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とある図書館の異世界探査記録  作者: Aria
1章 デイトレナ地方からアウルダム地方へ
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次の目的地へ

 ミュージャンでの準備期間が終わり1週間ほどお世話になったこの街から王都、アウルダム城下町を目指す日になった。初めは元々の世界で住んでいた日本とは違い、洋風な作りにすぐになれることが出来ず少し居心地が悪かったのだが、今はそんなことは無く旅に出るのが少し寂しいと感じてしまうほどだ。

 そんなちょっと詩的な私、アリアは今外で待つテオさんと合流するために宿から出ないといけないのだが、借りていた宿のドアをなかなか開けることが出来ていない状況だった。

『…いつまでドアの前でもじもじしてるのさ。いいじゃん、すっごい可愛いよ?その恰好。こんなことならあんな地味な恰好じゃなくて初めからこうすればよかったなぁ~?』

「うぅ…さ、流石にちょっと恥ずかしい…確かに前の服よりは魔法使いぽいけど…」

 ドアを開けられない理由、それは今着ている服装にあった。

 前の服はどちらかと言うと男が着ていても女が着ていてもおかしくないようなズボンに服、装飾品に関しても別に気になるものは無くレーテさんの言う通り冒険者っぽいけどもちょっと地味な服装だった。それが今は、この街で買ってもらったローブを着ていた。一般的な魔法使いが着ているようなちょっとオーバーサイズのローブならまだよかったのだが、私の身長的にオーバーサイズの物はが何故かなく、仕方なくいわゆるワンピースのような服を着ることになった。

「ローブって聞いたからちょっとダボっとしたのを想像してたのに…なんでこんな…!」

『そもそもワンピースっていう名前が無いんだろうね。だからローブだったんでしょ、きっと。まぁまだ長袖なだけましでしょ?なんだっけ?ノースリーブだったっけ?あれよりは全然ましでしょ、色も魔法使いっぽい黒だし』

 それは確かにそうなんだけども…。だとしてもやっぱり抵抗がすごい…。昨日までの服装よりいろんな意味でガードが弱い気がするし…。もちろん、何がとは言わないけども…自分が恥ずかしくなるだけだし。

「はぁ、でもいつまでもこうしてたらテオさんに悪いから行かないと…。うぅ…えい!」

 こんなにも開けたくないドアってあるんだなとこの歳になって気づいてしまった。きっとこの服だってこの街に来た時みたいにいつか慣れるはずと信じて行くしかない…。

『うん、やっぱりアリアちゃんって元々男の子じゃないでしょ。アリアちゃん見た目も相まってか知らないけど、なんか行動するたびにちょっとあざとく感じるんだけど』

「う、うっさい!」

 こんなこと言われるんだったらさっさと出てテオさんと合流するんだったなぁ。そうしたらレーテさんは割と静かにしてくれるから。顔のあたりが少し熱くなるのを感じながらテオさんの所へと向かうことになってしまったのだった。


「お、やっと来た。遅かったな」

「ご、ごめんなさい。こんな服着たことなくて…」

 まだ出会ってから1週間ほどしかたっていないのにすでに見慣れた服装で見慣れた顔をしたテオさんが宿前に立っていた。こんなにも早く人と馴染んだのはいつぶりだろうか。

「ははは!いいじゃん可愛いんだからさ。さてそろそろ行こうか。誰かさんがゆっくり着替えていたからちょっと時間が押してるからな」

「むぅ…わかりました、少し急ぎましょうか。それで今回はどこまで行くか決めたんですか?」

 今いるミュージャンはデイトレナ地方の北西に位置してレーテさん曰くあと2週間ほど歩いてようやくアウルダム地方へと行けるらしい。距離だけ見たらそこまで遠くないらしいが、途中で山を越えないといけないのでどんなに少なく見積もってもそれくらいかかるらしい。

