性悪――花、或いは火。
こんなつもりじゃなかったんだが、これぞ性悪のなせる業か。
八月二十七日、土曜日。
時刻は夕方の六時と半を回ったところ。
見上げた空が少しずつ夜に染まる――穏やかな夕刻の終わり。
「ふぅー……。」
かれこれ十分弱――俺は近所にあるヒト気のない寺の石段に座って、タバコを吸いながら彼女が来るのをボーっと待っていた。
どこか涼し気な風が草木を揺らすと、遠くに聞こえる祭り囃子とヒグラシに混ざって、ゆっくりとスズムシが目を覚ました。
夕顔寺――別にこの場所に何があるわけでもないが、俺は昔からこの場所が好きだった。
「わぁーっ、お待たせ〜。」
「う~す。」
もうすぐ、夏休みも終わる――ニヒルを気取って、ふかした煙の行方を目で追いながらそんな事を考えていると、パタパタと小刻みに慌ただしい下駄音が近づいてきた。
菫零 咲――俺が通ってる大学で仲良くなった、まぁ普通に彼女だ。
「マジごめんね〜。なんか着付け凄い大変だったー。」
「いや、いいよ、別に。そんな待ってないし。」
活きの良い金魚が楽しげに泳ぐ、幼げな白の浴衣。
長く艶のある黒髪を後で束ねた咲の姿は、小柄な割に大人びていて、意外と綺麗だった。
別に見惚れたわけではないが、なんとなく客観的にそう思った。
「……。」
一瞬の間――
「――さ、行こっ。」
「おう。」
その時、彼女は何か俺の言葉を待っている風でもあったが、俺がタバコを咥えたままボーっとしていると、遂に諦めたようにそう言って、何食わぬ顔で踵を返した。
後ろで束ねた髪が僅かに夜風に揺れる――俺はそれに気づかないふりをして、おもむろにタバコの火を消した。
「わたし花火デートとか初めてなんだ~。今まで友達と行ってたから。」
「俺も。けど俺の周りは上京したり、就職組ばっかで、こうやって一緒に行ける奴は地元にいなくなったな。」
「うわっ、ボン君……。私がいなかったらボッチじゃんっ。」
「あぁ、確かに……。」
祭り囃子の賑やかな方へ――淡々と歩みを進める半袖短パンの冴えない俺の隣を、浴衣の彼女は嬉しそうに並んで歩き始めた。
付き合い始めの頃はのんびりと、付かず離れず、後ろを付いてくるばかりだった。
けれどいつからか彼女は、俺の隣を並んで歩きたがるようになった。
身長差の為か、歩幅が違う。だから歩く速度も全然違う。
今ひとつ気乗りしないデートで、俺はいつも彼女の少し先を歩いていた。
しかしここ最近は、無駄に早歩きで付いて来る彼女の気持ちというものに譲歩し、多少ペースを落として歩幅を合わせるようになった。
まぁ、だから何って事じゃないんだけど――
「おっ、良いにお~いっ。やきとりかなぁ~っ。」
恐らくは今夜の祭り会場から漂ってきているものだとは思うが――
どこからともなく風に乗って甘く香ばしい香りが漂ってくると、彼女は鳴ってもいないお腹を嬉しそうにさすった。
はにかんだ幸せそうな横顔、楽しげなステップ。
年甲斐もなく無邪気な様子に、俺はまた一層虚しさを覚えた。
また、そんな感情を彼女に悟られる事は決して無いのだろうが、なんとなく俺は彼女の笑顔から目を逸らしていた。
夕顔町――日本海に面したこの町では、盆明けから八月末に渡って大規模な花火大会が行われることで少々は有名だ。
といっても都心からのアクセスが非常に悪い為、よそからやって来る人というのは極めて稀である。
更に付け加えると、花火を見る為の会場を特別に設けていないため、地元民でもない限り、電車で来てもどこへどう行くべきか迷うなど。
えーいっ、それならば車で――と遠路はるばるやって来たとしても、宿でも取っていない限り駐車場に困るというこの体たらく、などなど。
