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肉食系ヒロインに食べられました  作者: 月ノ裏常夜


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[3-3] 宿泊

 ローベルグが、騎士団も魔物の討伐を行う必要があると考えている事は分かった。分からないのは、ローベルグが遺物と言ったこの目の前の物体の正体である。

「そもそもこれは魔物なのですか?」

 狼のような形状から、魔物である可能性は捨てきれないが、材質が金属であるという点では、これが魔物では無いという可能性もある。

「この遺物を見せたのは君が初めてではない。そしてほとんどの者はこれが魔物の死骸と予想し、残りの者は人為的な創作物だという予想を立てた」

「人為的だとすると何のために?」

 ミランダとしても、初見では祭具ではないかと予想した。もしも他の人物もこれが人為的な創作物だと考えたのであれば、その意見を聞いてみたくなった。

「そうだな、人を驚かせる事に喜びを見出す愉快犯という意見もあったが、私はそれには否定的だ。もしも愉快犯だとするならば、その者の目的はこの死体の発見者が、どういった反応をするかを見る事だ。そうなるとこの死体の回収の際に何者かの妨害や監視があるはずだが、そう言った事は起こらなかった。まあ、こちらが気が付かなかっただけかもしれないが、結果的にこの死骸をここに運ぶまでには特に事件は起こらなかった」

 発見者を驚かす事が目的ならば、発見時の反応を見る必要がある。遺物発見時に犯人と思われる人物の監視や介入が無かった以上、愉快犯の可能性は低い。

「では団長は愉快犯ではないと?」

「そうだ。それに、悪戯にしては内部構造が複雑すぎる。目撃者を驚かすだけならば、外側だけそれらしい形にすればいいだけだが、こいつは違う」

 ローベルグの言う通り、中には小さな部品がいくつもあり、見た目だけを重視して造られたものではない事は一目で分かる。発見者を驚かす事が目的であるならば、内部構造にここまで拘る必要は無い。

「ギルドが作ったのでも、誰かが個人的に作ったのでもないとするのなら、これは一体どこから来たと?」

 ミランダの予想ではこれを造ったのはギルドか、もしくは個人的にだれかが作ったであるが、ローベルグはどちらにも否定的だ。ミランダにはそれ以外の可能性は思い浮かばなかった。そうなるとミランダはローベルグ本人の考えを聞きたくなった。

「ギルドでも個人でもない。全く別の、我々が存在を認識していない何者かがこれを作ったというのが私の仮説だ。話だ」

「そんな事がありえるのですか?」

 ミランダからすれば、そのような話はとても信じられず、まだこれが魔物か、人為的な創作物と言われた方が説得力があるように感じられたが、ローベルグは意外な切り口からこの説を主張し始めた。

「君は「神の奇跡」についてどう思う?」

「三百年前の防衛戦争の話ですか? 今となっては文献に残っているだけですが、大規模な戦いがあったのは確かでしょう。それでも私自身は当時人間と戦ったとされる魔族は見た事が無いので、魔族自体の存在は信じていませんよ」

 神の奇跡を語る上で魔物の存在は切っても切れない存在だ。多くの文献では三百年前に人間と戦い、滅亡寸前まで追い込んだにも関わらず仲間割れを起こし、その姿を消したとされている。

 防衛戦争は既に三百年前の出来事であり、生き証人はいない。多くの文献には記載されているものの、今となっては直接見る事の出来ない魔族の存在。それを否定する者も一定数おり、ミランダもまた直接見た事がない魔族の存在には否定的だった。

「これが魔族と関係するとは思わないか?」

 多くの人間にとって魔族とは架空の存在であるが、人間には使用できない力を持ち、魔術ですら実行不可能な奇跡を起こすとされている。それが存在するとなれば、荒唐無稽なこの目の前の遺物を作る事もあり得るだろう。