「そうだな、とりあえずあそこの山の麓まで行こうかな。そして少し休憩したあとあの山を越えて、アウルダム地方に入ろうかと思ってるかな。あの山を迂回しようとも考えたんだが、あそこら辺は流れのはやい海のようになっているらしいから今回はパス」

「なるほど、あの山までとりあえず行く感じなんですね。どれだけかかるんだろう…」

 少し前にレーテさんがミュージャンから王都までは300kmと言っていたがまだこの世界に入ったばかりで正確な測量が出来ていなかったため、レーテさんの見立てを話していただけらしく実際はもっと離れていたらしく、今でも正確な距離はまだわかっていないらしい。少なくとも2倍から3倍くらい増えるらしい。

「どうだろうな。馬車を使えば早いんだろうが残念ながらそこまでの金は無いから徒歩になるんだが、ここに住んでる知人から聞くところによると徒歩だと1週間くらいかかるらしいぞ」

「うへぇ、大変ですね頑張りましょうか」

「そうだな、夜は視界が悪くなって身動きが取れなくなるから1日でどれだけ進めるかの勝負だからな」

 そっか、この世界は町の外以外に外灯は立っていないから夜に外をうろつくこと自体が悪手なのか。それはそれで怖いな。

「よし、早速行くか!目的地はあの山の麓、デラント村だ!」

「はい、行きましょう!」

 ここからまた新しい場所へと向かう旅が始まるのだと思うと少しワクワクする。図書館の目的を忘れたわけではないが如何せん自分がどうこう出来る訳ではないから、レーテさんに言われた通り異世界を楽しもうと思う。テオさんと声を合わせ、町の外へと出ようと意気込んだその時だった。

「おー?君たちもデラント村を目指すの~?そしたら僕も一緒に連れてってよ~」

「それはいいが、まずは名乗ったらどうだ?話はそれからだ」

 自分たちの後ろから声をかけてきたのは、どこか眠たそうな顔をした青年だった。腰には2本の剣を携えている所を見るに彼も冒険者なのだろう。

「おっとっと、これは申し訳ないね~。僕はロンドって言うんだ~よろしくね~。いや~他のギルドの仲間たちがみんな忙しくてさ~、どうしても急ぎでデラント村まで行かないといけないのに~」

「ロンド…ってあのロンドか?ギルド、スタービートのロンド?」

「そうそう~そのロンドで間違ってないよ~」

 自分の知らないうちにどんどん話が進んでいく…。ビート…ロンド…と言うと音楽家なのだろうか?そこら辺に疎そうなテオさんですら知っているって事はかなりの有名人なのかな?

「そうだったのか!なら安心だな。いいぜ一緒に行くか!」

「ま、待ってくださいよ!このロンドさんって人が嘘をついてるのかもしれないじゃないですか!テオさんだって名前を言われるまで分からなかったのにそんな簡単に信用したら…」

 普通のギルドを名乗っているなら信じてもいいのだろうが、有名なギルドを名乗っているなら疑うべきだろう。悪さをするならこういった有名なギルドを騙って悪さをする方がいいと考える人が少なくなさそうという偏見ではあるのだが、少し前に騙されたばかりなのでちょっと警戒している自分がいる。

「君はまだ子供なのに頭が回るんだね、でも確かにそいつはうちのギルドのロンドで間違いないよ。申し訳ないが私からも君たちにお願いをしよう。そいつと一緒にデラント村まで行ってやってくれ」

「は、恥ずかしいですけど、最近悪い人に騙されただけです。あ、あなたは誰なんですか!テオさんが話をするなら名乗ってからって言ってました!」

 テオさんを盾にさらに後ろから来た女性に反抗してみた。テオさんは驚いた様子でこっちを見ていた。すると後ろからきた女性が声を出しながら笑いだした。

「あっはっは!いいね、気に入った!私はスタービートのベースボーカル担当のアントラだ。ちなみにそこのロンドはドラムを担当している。お譲さんは?」

「ア、アリアって言います。2人ともが嘘をついてるかもしれないですけど、ロンドさんの反応から見て多分うそをついていないと判断します。あの、疑ってしまいすみませんでした…」

