAV嬢にならないかって話をして、契約が決まったらその仲介料をいただくって感じさ。


 そりゃあ普通の良識ある女の子だったら、そんなナンパまがいの一見美味しい話なんかに乗るわけねえが、中にはやっぱり金が欲しかったり他所の店で働くきっかけが欲しいって子がいるわけよ。


 そういう人の機微だとか、女の子が何を言われて心を動かすかってのは、ホスト時代に学んだ経験が活きた。


 呼び込みとナンパは、駆け出しホストの時からやって来て、別に俺にとちゃ普通のコミュニケーションだしよ。


 ぶっちゃけホストやってた時より、結構な金を稼いでいたんだが、ある日突然終わりが来る。


 このスカウト業ってのは、同業者間のいざこざが多い。


 例えばスタッフの引き抜きだとか、客の取り合いとかで揉めやすいのさ。


 ついでに言うと、世間一般で半グレって呼ばれる不良連中が、スカウトの社員や経営者やってる場合がある。


 そんで俺のいた会社も、とあるスカウト会社と揉めるんだが、普通は会社の上同士で話して終わる話だ。


 話がつかないなら、最終的にケツモチ同士のヤクザが双方を仲裁して、相談料として金持ってかれるから、普通は会社の上同士なあなあで済ませる場合が多い。


 だがその揉めた会社、大手のスカウトで有名なんだけど、ヤクザ顔負けの鬼やべえ奴らだった。


 運営してる社長と副社長が兄弟で半グレやってて、その辺のチンピラとか元ヤクザとか集めて会社作ったような感じなの。


 その半グレ兄弟の用心棒してたのが、鉄腕アトムって呼ばれた有名な半グレ。


 まずその異名からして意味わかんねえし、漫画の神様手塚治虫さん往年の名作、正義のロボの名を、悪党が名乗るなんて世も末だって思ったぜ。


 この俺が転生した世界でも、魔王アトムなんて言う伝説もあったりするが、俺の前世のこのアトムもハンパじゃない。


 まず見た目が鬼ガタイいいハーフで、めっちゃいかちいパワー持ってて、10万馬力の喧嘩無敗だそうだ。


 ここまでは地元あたりでよくある、ガキ大将の武勇伝的な話なんだが、そのアトムが敵対してた奴らがマジでやべえ。


 東京で有名な半グレチームの東京連合や、池袋のチャイナ連中に、関西から進出してきた日本最大の極悪組や、俺の地元神奈川の裏全部を支配してる生麦会とか、テキヤの東京桜会、新宿最強の武闘派ヤクザ鬼瓦連合会とも、新宿のおまわりともバチバチにやりあったんだと。


 もうね、ぶっ飛びすぎて漫画だよ漫画。


 ヤクザ上等、おまわり上等とか、頭がおかしいにも程がある。


 そんなやべえ半グレ達がバックにいる会社と、うちの会社が揉めたもんだから、俺もビビって会社からのライン以外は拒否して自宅から出なかった。


 だってテレビの報道じゃ、歌舞伎町でスカウト狩りなんかあったみてえで、うちの会社のケツモチのヤクザと、アトムで抗争してたってのがわかったし。


 いくら俺が地元でそこそこ有名だった元ヤンっつても、筋者と喧嘩するようなやべえやつなんかとやっても勝てるわけねえし。


 それから一週間後、俺は自宅の大久保のアパートに引きこもっててもしょうがねえって感じで、夜風にでも当たろうかなと思って外に出ると、ふいに小腹が空く。


 しょうがねえから、区役所通りにあるセブンイレブンにでも行こうかなって思ったのが間違いだった。


 コンビニで買い物終わったら、歌舞伎町のほうからパトカーのサイレンがすげえしてて、クラクションの音がバンバン鳴ってて、なんかやべえと思って帰ろうとした時だった。


 猛スピードで俺がいる歩道に突っ込んで来た、黒塗りのアルファードを見たのが最後の前世の記憶。


 気がつくと俺の意識は、天国みてえなところにいて、そこで色々な魂の学びだとか、前世の振り返りだとか、そんな感じの死後の世界にいた。

 

 こんな感じで俺は転生したって感じだ。


 普通は前世の記憶とか引き継げねえそうだが、俺を買ってくれた妖精様が、引き継ぎオーケーの強くてニューゲーム状態にしてくれたから、マジで助かった。


 そんで俺は、3年前に病気で死んじゃったお父様。


 この世界でクソお世話になった自慢のパパから領地を引き継ぎ、転生貴族の俺すげえ的な異世界ライフをしてるって感じよ。


 前世じゃ運悪く死んじまったけどさ、転生後でも世の中でものをいうのは地位と金と頭とルックスさ、俺みてえによ。


 あとはそれに見合った努力と運か。


 そう、ここまで来るには多少苦労した。


 まずパパから領地継いだ俺が手掛けようと思ったのは、ここは川﨑みてえな感じの、造船所もあるような港町だから、港湾施設の整備と物流網の再構築しようと思ったわけよ。


 港大きくして物流改善したら、いっぱい船とかやって来るじゃん? 


