表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリック〜魔法使いアイアンの冒険伝〜  作者: 風来坊 章
第1章 ベルンファーストと始まりの章
1/92

プロローグ 伝説の始まり

 地球ではないどこかの上空で、漆黒の羽織りを纏い、濃紺の長着に山吹色の帯を締めた二刀を指す、黄色人種に見える長髪で黒髪の二枚目が突如出現する。


 全身から侠気とも呼ばれる覇気と、溢れ出るような暴力のようなオーラをまとう人の姿をした超越者。


 身長180センチ、一見痩身のような体には無駄な脂肪が一切なく、猫科の野生動物にも似た俊敏さのある筋肉をベースに、精神力を帯びた持久力を持ち合わす強靭無比な、不死身の肉体を持っていた。


 その男は神が恐れ、天使も怯え、悪魔でさえ泣いて許しを乞うほどの強大な力を持っており、男は鋭い三白眼で眼下を眺める。


 海に囲まれた広大な三つの島を見下ろしながら、徐々に高度を下げると雪雲を通過し、雷雨が鳴り粉雪が舞い散る大きな島にたどり着く。


 島内はなんらかの魔法効果で完全に凍結しており、王宮と城下町、周辺の村々も全て氷に包まれている。


「酷え有様だ」


 男が山吹色の帯から自身の愛刀を抜くと、周囲をくまなく観察しながら生体反応を探す。


「ここらの生存者は……絶望的か……」


 悲しげに呟いたあと、男の瞳に強烈なドス黒い炎の煌めきが宿った。


「クソ!! これじゃあ人々に、俺の男を見せられねえじゃねえか! こんなザマにされやがって、担当神のボンクラが!!」


 神をも恐れぬこの男は、悪態を吐きながらついでに唾もペッと吐く。


「精霊界元老院の野郎らも、この俺様に面倒くせえ案件もって来やがって! 謎の邪神討伐と精霊界元老の救出だと? 俺の喧嘩相手くれえ、てめえらで調べて案件もってこいバカヤロー、気が利かねえ!」


 精霊とは宇宙の万物を構成する意思を持つ、素粒子で肉体を構成された高次元エネルギー体のことを言い、純粋なエネルギー体か、肉体を持つ精霊とで大別され、強大な力を持つ精霊は大精霊と言われる。


 精霊達で構成された意思決定機関が、元老院といい、精霊達が集まった世界を精霊界という。


 男は精霊達からの依頼で謎の邪神討伐にやってきたのだ。


「まあ、精霊界の奴らに借りが作れるからいいが……人々をこんな目に合わせた邪神野郎への報いは、きっちりくれてやらなきゃあなあ。さて、ちょっくら邪神野郎をぶった斬りに行くか」


 上空100メートルほどまで高度を下げた男は、人ならざる力を行使して、この事態を引き起こした残存魔力反応を探る。


「ん? あの王宮みてえなところから、すげえ残存魔力の反応がしやがるが、生体反応が……一つ! 生き残りか? それとも、この事態を引き起こしやがった邪神野郎か……確認する必要があるな」


 男は全ての生命体が凍りつくような、絶対零度の凍気をものともせず、体に紫色に輝くオーラのような炎を纏い、凍りついた王宮のバルコニーに降り立つ。


「どれ、寒いから溶かしてやるぜ」


 着物の男は、バルコニーの手すりに触れると、紫色の炎を体から発するが、効果がなかった。


「こいつは……属性魔法というよりもアレか。強烈な意思で引き起こされた呪術にも似た感じか。おそらく発動は水と風の凍結魔法だが、魔法効果がなんらかの意思の力で維持されてやがるんだ」