 レーテさんからその人達は本当にスタ―ビートというギルドの人達だったとの情報が入ってきたので信用することにした。流石にちょっと神経質になりすぎていたかな…。

「いや、正直アリアの判断は正しい。実際私たちの名前を騙り悪さをする輩がいるみたいだからな。子供にしては少し可愛げにかけるがね」

「そうかな~?これはこれで可愛いと思うけどな~?」

「一時はどうなるかと…だけどアリアの言う通りだな。簡単に人を信用するなって言ったのは私だったな、悪い。私はテオだ、しばらく間よろしく頼む。それで聞きたいんだがどうして私たちとデラント村まで行きたいんだ?」

 初めてテオさんに謝られたかもしれない。正直怒られると思ってたからこれにはちょっと驚いた。レーテさんにはちょっと怒られたんだけども。生意気な子供はよくないぞ~なんて言ってたから、怒ってるんだか怒ってないんだかは分からないけども…。

「えっとねぇ…実は僕結構道に迷うんだよねぇ…だから普段からどこかに行くときは他のメンバーと一緒に行くんだけど~」

「生憎私やマッチ、プレードも手が離せなくてね。なのにこいつ演奏で使うスティックを壊しやがってね。それを直すのにデラント村まで行かないといけなくなったという事だ」

 えぇ…話し方や立ち振る舞い的にまったりしている人だとは思っていたがそこまでとは…。そもそもここからでも見えるくらい大きい山を目指すだけなのになぜ迷うのだろうか…。

「そういうわけだからロンドの事をよろしく頼む。君たちは見た所王都を目指しているんだろう?だからこいつの帰りの事は気にしなくていい、私たちの中で手の空いたやつに迎えに行かせるからそこは安心していい」

「んじゃ、ロンドをデラント村まで連れて行けばいいんだな。それくらいなら任せろって、それじゃあそろそろ行くか。あんまり遅くなると夜になっちゃうからな」

「うん、よろしくね~アリアちゃんもよろしく~」

「あ、はい、よろしくおねがします」

 急に声をかけられたから少し反応が遅れてしまった。それはそうと初対面の女の子に対して少し慣れ慣れしいような気もする…。これが日本だったら大変な事になっていただろうな…。いや、まぁここは自分の中の一般常識が通じない異世界だから大丈夫なのか…?

「それじゃ2人とも頼んだよ、そいつは私らの中でも強いほうだから戦闘は問題ないだろう。それでは私は自分のやるべきことを済ましに行くよ。またどこかで会える時があれば是非私たちの演奏を聴いてほしいものだね」

 アントラさんはそれだけを言い残して去って行った。ああいう人をクールな人って言うのかな…?どことなく話していると疲れそうな感じはするが嫌な人ではない事だけは伝わった。レーテさんに近しいものを感じたのは黙っておこうと思う。

「なんか不思議な人ですね」

「ん~、確かにそうかもね~。でも優しい人なんだよ~?ほらほらアリアちゃん、急がないと置いてくよ~」

 よく見るとテオさんは割と先の方を歩いていた。ロンドさんはテオさんに直ぐに追いついたが、2人とも子供の足をなんだと思っているのか…。っとそんなことをぼやいてる暇はないな、すぐにでも走らないと本当に追いつけなくなってしまう。

「ま、待ってくださいよ~!うぅ、この服ちょっと走りにくい…」

『それは頑張って慣れるしかないね。大丈夫だって慣れたらそうでもないから。ほれほれダッシュダッシュ』

「まったく…なんでちょっと楽しそうなんですか…?」

 少し楽しそうにしているレーテさんに呆れながら走り、テオさんとロンドさんを追いかけた。

 ミュージャンをでて少ししか経ってないのにこれは、少し先行きが不安だなぁ…。

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