なら宿を取れば良いのでは?――甘いな、こんな田舎にまともな宿などほとんどないのだよ。
それに――
「――それに、それ以外に見どころもないからなぁ、この町。」
「ふ~ん、まさに田舎クオリティだね。」
「けど都会っ子はこーゆーのが好きなんだろ?」
「そりゃもう超好きだよ、田舎もんは大嫌いだけどっ。まじ東京来んなって感じっ。」
「なんだそりゃ、ならさっさと薄汚ねぇ都会に帰れよ。」
「ひどっ! 折角こんなしょっぱい町に来てあげてるのに!」
「しょっぱい言うな。ていうかどこの方言だそれ。」
「知らなーいっ。」
他愛もない、中身もない、そんな緩いキャッチボールが続く。
彼女は新宿生まれの新宿育ちで、生意気なほど生粋の都会っ子だ。
海が綺麗な田舎でのスローライフに強い憧れがあったらしく、進学と同時に一人この町に越してきて、今はキャンパス近くにアパートを借りて住んで居る。
そんな変人も、ここへ来てもう二年――俺と彼女が付き合い始めて、そろそろ一年にはなると思う。
「悪いな、また付き合わせて。」
「なんで謝るの? 行きたいって言ったの私なのに。変だよ。」
不毛な俺の無意味な謝罪に、ただでさえ丸い目を更にマルくして、首をかしげながら彼女は言った。
「わざわざこの為にバイト休んで予定空けたんだろ。」
「それはボン君もでしょ。――あ、今度は綿あめの香りっ。ん~お腹空いてきたね〜。」
「……。」
俺は、菫零 咲が――この子の事が、別に好きじゃない。
けれどそれは彼女のせいなどでは決してなく、俺自身の回りくどい生き方の問題なのだが。
しかし彼女はそんなことを知ってか知らないでか、俺と居る時はいつも楽しそうだった。
***
彼女との交際のきっかけを根っこまで辿るとしたら、それは入学直後の初授業の時だろう。
あの日、盛大に寝坊した俺は、なんとフランス語の授業一発目から遅刻。
先生に小言を言われながらテキトーな空席に座ったのだが、その隣に座っていたのが、彼女だった。
そして初授業ということもあり、自己紹介用に名前を書くプレートがあるのだが、色々と勘違いした俺は、それに「Bonjour」と書いてしまい、彼女に「面白いヤツ」認定されてしまった。
それからどっかしらで顔を合わせる度に「お~いボンジュールゥ~っ!」と手を振られたり「お、元気かボンジュールよっ!」などと馬鹿にされるようになったのが、全ての始まりだ。
して、俺の名前は加賀 賢斗なのだが、彼女から「ボン君」などと親しみやすそうなヘナチョコネームで呼ばれているのはこのためである。
けれど菫零という女は、話してみると悪いヤツではなかったし。
男女問わず、その性格問わず、誰とでも仲良くなれる、そんな純粋に気持ちの良いヤツだった。
そして、ただ何となく気が合う――というそれだけで、彼女は俺に近づいてきたような気がする。
それから話す機会が更に増え、グループワークの課題を一緒にこなしたりしている内に、いつの間にか友達と呼べるくらいには仲良くなっていた。
恐らくあの時は、酒の勢いもあったのだろうけど――ある日、彼女から、告白されてしまった。
なんだそれ、嫌なら断れば良かったじゃねぇか――あぁ、その通りだよな。
けれど、別に好きでもない相手のそれを受け入れたのは、別に嫌いでもなかったからで。
また性格も明るく、頑張り屋な一面にも好感が持てたし、それこそ見た目も可愛いとは思っていた。
更に俺自身、恋愛に無関心という程でもなかったし、色々と未経験だったこともあり「俺とは、どういう人間なのか」を知る良い機会でもあると、そう思った。
