表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある図書館の異世界探査記録  作者: Aria
1章 デイトレナ地方からアウルダム地方へ
8/19

旅の休憩と新たな嘘

 デラント村を目指して3日が経過した。やはり戦闘があったり、道が整備されていない場所を歩いたりしているせいもあってか、見た目以上に時間がかかっている印象を受ける。

「よし、今日はここまでだな。おそらく後半分ってとこかな」

「そうだねぇ。アリアちゃんもしっかり着いてきてくれるから思ったよりハイペースで来れてるよ~」

 馬車が使えればこんな道を通る必要ないらしいのだが、今貸し出せる馬車がなく仕方なくこの道を選んだのだとか。レーテさんによれば、馬車を使うルートを歩いて行くと、楽ではあるが今の倍の時間がかかるとの事らしい。

「流石に少し慣れましたから。それになんだかんだ言ってテオさんもロンドさんも私の足に合わせてくれてますよね?」

「あはは~、バレてたか~。でもアリアちゃんに合わせてもこんだけ早く来れてるのは本当にすごいと思うよ~?」

 この人の本心が読めなすぎるけど、少なくともうそをついてはいないという事だけはかろうじてわかる。確かに自分でもこんだけ動けてるのには正直驚きだ。もともとそんなに運動が得意だったわけでもなかった自分が、ベテラン冒険者の人にすごいと言われるくらいの動きは出来ているのだから。

「それは…ありがとうございます…」

「よっと…これでいいかな。ほら、アリアもロンドもぼさっとしてないで火を起こすのを手伝ってくれ」

「はいはーい、今行きますよ~」

 ここまで来るにあたってこの2人と野宿するのはこれで3回目になるのだが、2人とも手際がいい。テオさんとロンドさんは初めて会ったとは思えないくらいテキパキと焚火の土台を作り上げ、私に合図を送ってくる。私がすることと言えばその出来上がった焚火に魔法で火をつけるくらいだ。

「おー、やっぱり魔法使いがいるとここら辺楽でいいな!」

「ですねぇ、戦闘だけでなくこういった細かい所でも役に立つ。素晴らしい職だよねぇ」

「もう…ほら直ぐに夜食を作りますから避けて下さい」

 褒められているのだろうが、物扱いされているようで少し気になる。とはいえ悪意はないだろうからあまりツッコまないようにしつつ。ミュージャンで買った鞄の中から少し小さめの鍋を取り出し調理を始めた。

 テオさんもロンドさんも大した料理が出来ないらしいので仕方なく私が料理を作ることになった。料理自体はよく家でも作っていたため問題はなかったのだが、何故料理が作れるのかを説明するのが大変だった。最終的に考えついたのがミュージャンの人に聞いたという言い訳だ。

「えっと…よし、出来ました。豚肉と野菜のスープです。味付けは今回はちょっと薄めにしてみました」

「おー、毎度毎度ありがとね~。これはいいお嫁さんになるよ~きっと」

「ふぁぁ、さっぱりしていて美味いな!私も少し料理勉強しようかな…」

 テオさんが料理…ぜ、全然想像出来ない…。正直いい結果にならなそうと言う想像しか出来ないなぁ。でも、手先自体は器用だから意外とちゃんと出来たりして?

「それにしてもいつもとは違う人とこうやって冒険するのもなかなかいいですねぇ。普段とは違った戦い方をしたり話をしたり出来て」

「だろうなぁ。私もアリアと偶然出会ってまだ1ヶ月も経ってないけど、それでも少し前と違う感じがして割と楽しいからな」

「それはよかったです。私もテオさんと出会えてよかったですよ」

「お~、もしかして2人は相性いいのかなぁ?戦闘時も2人とも行きぴったりだったもんねぇ。おかげで僕は基本1人で戦ってるよ~」

 ロンドさんの方も支援したいのだが、支援をしようとするときには大体ロンドさんは戦闘を終わらせていることが多いため、テオさんの支援をしていたらそれで戦闘終了していた。

 ロンドさんはテオさんの1つ上のBランクらしく、普段ののんびりした性格とは裏腹に片手剣を両手にもつ所謂二刀流で素早い連撃をするという戦闘スタイルだ。さらにスタービートでドラムをやっているからか、攻撃のタイミングや連撃のリズムなんかが独特なのもロンドさんの強さの1つなのかもしれない。

