金の蝶 ― goldene Schmetterlinge
暗い暗い闇
分厚い本の頁を捲って
そこに何も描かれていなかったときの
紺青の黒
少女は掬う
冷たい掌に白金色の光を灯して
水面に揺蕩う金の軀を
立ち上る燐光の粉
余花の一条を
湖水の凪へ落としながら
顔も映らぬ水鏡
宵闇の影に差し入れた手を
稚き心を抱くようにして
掬い上げ
浮かばせ
底の無い空へと
点々と撒かれた星屑
手元を明かすことなく
ただ音無く散る
金の蝶たち
goldene Schmetterlinge in dem Mitternachtsblaue mit Sternen besät
――星散りばめられた真夜中の青に浮かぶ金の蝶
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