 船がいっぱい来たら、大量に物が入ってくるから安く買えるじゃん?


 うちの名産品の、ウイスキーだとか塩鱈にチーズとか、俺がデザイン手掛けた服とか外国に売れるから、めっちゃお得じゃん?


 んでゆくゆくは前世みてえな、毎晩シャンパンタワーとかやりてえじゃん?


 まあそんな感じ。


 だが悲しいか、建築知識がある職人もいるし、周辺から知識人スカウトしてもいいけど、街の人らや周辺の労働者だけじゃあ、人手がいくらあっても足りねえ。


 それに国王様からそんな簡単に、俺の領地へ助成金とか建設許可なんざおりねえから、じゃあどうすんべかってまず考えた。


 そこで考えたのは、まず俺の領地にあった冒険者組合に入会手続きよ。


 貴族だったから組合に入るの楽勝だったし、この世界のパパに、小さい時から騎士としての剣術とか馬術のトレーニングとか積んだし。


 前世でヤンキーだったし多少は喧嘩慣れしてるわけで、冒険者としてはかなりの戦力ってわけ。


 それにこの世界で20の時に、1年の任期でハイランドにある隣国デンランドとの係争地域エジンバルで、国境警備や斥候(スカウト)の隊長も経験したしね。


 斥候と偵察に関しちゃ、スカウト業でも他社へ探偵まがいな似たようなことしてたし、適性があったんだわ。 


 で、冒険者になった俺は領民にも協力とかしてもらって端金の報奨金みてえなクエストを、大量にバンバン依頼してもらうじゃん?


 それを優しくてイケメン領主の俺が、バンバン叶えてやるじゃん?


 そしたら領民達の支持とか爆上がりで、組合からも多くクエストクリアしたって、始めたC級からB級になってA級にソッコーで昇進よ。


 マジで貴族チート様々さ。


 他にもモンスター討伐前の斥候だとか、偵察とかやったりして名声を高めたって感じ。


 ああ、この世界には元魔王の手下だとか、悪い精霊の眷属が変化したような、ゲームで出てくるモンスターとかマジでいるんだぜ?


 ゴブリンだとかスライムといった雑魚から、動植物が変異したミュータントみてえの。


 あと俺も絶対出会したくねえ、ドラゴンだとかキメラだとか強力なモンスターもいるらしい。


 このクラスになると、相手になるのは冒険者の中でも数えるくれえしかいねえし、軍とか騎士団総出でかかんねえと街が滅びる。


 まあモンスター退治なんか、俺の分野じゃねえし他の下々の冒険者の仕事だ仕事。


 それに、うちの街の周りは幸い雑魚モンスターしかいねえし、どっかでやべーモンスター出ても、俺の組合の冒険者派遣すればいい金になるし、マジでこの港町の領地最高だぜ。


 で、A級からS級まで上がるには国家認定がいるが、俺って貴族なもんで、そんな許可はあっという間に国王様から降りるじゃん?


 S級冒険者に行くまでチョロいもんだったぜ。


 というわけで、S級冒険者の地位が手に入ったもんだから、あとは冒険者組合でかくするため、名が売れて強力な冒険者のスカウトさ。


 こっちでも俺は一流のスカウトってことで、ギルド入会後は名のある冒険者を口説きまわって、組合に入れることに成功した。


 特に伝説のドラゴン殺し、ハンス・バーベンフルトのおっさんをスカウトしたのは俺の功績大だね。


 そのバーベンフルトさんは、鬼ガタイいいスキンヘッドのおっさんで、どうやら冒険者稼業から一歩引いて後進の育成に励みたいって言うんで、弟子一人連れて俺の領地にやって来たのよ。


 じゃあ、冒険者訓練施設とか作るんで力を貸してくれませんかって切り出したら、オッケーしてくれた。


 で、バーベンフルトのおっさん目当てに世界中から冒険者達がやってくるわけじゃん?