 属性魔法とは、火、水、風、土の系統が基本で、これを組み合わせた魔法効果で、様々な魔法を使用できる。


 この他にも、使い手が限られる天と冥、神々が使用可能な神界魔法に、精霊魔法や召喚魔法等といったものもある。


 試しに着物の男が、凍りついた城の城壁に獄炎の冥界魔法を放っても、一切効果がない。


「あー、こりゃあダメだ。しょうがねえ、クソ寒いが中をあらためるぜ」


 王宮内は、凍りついて息絶えた兵士達や従者達の氷像のように立ち尽くしており、男は城内の生存者を探す。


「ここだ。生体反応がしやがるが、こんな中で生きてるってことは、並のヤローじゃあねえな? 気合い入れていくか……オラァ!!!」


 凍りついた大扉を男が前蹴りで蹴破り、中を見渡す。


 そこは広大なホールで、凍りついた天井のシャンデリアがドアを破られた衝撃で落下する。


「多分、王の間ってやつか? あれは!?」


 男が見たのは、ホールの真ん中で、両手を組んで祈りを捧げるように凍りついた純白のドレス姿の、白人風の美しい少女で、生体反応も消えていた。


 その傍に倒れているのは、この国の住人とは違う白いフードとローブのような異国の衣装に身を包む、顔立ちが整った肌が小麦色をした少年だった。


 二人ともまだあどけない顔をしていることから、おそらくは10代前半、成長期途上の子供だと男は判断する。


 着物の男が刀を両手に持ちながら注意深く観察すると、少年の口から白い煙のような吐く息が見え、少年が生存者であることを確信し、刀を鞘に戻す。


「おいガキ!! 大丈夫か!? ここで何があった!? おい、しっかりしろガキ!! 今助けてやるからな!!」


 少年の頬を叩き、意識があるかどうかを確認すると、少年は命に別状はないものの、軽い低体温症にかかっているのか、全身ぶるぶる震えだし、まぶたが凍りついているのか目が開かないようだった。


「ほれ、回復しろ!」


 男は回復薬が入った瓶を懐から取り出し、コルクの蓋を噛みちぎって少年にかけた。


 すると、視力が戻った少年の目から涙が溢れ出て凍りついた少女を見上げる。


「あ、あ、ああああ……あああああああああああ!! あああああああああああああああああ!!!」


 まだ声変わりもしてない少年は、凍りついた少女に縋るように泣きついて、声にならない声で慟哭し、精神的ショックで黒々とした髪の毛が全て真っ白になった。


「あああああああああああ!! あああああああああああああああ!!」


「ガキ……そうか、この子はおめえの。待ってろ、もしかしたら俺の魔法で……ん?」


 氷漬けになった少女の首から、銀のチェーンと水晶のペンダントトップが床に落ちる。


「これは……この子の」


 着物の男がそれを拾い上げようとした瞬間、少年のパンチがアゴにクリーンヒットした。


「触るなあああああああああ!!」


「……!?」


 10代前半の少年とは思えない一撃で、一瞬脳震盪を起こした着物の男が膝をつく。


「くっ!?」


「もっと強く! 強く強く! 力! パワーが欲しい!! I need more power!! I want to be strong enough to protect someone I treasure most.AHHHHHHHHHHHH!!」