「それはロンドさんが強いだけだと思いますよ…。テオさんはちゃんと支援射撃してあげないと攻撃を食らいそうで…」

「わ、悪かったね…でも、今まで1人で冒険してたからこうやって支援されると仲間と一緒に冒険するメリットってのがはっきりわかるよな。実際昔より被弾が少ないのは事実だし。ポーション代が浮いて助かるよ」

 やっぱり被弾が多かったんだ…。だからこの前あんなにポーションを買ってたのか。ロンドさんがどうかは分からないが、こっちは何度か攻撃を貰ったものの大した痛手ではなかったのが救いか。買ってきたポーションもあまり使っていないのが何よりの証拠だ。

「それで言うとアリアちゃんはほんとに強いよね~。もしかしたらマッチちゃんより強いかもねぇ」

「か、からかわないでくださいよ。私は冒険者としてはまだまだ未熟ですから、あなたの言うマッチさんより強いわけないじゃないですか」

 ロンドさんのいうマッチさんとは、ロンドさんやアントラさんと同じスタービートのギターボーカルを担当している女性の方らしい。戦闘時は私と同じ魔法で戦う魔法使いではあるらしい。

「いやいやぁこれでも僕は戦闘経験が豊富だからねぇ、戦いながら2人を見ていたけどあそこまで状況を判断しながら的確に魔法を選んで攻撃するのは並み大抵の人じゃできない芸当だよぉ?ほんとにアリアちゃんが子供なのを疑うくらいにはすごいよ?」

「あ、ありがとうございます…ちゃんと根拠があったんですね…」

 初めのうちはレーテさんからのサポートがあったのだが、私が思った以上に動けたのか本当に危なくなった時だけサポートすることにしたらしい。そうした方が自分の負担が減って楽だからとか言っていたような気がするけど…。

「へぇ、いやまぁここまで来たら特に疑う気はないけど…アリアってほんとに何者なの?」

「え…ただの捨て子ですよ…ほんとに」

「ふふ、まぁテオさんの心配も分かりますよ~。でも、アリアちゃんみたいな親にいじめられている子の方が戦闘に強かったりするのはよくある事ですよ~。少し聞いたことありませんか?王都で活躍しているROSの子たちの事。その子たちはアリアちゃんと同じくらいの年齢で僕なんかよりも強い子がいるみたいですよ?その子は戦争孤児らしいですけどね」

 戦争孤児…?私と同じくらいって事は、少なくとも5年から3年前に何かしらの大きな戦争があったって事なのか…?ここら辺はレーテさんに調べてもらおうかな。

「あー…なるほどね。子供の時に戦争とか大変な事があった子は強くなるしかなくなったって事なのかね。あの時は私も今ほど強くなかったから逃げ隠れてたな」

「魔物の集団暴走ねぇ、考えるだけでも恐ろしい出来事でしたよ~。今はもう過去の話になってしまったけど結局本当に怖いのは魔物じゃなくて僕たち人だったって事だねぇ。っとこの話はここまでにしましょ、折角アリアちゃんが作ってくれたご飯が美味しくなくなっちゃう」

 ロンドさんの話を聞く限り、何年前かは分からないけど魔物が集団で暴走をしてそれが原因で大きな戦争が起こってしまったと。しかも、その暴走を起こしたのはここでくらす人だったことなのかな?やっぱりどの世界に行った所で最終的に怖いの人間なのかな…。

「そんな感じだからアリアちゃんが強いのに関しては、僕から見ると大変だったんだねぇって感じかなぁ。もしかしたらただ才能があるだけって可能性もあるけどねぇ。あ、だからテオさんはもう少しアリアちゃんを見習うといいよ~」

「あ、はい…もう少し考えて動こうと思ってはいるんだけどねぇ。どれだけ適当に動いてもアリアがちゃんと合わせてくれるから…」

「じゃあ、テオさんがちゃんと考えられるように支援しない方がいいですかね?私も大変なので」

「ごめんって~!」

 ここ数日でテオさんの扱いにもだいぶ慣れてきたような気がする。しばらくしてテオさんは疲れたのか私よりも先に眠ってしまった。私も少し眠たくなってためそろそろ寝ようかと思った時にロンドさんに呼ばれたため少し離れた所へ移動した。