「まさか、それならどこかの魔術師か研究者が新しく発明した技術で、試しにこれを造ったという方がまだ信じられますよ」

 ローベルグの仮説は、は魔族が存在すと言う前提の話だ。ミランダはその前提条件となる魔族の存在を信じていない。よって、この遺物が魔族と関連すると言う話も、信じる事ができなかった。

「これが悪魔憑きにつながっているかもしれないとしてもか?」

 その言葉に思わずミランダは目線をローベルグに向けた。

 オリバーが悪魔憑きとなったのは腕の認識印が消失していた事だ。魔術的に腕に印を入れる認識印を消去する事は今の魔術では不可能とされている。

 しかし全く未知の勢力が存在するとして、現在の人間では作成不可能な動物を模した道具を作るほどの技術を持っていたとしたら、認識印を消去する事もまた可能ではないか。

「確かに今の私にはこの遺物が何なのかはわかりません、だからと言ってこれを造った者が、弟の事件に関わっているというのは早計では?」

 この遺物も、オリバーの件も、裏に魔族が居ると言うのは、魔族が存在すると言う前提がなければ成り立たない。それに、説明できない事象があるからといって、未知の存在の力が働いているという陰謀論じみた考えは、ミランダはすぐには信じられなかった。

「どちらもまだ完全には解決していない事柄だ。そこに我々の知らない未知の勢力がいて、同一犯だったというのはあり得ない話ではない」

 ミランダとは反対にローベルグはその未知の存在を信じているようだ。

 ミランダとしても未知の存在が絶対にいないと断言する事は出来ない。しかしだからと言って繋がっているという保証も無い。二つの未解決の事象があるというだけだ。

 それでも、オリバーの無実を信じたいミランダとしては、その説に耳を貸したくなってしまう。ミランダ自身が否定している魔族の存在。この事件を追えばその存在にたどり着けると言うのであれば、オリバーの事件に魔族が関連しているという話も、現実性を帯びて来る。

「そもそも魔物がどこから来るか知っているか?」

「いえ、知りません」

 野生生物の突然変異、防衛戦争の侵略者の生き残り等、色々な説があるがどれも根拠のない憶測である。それでも魔物は確かに存在し、人を襲う。多くの人は魔物の存在に慣れてしまい、それがどこから来るのかは分かっていないにも関わらず、実在する脅威としてその存在を受け入れている。

 以前彼女が戦ったグールは魔術によって死者に魂を埋め込む事で生成される事が分かっているが、ほとんどの魔物の出自は分かっていない。

 それでいて確かにこの世界に存在し、人を襲う。それが人間から見た魔物と言う存在であった。

「魔物もこの遺物も、魔族という存在が手引きしたと考えた事は無いか?」

「魔物もこの遺物も、実在する物ですが、魔族とは架空の存在です。関連するとは思えませんよ」

 口ではそう言ったものの、ミランダはつい考えてしまう。もしも魔族が存在し、オリバーの認識印を消した原因となっているのであれば、その魔族を捕まえればオリバーの無実を証明できるのではないかと。

「では君はこの遺物の正体が分かるのか?」

「それは分かりませんが…、この遺物に触ってもいいですか?」

 今のミランダにはこの遺物の正体は分からないが、触ってみたら何か分かる事があるかもしれない。

「ああ。好きにすると良い。そう簡単に壊れるような代物ではない」

 ローベルグの許可を得ると、ミランダは遺物に手を伸ばす。手を伸ばした先は破損して露出している金属のような部分だ。戦闘の痕跡だろう。体にはいくつもの切り傷があるが、それはどれも浅い。触ってみるとはやり金属のよう堅さと冷たさがある。

「君の弟、オリバーは裁判の証言で、『襲ってきた魔物は見た目が狼ではあったが体が硬く、剣が弾かれた』と証言しているな」

 それを見たローベルグがオリバーの話を持ち出す。わざわざこのタイミングで言うという事は、ミランダがこれに触るのを待っていたのかもしれない。

「まさか、これがオリバーを襲った魔物と同一だと考えているのですか?」

 オリバーが認識印を失う直前に、魔物と戦ったと証言している。また、その時に仲間の騎士を殺したのはその魔物であるとも証言していたが、その時魔物には逃げられてしまい、戦った魔物の詳細は分かっていない。