 そしたらその冒険者の家族だとか、冒険者目当てのファンとかもたくさん俺の領地に来るじゃん?


 じゃあ人がたくさん増えたし、俺が街の港湾工事だとかを組合に依頼すんじゃん?


 そんなわけで、2年かかって俺は街をでかくした。


 年間の上がりは国際通貨ダラーでいうと、1億はくだらねえ。


 この聖王国の通貨だと10万ポンドくれえか。


 ぶっちゃけ冒険者組合が発行するダラー経由して脱税しまくってるが、大元のスポンサーの聖王様に税金いっぱい献上してるから、爵位が上の連中も誰も俺に文句は言えねえ。


 うるせえこと言ってくるなら、買収しちまえばいいし、楽なもんだ。


 貴族令嬢とかも口説き回りで、ご婦人方も俺のトークとダンステクでイチコロだし、やはりモノを言うのは金と俺のルックスさ。


 今じゃこの街に、世界中から人と物が集まるようになり、前世でいうと中国人みたいな商人連中もやってきたり、経済活動も豊かになった。


 あとうちの領地独自の条例で、外国人でも個人間の取引の法整備とか色々やったり、契約の概念ってやつを、この中世アルスターに広めたのさ。


 これこそ多文化共生。

 

 多分化強制しやがるどっかの街と違ってね。


 年寄りの組合長も、俺が組合長に相応しいってんで引退してくれて、ベルンファースト冒険者組合のギルド長に就任する。


 で、俺が考える次のドリーム。


 冒険者ってのは、男だけじゃなく女もいる。


 女の冒険者ってのは一部の女戦士とかを除いて、将来の旦那目当てのパートナー探しで冒険者になるわけよ。


 でよ、国王たる聖王様の覚えめでたい俺が、伯爵からいずれは侯爵、S級からいずれG級冒険者になり……可愛い女冒険者を囲ってよ、異世界チートハーレムとか作ろうと思ってるわけ!


 マジで夢が膨らむぜ、この異世界チート生活はよお。


 だが、街が大きくなると半グレみてえな犯罪組織が俺の街に入って来やがった。


 この世界で最悪の犯罪組織が、エラームって大国の首都イスタミルにあるらしい、盗賊組合(ギルド)


 この他に、国家単位で海賊とか略奪しまくってる、うちの国と敵対中のデンランド帝国が、この世界の犯罪組織ってやつだ。


 このうちの盗賊ギルドに俺の街が目をつけられたらしく、盗賊ギルドの尖兵みてえなのが俺の街で好き勝手やりやがるから、こいつらウゼエってなるじゃん?


 だからその盗賊団に俺は賞金かけたわけよ。


 俺の冒険者組合総出でぶっ潰すためにな。


 そしたらどうだ?


 今ここに盗賊共をやっちまった、掘り出し物のガキが目の前にいるわけだ。


 ここで俺としては……。


「やあ、助かったよ君。俺の名はベルンファーストを治めてるショーン・スレイン・ゴールドマン・マクドネルって言うんだ。君の名は?」


「アイアンだ。あんたがこの街の領主様ってわけか?」


 うお! いかちいぞこいつ。


 ガキのくせにすげえ圧かけて来やがる。


 どんな生まれしたら、こんなガキになるんだよ。


 だ、だがビビるな俺。


 盗賊を倒したとはいえ、相手は中坊みてえなガキなんだからよお。


「君はアイアンって言うのか。君に10000ダラーの謝礼を払いたい。一緒に俺の組合に来てくれないか?」


「そこで金くれるのか。いいぜ、早く行こうや」


 よ、よし。


 なんとか話を聞いてくれそうだな。


 俺は従者に命じて馬車を回してもらい、馬車を指差す。


「じゃあ、俺の馬車で冒険者組合に行こうか。金もそこで支払う」


 とりあえず俺は目の前のアイアンを馬車に乗せて、冒険者組合に向かうことにした。

第1章の狂言回しにして主人公に振り回されて胃痛に苛まれること確定のショーンです

前々作のチョイ役だったホストが異世界転生しました

彼はなんというかナルシズム全開で話を盛る癖というかフカシ癖のある男ですが非常に優秀です。

彼に足りないとしたら勇気だけ。

書いてて楽しい男です、これから酷い目に遭い続けますが。

あと川崎は彼が言うほど酷い街じゃないですし交通に便利なベッドタウンなんであしからず

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