 少年から一気に大人の男に変わった現象と、英語と日本語が混じった叫びに、着物姿の男は困惑する。


 得体の知れない闘気と共に、170センチにやや満たない少年の体が膨れ上がり、着ていたフードとローブが破けていく。


「なんだこのガキ……体から魔力反応?」


 小麦色の肌をした少年は、身長2メートルの体躯に、もみあげから口元とアゴを覆うヒゲ、そして有り余る膂力と魔力を有する筋骨隆々のアフロヘアーの大男に変わる。


「この世界の言葉じゃねえ。日本語と英語……てめえ地球からの転生者か!?」


「I, who wins everything, am always right!」


 野太い男の声に変わった黒人のように見える大男が、次々とパンチを着物の男に繰り出してゆくが、油断した最初の一撃以外は全てことごとくかわされた。


「Fack you!!!」

「当たるかボケ!」


 大男に変身した少年の打ち下ろしの右ストレートを、着物の男が右ストレートのカウンターを放つ。


「gaaaaaaaaaa!」


 あまりの威力で、元少年だった黒人風の大男が吹き飛ばされ、すぐさま体を起こす。


「Die! Asshole!!」


 黒人の大男が両手を突き出し、両手を重ねて、両親指と人差し指で四角形を作る。


 その瞬間、常人なら全身の骨が砕かれて即死するほどの圧縮空気の風魔法を放つ。


 だが、着物の男には全く効果がない。


「へっ、そよ風が心地いな」


 大男が何発も強力な魔法を放つが、着物の男はそれをものともせず、拳を握り締めて徐々に間合いを詰める。


「八つ当たりする相手間違えやがって、オラァ!! なめんじゃねえぞガキ!!」


「Burn up!!」


 すると大男が組んだ両手を離して、全身が燃え上がり、突き出した右手の掌から、連続でバレーボール大のプラズマ火球を放り投げるように放つ。


 着物の男は、前に進みながら首を傾け、立ち位置を変えつつ、最小限の動きで火球をかわしてゆく。


 着物の男にいつの間にか間合いを詰められた大男が、炎をまとった渾身の右フックを繰り出した。


 だが着物の男は身を屈めてパンチをあっさりかわし、掴みかかると、柔道技の払い腰で大男を仰向けに倒して、押さえつけながら馬乗りになった。


「クソガキが、二度同じこと言わせるな。俺をなめんじゃねえぞ!!!」


 両拳を握り締めた着物の男は、大男の顔面に何度も何度も打ち下ろしの打撃を繰り出す。


 凍りついたホールで打撃音が響き渡り、時間にして1分ほどめった打ちにされた。


 浅黒い肌の大男は顔面をボコボコにされて所々骨折し、腫れた右目から一筋の涙を流したあと、仰向けのまま失神して、元の少年の姿に戻る。


「チッ、手こずらせやがって。口ん中切れちまった」


 血が混じった唾をペッと吐いた着物の男は、魔法で少年の記憶を読み取ってゆく。


「そうかい、そういうわけか。それであれか」


 着物の男が、凍りついたホールの大鏡の前に立った瞬間。


 刀の柄に手を掛けて居合斬りを放ち、大鏡を一刀両断した。


 すると両断された大鏡から、蝶のような羽を生やした燕尾服を着た銀色に輝く髪に王冠を被る、耳が長く尖る美しい青年のように見える精霊が姿を現す。


「さ、寒!! なんか知りませんが寒!! あ……」


「押忍、ご無事で何より」


「た、助かりました人間よ。私を解放したこと、まずは褒めてあげましょう」


 蝶のような羽を持つ精霊が尊大に振る舞うのを、着物の男が無視し、刀を鞘にしまう。


 すると倒した少年に、傷を癒す魔法をかけ始めた。


 この魔法系統は神霊魔法とも治癒魔法とも呼ばれ、神に対する信仰力もしくは、相手を治すという強い慈悲などの意思の力で発現する。


「お、おい君!! 私はこの世界、アルスターを担当する上級神にして妖精王オベローンです! 君! ねえ! 私を無視するなんて……は!?」


 オベローンと名乗った妖精王は、少年の顔を見るや怯え始め、震えた右手の人差し指で少年を指す。


「そ、そ、そいつは邪神の手先です!! こ、殺せ人間よ!! 生かしておいたらこの先……」


「チッ!!」


 特大の舌打ちをした着物の男が、強烈な暴力じみた怒気と覇気を纏いながら、オベローンの前に立つ。


「ヒッ! なんですかあなた」


 自分よりも僅かに背が高い着物男の、強烈な目力と溢れ出す凶悪な魔力に妖精王が恐怖し、思わず顔を伏せると、着物の男は笑みを浮かべる。


 だが、口角で笑みを作っただけで目がまるで笑ってない。


「いやあ、すんません妖精王様。自分こう見えて、結構な歳ですんで、耳が遠くてよく聞こえませんでしたわ」


「え? そうなのですか? 私に比べれば若そうに見えるが……まあ良いです。殺しなさい、邪神の手先を。あれは邪悪そのもの、地獄に送るのです。そして蘇った私が、あの邪神を討伐して……」