まぁ、それも本当は「ただ彼女を作ってみたかった」という、どこまでも救いようのない下卑た理由なのだろうけど。
***
「お祭りといえばやっぱタコ焼きだよねぇ。」
「よう食うなぁ、キミは……。」
話は戻り――今しがた俺達は、高台にある夕顔稲荷神社に到着。
そしてここが今日の目的地、地元の小さな町内会祭りの会場である。
夕顔稲荷神社――何を隠そう、ここは日本全国至る所に存在するという「日本三大稲荷」が一つだ。
因みに町の人達は「この夕顔稲荷こそが本物の三大稲荷だっ!!」と、それを信じて疑わないのだが、それがまた胡散臭さを助長させた。
「あんま食うと顎周りとか――」
「ちょっとそーゆーのマジでやめろ。」
遠くで打ち上がり始めた花火と行き交う人々の喧騒に包まれて、俺達は祭りの屋台を巡り歩いていた。
と言っても俺は、嬉しそうな彼女のその後ろ姿を眺めながら、脳死で付いて歩いていただけだなのだが。
「ていうかあの屋台のタコ焼き美味すぎない? ほっぺたボロボロ落ちるんだがっ。」
「あのおっちゃんが作るのは別格なんだよ。」
「お? ボン君、通だねぇ~。それじゃあ昔っからいる人なの?」
「さぁな、少なくとも俺が小さい頃には祭りの屋台でタコ焼きやってたな。それこそ二十年くらいにはなるんじゃねーの。」
「すごっ。何者!? 超ベテランじゃんっ。時代が時代ならタコ焼き系ユーチューバーなれるよっ。」
「誰得。」
「うん、少なくとも私は見ないねっ。絶対つまんないっしょっ。」
「意味ねー。」
そして俺達は今、神社の境内にある隠れ花火スポットの柵に腰掛けて、海岸の方から次々と打ちあがる花火を眺めていたところ。
けれど座右の銘が「花より団子」な彼女は、タコ焼きを食べるのに夢中になっており。
更に付け加えるなら、俺は静かに花火を眺めたいのだが、このお隣さんが少々喧しくて萎えていた。
「てか、結局ボン君なにも買わなかったの?」
不意にチラッと、彼女が俺の手持ちブタさんな手元を見てそう言った。
「まぁ、ぶっちゃけあんま腹減ってなかったし。」
「ふ〜ん……。……タコ焼き、食べるかい?」
そしてどこかよそよそしく、彼女はそう訪ねてきたが――
「いや、いいよ――」
俺はなんてことはない風を装って、それを断った。
こーゆー時に彼女が何を考えているのかは、男の俺にもなんとなくは解る。
仕草や声の調子が僅かにぎこちなくなり、緊張みたいなものが瞬間的に伝わってくるからだ。
正直、手に取るようにわかると言ってもいい――けれど出来るだけ、彼女との距離を縮めるようなことはしたくない。
そして最近は、こうして意図的に距離を取っていることを、彼女に悟られているような気がするのだ。
だからこそ、俺は余計に虚しさを覚えるのだろう。
「――実は家出る前にちょっと食ってきたんだよね。」
「――えっ。何それ? 遊び行く前にお腹にもの入れるとかありえないでしょ? バカなの?」
「はーい。ばっかでーす。」
「キモ、バカじゃん。いやバカかよマジで。」
辛辣な彼女の物言いはともかく――というのは嘘っぱちで、実はそれなりに腹は減っていた。
けれど、ほとんどの屋台の人と顔見知りな俺は、近くを通りすがる時にはほぼ100で声を掛けられるのだが、それら全部に付き合っていたら、ただでさえ心もとない財布の中身が可哀想である。
更にどこかしらを贔屓しようものなら――まぁ、言わずもがな……。
故に、過去に何度かそう言った悲惨な経験がある俺は、祭りの時は極力なにも買わないようにしていた。
「けど逆に、キミは買い過ぎだと思うよ。色々と。」
「……え、そう?」
