冒険の始まり、トラブルと出会い
さっきまでの強い光から変わり肌に風を感じるようになった。恐る恐る目を開いてみるとさっきまでいた図書館から木々に囲まれた森のような場所にいた。森と言っても直ぐ目の前には草原のようなものも見えているため、開始早々迷子になるといったことは無さそうだ。
「すごい…本当に異世界に来たんだ…」
『あー、あー聞こえるかな?そうここはまごうことなき異世界。君がいたモンスターのいない世界ではなくモンスターで溢れているちょっと危険な世界。というわけで君には武器をあげよう。私のおさがりで申し訳ないけどね』
レーテさんがそう言うと、手元に少し大きめの木でできた杖が出てきた。イメージ的にはRPGなんかで最初に装備しているような杖だ。
「ありがとうございます…ってモンスター?私戦闘経験なんてないですけど…」
『でしょうねぇ。だからちょっとチート気味だけど初めから魔法を使えるようにアリアちゃんの頭に魔法を使うための知識を今から埋め込むから。ちょっと頭が痛くなるかもだけど我慢してね。直ぐに終わるから』
知識を埋め込むって…この人は神かなんかなのか…?相変わらずこの人の人としてのスペックが計り知れなすぎる…。それとレーテさんは一度私たちのような世界に来たことがあるのだろうか?会話が割と通じるのと異世界ではまず聞かないであろう単語をたまに言っている気がする。それこそチートとか。
そんなことを考えていると知識を埋め込まれたのか頭が痛くなった。レーテさんはちょっとと言っていたけど、かなり痛かったため少し屈んでしまった。しばらくすると頭痛が収まるのと同時に、自分が元々なかった知識が頭の中にあるのが分かった。
「はぁ…はぁ…なにがちょっとですか…すごく痛かったんですけど…」
『ありゃ、そんな痛かったかごめんね?でも、苦しむアリアちゃんの顔も可愛かったよ?』
「サイコパスなんですかあなたは…はぁ、これが魔法の知識何ですか?ちょっと探った感じ簡単そうなやつしか無さそうなんですけど」
貰った知識を頭の中で見てみた結果、俗に言う初級魔法みたいでファイヤやアイスなどの攻撃魔法から、アーマーダウンやスピードダウンなどのデバフ魔法があった。
『そうね、今覚えた魔法は今いる世界みたいな魔法が使える世界ならどこでも使えるはずだからこれも覚えておいてね。簡単そうなやつしかないのはアリアちゃんのこの世界でのレベルが低いからだね。これ以上の魔法を教えてもいいけど使えないからね』
「レ、レベル…?なにそのゲームみたいなシステム…」
『実は割とこういった魔法とかがある世界だと珍しくは無いんだよね。今のアリアちゃんはレベル1だから今教えた魔法も乱射できないから注意ね。自分のステータスが見たいならステータスチェック出来るからやってごらん』
言われた通り手を掲げてステータスチェックと唱えると、目の前に自分の名前が書かれたステータス表が出てきた。これまたRPGなどのゲームで見たことがあるものが出てきた。HPとか魔力とか、レベル1らしい貧弱なステータスが出てきた。
『ステータスは低いかもだけど力は使いようだから、あとは頑張れって感じかな。とりあえず今見えている草原の方に抜けてもらって、10kmほど歩いたら町があるからそこに行ってみようか』
「りょうか…10km!?徒歩で!?遠くない!?」
『まぁ、遠いかもね今のアリアちゃんの足だと1時間から2時間はかかるかもね。あと、あまり叫ばない方がいいよ。モンスターに襲われても私は助けられないよ?』
そ、そうだったこの世界はモンスターが出てくるんだった。それに今あまりスタミナを使うとそれこそ全滅する危険性がある。…自分で言うのもあれだけどなんで10歳の女の子1人で冒険しないと駄目なんだ…転移1発目からハードモード過ぎないか?
「私はこんなにも幼気な少女なのにこんなのってないよ…」
『元男の子が何を言ってるのさ。ほらほら、急がないと夜になっちゃうよ?』
「誰がこの姿にしたと思ってるんですか。でも、レーテさんの言う通りですね。早くその町を目指さないとまずそうだな。モンスターは夜の方が危険になるのはRPGの鉄板だし」
最初から大変な道のりに若干絶望しつつも10km先の町を目指すことにした。
町を目指して大体1時間ほどが経過しただろうか、ようやく町が見えてきた。見えては来ているがやっと視界の範囲に見えるようになったというだけで、まだまだ距離がある。道中も軽く戦闘があったため体力的にもしんどくなってきたところだ。
「やっと見えてきた…もう疲れた…」
『道が整備されてるからまだマシだったね…これは流石に申し訳ないと思うよ…。ん?あ、前方から人が来てるから一旦こっちから通信を切るね』
丁度橋になっているから見えてなかったけど確かに人の歩く音とかが聞こえてくる気がする。音的に近づいてきているから自分とは反対の方向に向かうつもりなのだろう。
「おや?こんなところに子供がいるなんて。こんにちは」
「あ、えっと…こんにちは…」
「近くの町に向かうのかな?おじさん達は用事があるから一緒に行けないけど頑張ってね」
前から来た人たちは馬車を連れていたため、ここから遠くに向かう途中なのかもしれない。やっぱりこの世界の移動手段は徒歩とか馬車になるんだろうか?