「ああ、その邪神なら封印されちまったようですぜ」


「え? そうなの?」


 オベローンは前髪の感覚探知を駆使して、自分を大鏡に封印した邪悪な呪術力を持つ邪悪な気配を探すと、凍りついた少女に封印されたことに気がついた。


「そういうわけで、あとはこの世界に適当な事後処理したら自分は帰りますわ。忙しいんで」


 着物の男は、少年を両手で抱え上げてこの場を去ろうとすると、慌てた様子で、オベローンが着物の男の肩に手を掛けた。


「あなた!! 私の話を聞いてないんですか!! その邪神の手先を始末するのです! さもなければ、妖精王にして神に逆らう愚か者として、天罰を下しても……」


「あ? 俺にガキ殺しやれと? しかも天罰って言いましたよね? 自分地獄耳って言われてんで、聞き逃さなかったっすよ?」


 耳が遠いのか耳がいいのかどっちだよと、オベローンが思った瞬間、肩にかけた手を跳ね除けた着物の男が振り返ると、神も恐るような凶悪な顔付きに変わる。


「ていうことは何ですか? 自分に派遣命令下した精霊界元老院と、自分の神に喧嘩売ってるんですよね?」


「え?」


 着物の男の言うことに、地響きのような低音に変わって、かつて神々が恐れて大魔王に指定したオーラが背後に現れると、そのあまりの邪悪な暴力的な波動に足が震え出して尻餅をついてしまう。


「そちらさんが喧嘩するってなら買いますよ。その天罰とやら、自分に見せてくれませんかね? 正当防衛って大義名分で処理できるんで」


「え、あ、いやその」


「それとも何だコラ? 今更てめえが自分で吐いた唾飲む気かよ」


 いつの間にか敬語も使わなくなった着物の男は、オベローンを見下ろしながら、さらに覇気と怒気、そして侠気と呼ばれる輝くようなオーラも放つ。


「オラ、天罰見せてくれや俺に」


「ええと……その……調子悪いし……」


「しかも、助けてやったこの俺に上等切りやがってコラ。てめえ相手見てもの言えやボケ!! で、どうすんだい? この俺と喧嘩すんのか!? あ!?」


「えーと、えっと、えっと、その、あの」


「オラァ、天罰してみろこの野郎!!!!」


 一方的に正論をまくし立て、神すらも恐れを抱かせる着物の男に、完全に怯えきったオベローンはもはや何も言えなくなってしまった。


「す、すみません今の無しで」


「ふん、わかりゃあいいんですわ」


 詫びを入れてきたオベローンを、鼻で笑った着物の男は、少年を抱えながら早歩きで距離を取る。


「あと上級神さんよお、なんかドブみてえな匂いして臭えんで、寄らねえでもらっていいすかね?」


「え!? 私そんな臭い!?」


 着物の男は振り返ると、目が染みるほどの臭いに片目を瞑り、唇も思わず震えるほどの悪臭だと顔で訴えた。


「ええ、息も臭えですね」


「そんなに?」


 着物の男は頷く。


「マジでドブ臭えっすね。ザリガニ臭もしますわ」


 長年封印されていた精霊王は、邪神の力によって負のエネルギーに当てられて、精気が弱りきっていたため、彼の体からする花のような香りが、硫化水素と亜硫酸ガスが混じった悪臭を放っていた。