そんな俺の代わりに、彼女は愛嬌のあるその明るい性格の為か屋台のオッサン達に酷く気に入られ、やれタコ焼きだ、やれ綿あめだ、やれチョコバナナだ、やれ、やれ、やれ――とまぁ、やれやれが飽和した状態である。
そんなやれやれシンドローム以外でも、彼女は割とズボラな性格の為か、例えば射的に輪投げは盛大に外し、型抜きは一撃粉砕、木っ端微塵。
恥ずかしげもなくドラちゃんのお面を頭に付けて、果ては金魚掬いで脱帽的なナンセンスを発揮すると金魚屋のオヤジに大変気に入られ、オマケに数匹掬って貰ったが――
「あの……それさぁ、持って帰ってからが大変なんだぞ。どーすんだ?」
「ん? 最悪、近所の川に放せばえぇやん。」
「――あ、おまわりさーん。」
「ちょっとやめてよっ! なんばしよっとっ!」
偶然近くを通りがかったポリスメンを呼び止めると、福岡県民を装った都会っ子は慌てて俺の頭を小突いた。
「いやなに、ここにエセ福岡県民の底辺DQN女がいるからさぁ。」
「ん、バリバリの東京都民ですけどなにか?」
「何でもいいけど福岡県民にはちゃんと謝れよな。」
「福岡?! どこですかそこっ。フロンティア過ぎて無理っ。」
「失礼だな……。てかまじ、後で返しに行けよ。」
「……んー。」
如何にも不服そうに顔を背けて、忙しく足をバタつかせながら、彼女は再びタコ焼きを口に入れた。
こんな光景は――端から見たら、幸せそうに見えるのだろうか。
「……。」
今、彼女は、幸せなのだろうか。
今、俺は、幸せそうに見えるのだろうか。
「なんか、楽しいね。」
あぁ、きっとそうなのだろう――
***
花火も終わり、祭りも終わり、いよいよ俺たち以外誰も居なくなると、閑散とした神社の境内には提灯の灯りだけが残され、それらはどこか寂し気に風に揺れていた。
「……私ね、お祭りの後の空気、好きなんだ~。」
入り口の石段に並んで腰を下ろし、散々見飽きた素朴な夜景と夜空の星を眺めていると、ふと隣に座っていた彼女がそう言った。
「――ふーん。なんで?」
別に、興味があったわけでもないが、今は脳死だった。
ただ、決して共感できない訳でも無く、俺としてもこの境内の物悲しい静けさというものは嫌いではない。
それは例えるなら、高校最後の文化祭の後のような――心地よく、寄り添うような、そんな寂しい余韻だった。
「ほら、誰もいないと、こうして風で提灯が揺れるでしょ? ワッショイワッショイって、なんだか楽しそうじゃん。『てやんでぇバーローちくしょうめぇ! 次は俺達の時間でぃっ!』って感じで。」
「そうか? 俺にはなんだか寂し気に思えるが。てかなんで江戸っ子?」
「は〜っ、キミのような田舎もんにゃ一生解らんね、この感覚は。」
小馬鹿にするようにそう言って、東京女はグーっと背筋を伸ばした。
そうして無防備に伸びをすると僅かに体のラインが強調されるのだが――例え他意も悪気もなかろうと、何かそう観察してしまうことに居たたまれなくなり、俺はそっと目を逸らした。
「さ、帰ろっか。」
「おう。送ってくよ、一応。」
「お~。たのも~。」
彼女の家まで、ここから歩いて四十分は掛かる。
それまでは、せめて傍に居てあげよう――一見楽しげだが、どこかよそよそしい彼女を見て、俺はまたそんな事を思った。
***
スズムシの一大オーケストラが反響する、星空の綺麗な田んぼ沿い。
そんなヒト気も街灯もない物騒な帰り道にも関わらず、俺達はあまり言葉を交わさなかった。
けれどいつも以上に歩くペースを落とし、お互いにゆったりと、のんびりと歩調を合わせていたと思う。
そして時折、隣を歩く彼女が何か言ったが、それでもあまり会話は続かず、やはりどこかよそよそしかった。