「いやぁ、ごめんねぇもう寝ようとしてた所でしょ?」

「確かにそろそろ寝ようかなとは思ってましたけど…それで、急にどうしたんですか?」

「ちょっと聞きたいことが出来ちゃってねぇ。アリアちゃんって本当に捨て子なのかなぁって思ってね」

 本当に急にそんなことを言われてしまったため、正直驚いてしまった。昔自分のお母さんに嘘がバレてしまった時と同じ感覚に襲われた。実際嘘はついているんだけれども。

「もちろんアリアちゃんにはアリアちゃんなりの事情があるとは思うからぁ、僕もあんまり詮索はしたくないんだけどねぇ。捨て子にしては元気だなぁって思ってさぁ。それにやっぱり魔法の使い方がいくら何でも上手すぎるのはちょっと気になるよねぇ」

「それは…いえ、確かにそうです。私は魔法使いとしてはかなり才能がある子でした。私も最初の内はその魔法の腕を褒められて育てられてきました…」

 ここまで話して少し言いたくないような間を作っておいて、先ほどレーテさんに調べて貰っていた戦争について聞いた。内容ではなく戦争が終わったのが今から何年前かを。

「5年前…私がまだ5歳の頃です。その頃から魔法をある程度使えていた私は普段通り家で過ごそうとした時でした…」

「なるほどねぇ…戦争かぁ」

「はい…私の暮らしていた村に魔物が攻め込んできて。その時に私のお兄ちゃんが死んでしまいました…それで…」

 ここで打ち切ることによってこれ以上話したくないような雰囲気を漂わせた。この嘘がどこまで通用するは分からないけど、とりあえずは今思いつく嘘はこれしか思いつかなかった。戦争の話を聞いていなかったら思いつかなかった嘘だ。

「あー…ごめんねぇ。うん、それ以上言わなくていいよぉ。そっかぁ…」

「で、でもね!私が元気なのはレーテって言う私の友達のおかげなの!」

『はい!?』

 急に名前を呼ばれてびっくりしたのかレーテさんが大きな声を上げて驚いた。折角ならもう少し子供っぽい騙し方をしようと思った結果がこれだった。いつもレーテさんにからかわれてばかりだから少しくらいからかってもいいだろう。

「私が夢の中の大切なお友達。いつも元気でいつも私の事をバカにしてくる女の子なんです」

「ふふ、子供らしくていいねぇ。それじゃあそのお友達のレーテちゃんにはちゃんとお礼を言わないとねぇ。それとごめんね、変なことを聞いちゃって。それじゃ僕は少し周りを見てから戻るから~」

「い、いえ…私もうそをついてごめんなさい…気をつけて下さいね!」

 そういうとロンドさんは少し照れたように頭を掻きながら近くに魔物がいないか警戒するために動き出した。嘘を嘘で塗り固める結果にはなってしまったけど今回はいいだろう。というかこの世界ではこの設定で行かないといけなくなったなぁ…。次の世界では最初から嘘をつかず行こうかなぁ…。

『あーびっくりした』

『たまには私もからかわないと理にかなわないでしょ?それに夢の中でしか会わないから嘘はついてないもーん』

『いやまぁ確かにそうなんだけどねぇ…でもよかったの?また嘘をついちゃって。別に普通に異世界転移してきたって言ってもいいんだよ?』

 嘘はよくないのは知っているけど今はこのままで行こうかなと思っていた時にそんなことを言われるとちょっと心が揺らいでしまう。でも、きっといつかこうやって仲良くなってしまった人には本当の事を言う必要があるんだろうな。

『まぁ、そのうちね。今はこれでいいかなって。子供っていう立場を存分に利用させてもらおうと思ってますよ』

『そう?ならいいんだけど』

 そのまま、テオさんが寝ているところまで戻り。私も寝ることにした。初めは寝袋になれなかったけど流石にこれだけ何回も経験をすると簡単に寝られるようになっていて、気づけば朝になっていた。

「おーい、アリアちゃーん?そろそろ起きて~」

「ふぁぁ、はい…いま、おきますぅ…」

 朝に弱い私に呆られつつもまたデラント村を目指し歩き始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