「ぎゃああああああ、早く精霊界に帰って穢れを払って身を清めなくては!! あとは任せましたよ人間!! とうッッ!!」


 羽ばたく羽から悪臭を放ちながら、オベローンは光の速さで飛び立つと姿を消す。


「クソボケが、後で俺様をなめやがったこと、精霊界からきっちりケジメとらせてやるから覚悟しとけ。それと……このガキどうすっかな」


 着物の男は、少年を抱えてバルコニーまで出ると、薄暗い雪雲から、うっすら太陽の光が差し込んで二人を照らす。


「うっ、ヒック、ううううううううう」


 すると少年の意識が戻ったのか、しゃくり上げるようにベソをかく。


「小僧、てめえに一つ教えてやる。どんなに辛かろうが苦しかろうが、男が泣き入れんじゃねえ。悲しみも苦しみも痛みも辛さも、グッと堪えるのが男だ。それと……」


 着物の男が念じると、異世界に通じる次元のゲートのような空間の揺らぎが生じる。


「不意打ちのまぐれ当たりだが、この俺様に一発カマシたことは褒めてやる。どうだ? 強くなりてえか?」


 泣きながら少年は、頭を振って何度も頷く。


「……ヒック、うう……強く……ヒック、なりたい。俺、もっと強い男になりたい。なんでもするよ! 悪魔にだって魂を売ってもいい!! 力を……大切な人を守れる力が……勇気が欲しい!」


「そうか、いいだろう。全てが終わったら嫌でも強くなれるところに連れてってやる。そこでどれだけ強くなれるかは、てめえ次第だ」


 眩い光が二人を包み込み、この世界と異なる異性界への門が開こうとしていた。


「あとのことは心配すんな。てめえ利用してた野郎らは俺がきっちりカタにはめてやる。俺はその道の玄人だからな。それでお前の名は?」


「ヒック色々名前があったけど……俺は、アイアンって呼ばれた。俺、あの子を守ってるつもりで守られてて。俺……本当に強い男になりたいんだ!」


「お前の全てを俺は見た。中途半端にワルぶって、人様に迷惑かけながら、有り余った力を振りかざしてたのを。あの子と会うまで、何度も同じ馬鹿をやってたガキってのもよ」


 着物の男の眼差しに、自分の全てを見透かされていると、悲しみと同時に恐怖の感情もわき起こる。


 自分が今までして来たことが、この男にとっては中途半端に悪ぶっていた馬鹿なガキという、認識でしかないのだと。


「ヒック、うぅ、本当に強い男に、愛する人を守れる力を……あの子を守れたはずの力を……う、うあああああああああん」


 着物の男は頷き、男とは何かを少年に伝えようとする。


「覚えておけ! 本当の強さってのはな、暴力とかじゃあねえんだよ。暴力は確かに楽に問題を解決できる手段ではある。だがな、本当の強さってのは……耐え忍ぶ力だ。ここぞと言う時で、自分以外の誰かを守れる力だ。お前を守ったあの子のようなよ」


 着物姿の男は、左腕で少年を抱き抱えながら凍りついた少女の水晶のペンダントを、アイアンと名乗った少年に右手で手渡した。


「持っとけ、おめえが持つべきだ。今の悲しみを、悔しさを、あの子の思いを、絶対忘れるなアイアン。おめえが、この世界でしでかしちまったことも」


「うん……うん……」


「あの子に与えられた優しさを胸に、強さを学べ。あの子がこの世界を救おうとした高潔さを、おめえが継ぐんだ。それを、自分以外の誰かに与えられる男になれ。お前を助けてくれたあの女の子の思いを、無駄にしないために」


「シャーロット、お、俺、俺……君を守れる力を、俺、君の思いを……俺……う、うああああああああああああああああああああん! あああああああああああああ!! 俺は! 俺は君を守れなかった! ああああああああああああああ!!」


 ペンダントを両手で握り締めながら、少年アイアンは泣き崩れ、着物の男はやりきれない表情で空間転移のゲートに身を投じた。


「泣きたいうちに泣いておくんだな。これからおめえは一旦、泣き入れても許されねえところに連れていく」


 異世界に通じる魔法のゲートから、地獄の鬼の怒号や、亡者達の泣き叫ぶ声がし始めて、少年の身柄は地獄に堕とされる。


 こうして、二人の姿はアルスターという世界から消えた。


 のちに、この世界の謎を解き明かす冒険者にして、魔法使いと呼ばれるアイアンの伝説の始まりである。

 今回の主人公はとても一途で硬派な男の子です。


 知略だとかがあまり得意じゃなく、精神的に未成熟で不器用。


 勢いで物事を片付けてしまいがちだから、誤解を生みやすいのでトラブルが絶えません。


 転生前はそれで失敗した彼が、様々な出会いを通じて、本当の強さと守るべきものを見出すお話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