むしろ無言でいる事の方が、ずっと居心地の良い空間になっていただろう。
「……。」
そしてまた、俺は彼女に、何かを期待されている――それは解っていた。
緊張気味な彼女の開いた手が、不自然に行ったり来たりを繰り返していたから。
けれど仮にそうでなくとも、この奇妙な沈黙からなら、それを容易に想像できてしまう。
「……。」
別に周りに誰もいないのだし、それくらいしてあげても良いじゃないか――そうも思う。
けれどその行為というのが、最も残酷な形で、彼女を幸せにしてしまうから――おいそれと気安く触るわけにもいかなかった。
「……。」
今ここで、この子を幸せにしてあげることは、とても簡単だろう――けれど俺は、一緒に幸せになってあげる事が出来ない。
彼女が感じる幸福と、同等のそれを共有する事が俺には決して出来ないのだから。
そして一度でも期待させてしまったら、いつか失望させることになる。
一度でも心を許してしまったら、いつか傷をつけることになる。
その思い出に――
その心に――
などと――それももう、全て手遅れなのに――
***
「そんじゃ、早く寝ろよ。」
「え――うん……。」
結局、彼女の住むアパートまで五十分は掛かった。
到着早々、彼女の部屋の前にすら行かずに、俺は階段の下で別れを告げた。
「――じゃあな。」
「うん、ばいばい。――あ、送ってくれてありがとね。」
「おう、おやすみ。……また明日な。」
「うん、また明日……。帰り、気をつけてね。……おやすみ。」
また明日――そうして繋ぎとめるだけの日々。
俺は彼女を縛り、そして縛られている。
或いはそう思い込んでいるだけなのかもしれないが。
そして何もしてやれないその気休めとして、せめてもの安心材料として、素っ気なくも安易にそんな言葉を掛けてしまう俺の正体というのは、結局のところ、性悪というやつなのかもしれない。
少し寂し気に手を振った彼女に背を向けて、俺は帰路についた。
***
八月二十七日、土曜日。
二十三時五十分――間もなく日付が変わる。
見上げた空に月は無く、お陰で満天の星が夜空を埋め尽くしていた――そんな鮮やかな、俺だけが知っている一日の終わり。
かれこれ十分弱――俺は近所にあるヒト気のない寺の石段に座って、タバコを吸いながら今日一日の出来事を思い出していた。
スズムシの音は穏やかで、夏の生温い夜風に乗って、タバコの煙が行く宛てもなく空に散った。
夕顔寺――別にこの場所に何があるわけでもないが、俺は昔からこの場所が好きだった。
そして、今日は――母の命日だった。
「ふぅー……。」
花、或いは火――
昔。まだ俺が幼い頃。母は俺の事を「掛け替えのない大切な物」だとして、そう例えた。
因みに、花は、日々を色鮮やかにするものを意味し。
火は、人生を活気のあるものすることを意味する。
そんな母は――まぁ、それはもう、いいか。
「……。」
そして――大切なものを失う恐怖を知っていながら、それでもあの日、彼女の告白を受け入れてしまった身勝手な俺を――そんな性悪を、あの時の母なら何と例えるのだろうか。
「あの子なら……。こんな俺を、なんと例えるだろう――」
そして、こんな性悪にとっての「菫零 咲」とは――やはり花であり、火なのだ。
けれど花は、いつか枯れる儚いものであり。
そして火は、いつか身を焼く地獄となる。
それ以上でも、以下でもない――そしてこんな物語こそ、救いようのない性悪に他ならないのだろう。
「それでも、俺は――」
なんというか、書いてて何とも言えない気持ちになったわ。
最後まで読んでくれてありがとう、ゴメンな。