「あ、ありがとうございます…おじさん達も頑張って下さいね」
横を通る際に一礼してから目的地である町を目指すことにした。短い会話だったとはいえ異世界に来て初めの会話だったためちょっと嬉しくなった。メンタル的に若干回復できたのも嬉しいな。さぁ、また進もうと思ったその時だった――
「むぐ!?」
「悪いねぇ、嬢ちゃん。おじさん達は悪い人だからさぁ。残念だけど諦めてくれや」
『アリアちゃん!?くそ、こいつら闇商人だったのか!』
横を通り過ぎて直ぐに、馬車の中からもう1人が出てきて、私の口元を押さえて軽々と持ち上げた。その衝撃で杖も落としてしまいどうすることも出来なくなってしまった。レーテさんの慌てようから見てもかなりまずい状況なのだろう。…こんなのんきに考えてる暇はないか。どうすれば…!?
「へへ、捨て子か知らんが俺たちに会ったのが運のつきだな。でも、安心しな新しいお父さんがお前の事を優しく迎えてくれるさ…」
これはまずい…闇商人…そういう事か、こいつらは人身売買をなりにしているのか…。一旦捕まってから逃げることは出来るだろうか…。今後の事を考えていると少し遠くから走ってくる音が聞こえてきた。
「どぅりゃ!」
「ぐわぁ!?こいつ何処から!?」
「子供相手に何やってるんだいあんたらは?こう見えても私は強いからねぇ…取りあえずボコらせてもらうよ?」
突如やってきた人が私を押さえつけていた人をぶん殴り、私の拘束をほどいた。その人は武器を何も持っておらず素手で戦うようで、宣言通り目の前の人たちをボコボコにしてしまった。
「くそ、お前らずらかるぞ!」
「あ、こら…逃げ足が速いな…おい、お前大丈夫だったか?」
どこからともなく現れた人は、闇商人たちをボコボコにした後追いかけるそぶりを見せたものの直ぐに戻ってきて私に手を伸ばしてくれた。
「だ、大丈夫です…ごめんなさい、ありがとうございます…」
「そっか、ならよかった。私はテオ、見ての通り武闘家の冒険者だ。お前は?」
武闘家…この世界には職業があるのか…となると私の職業は魔法使いになるのかな?冒険者…なるほどこれだけでもこの世界の事が少し分かったような気がする。
「えっと、私はアリアって言います。一応魔法使いです…冒険者かは分からないですけど」
「へぇー、そんな小さいのに魔法が使えるのかい!すごいね!冒険者ってのは自分が名乗りたかったら自由に名乗れるから、アリアが冒険者って言ったらアリアは冒険者になるよ」
「そうなんですか…?じゃあ私もテオさんと同じで冒険者です…えへへ…」
ん、あれ?今なんか自分の意思とは別に声が出てきた気がする…。おかしいな…もしかして少しずつ女の子の体に脳まで適応されつつあるのか…?なんならさっきまであんなに緊迫していたレーテさんが通信を切りながら笑っているような気がする…。
「あはは、そうそう。あんた可愛いねぇ。これから、あそこの町に向かうんだけど一緒にどうだい?さっきみたいな輩にはもう会わないとは思うけど、先はまだ遠いし冒険者同士仲良くするのはいい事だと思うぜ?」
「いいんですか!私もあそこの町を目指してたんですよ!」
あ、声の高さ的にこっちの方が合うかも…ちょっと恥ずかしいけどちょっと子供らしく振舞うことにしようかな…。レーテさんからの煽りは無視する方向で行こう。うん、そうしよう。
「よし、決まりだな。それじゃあ急いでいこうぜ、実は私も誰かと一緒に冒険するのは初めてだからちょっと嬉しいんだよな。ありがとなアリア!」
「テオさん…はい、よろしくお願いしますね」
急なトラブルはあったもののテオさんという新しい仲間が増えた。この異世界で初めて会うまともな人なのもあってか、ちょっと私も楽しみだ。こんな小さい私でも冒険者と認めてくれる優しい人だなぁ…。
地面に落ちていた杖を拾い上げてテオさんと一緒に町を目指すことにした。
『アリアちゃ~ん…なんか可愛くなって来たねぇ?えへへ、なんて言っちゃって~?いやー、やっぱり体が変わればちょっと引っ張られるのかなぁ、これはいいことを知ったなぁ…ねぇアリアちゃん?』
「…うっさい…静かにしてて」
長々と煽ってくるもんだからついついツッコミを入れてしまった。無視すると決めていたのに…やっぱり頭の中で私にしか聞こえない状態で騒がれると流石に反応を返してしまう。
「ん?なんか言ったかい?」
「う、ううん!何も言ってないよ!」
まったく横に人がいる時は話しかけてこないで欲しいな…。忘れてはいけないけどあなたの声は私にしか聞こえてないんだからね?…ってこの愚痴も誰かに聞こえてる訳ではないんだけどさ。
「おっと、モンスターだよアリア!」
「うん!後方支援は任せて下さい!いくよー、ファイヤ!」
草原とはいえモンスターは出るため油断はできないけど、今はさっきまでは1人だったけど今はテオさんもいるから心置きなく魔法が打てる!テオさんには当てないように気をつけないとね。
ここまでかなりの時間がかかってしまっていたが、テオさんと行動することによって予定よりも大分早く町へと着くことが出来た。