 認識印が消えていた事もあり、オリバーが魔物に襲われたという話は創作で、仲間の騎士を殺したのもオリバーであるというのが裁判の結論であった。

「まだ憶測の域を出ないが、何かしらの関係があると私は考えている」

 もしも、あの時本当に魔物が居たとしたら、オリバーの仲間殺しの疑惑は晴れる事になる。

「この事を公表しないのですか?」

 あの時魔物が本当に居たと仮定しても、オリバーの認識印が消えた謎は残るが、その原因も戦った魔物にあるとすれば、オリバーの悪魔憑き疑惑は晴れるかもしれない。

「ただでさえ魔物による被害が増えていて、民衆は魔物に対する不安が高まっている。それにこれが何なのかは我々も突き止められていない。そこに魔物かどうかすら分からない何かが出るなどという話をだしたら余計に混乱が大きくなるだけだ。」

 ローベルグとしては遺物の存在を世間に公表したところで余計な混乱を招くだけであり、公開すべきではないという考えのようだ。

「この遺物が実際にあるとしてもですか?」

 ミランダにはローベルグの考えが理解できなかった。騎士団がこの遺物と呼ばれる物体を保管している事は変わらない。それを公表するのを憚る理由などあるのだろうか。

「さっきも話しただろう。これの作成にギルドが関連していたら、何をしてくるか分からない」

 遺物の存在を公表すれば、当然それはギルドにも伝わる。そうなったらギルドがどう動くのか。

「公表するよりも、正体を突き止める事が先という事ですか」

「その通りだ」

 もしも遺物の存在を公表するとしても、この遺物がギルドとは全く関係のない物体という確証を得てからになる。それがローベルグの考えのようだ。

「ではこのことを知っているのは?」

「ごく一部の第九騎士団員と、騎士団統括本部の者だけだ」

 この建屋に保管している以上は、第九騎士団の中にもこの遺物の存在を知る者はいるだろう。

「では上には報告しているのですか?」

 そして騎士団の組織体系として、全ての騎士団を束ねる立場にある騎士団統括本部には、第九騎士団からこの存在を報告しているのだろう。

「ああ、これが何か分かるまで公表を伏せるというのも、統括本部の方針だ」

 騎士団とは縦社会である。第九騎士団の団長であるローベルグではあるが、その上層部に位置する統括本部からの指示とあっては逆らう事はできない。

 暗部と噂される第九騎士団であるならば、この情報を上に報告していないのではないかという可能性もミランダは考えたが、それは杞憂だったようだ。

「これを私に教えて良かったのですか?」

 ミランダは第五騎士団に在籍しており、今のローベルグからすれば部外者である。このような情報を話してもよかったのだろうか。今までの話の流れから、この後のローベルグの答えは、ミランダとしても予想は出来ていたが、直接本人に問いかける。

 それを受けて、ローベルグもいよいよといった感じで話を始めた。

「さて、前置きが長くなったが、ここからが本題だ。君はオリバーが何故悪魔憑きになったのか、いや、彼の体から認識印が消えた本当の理由を知りたいと思っているのだろう? こいつの正体はそれを知る足掛かりになると私は考えている」

 オリバーが悪魔憑きになった真相は、姉としても、騎士団の一員としても、ミランダは知りたいと考えていた。そこを理由として出されるとミランダとしては断る理由は無い。  

ミランダの表情から、ローベルグはミランダの返事を悟ったのだろう。だが、ミランダは第五騎士団であり、ローベルグは第九騎士団の団長である。ミランダがこの依頼を引き受けるには、乗り越えなければならない壁が一つある。

ローベルグは一呼吸おいて、本題を切り出す。

「君は第九騎士団に籍を移し、こいつの正体を探らないか? 返事は急がない」

 当然ローベルグも現在第五騎士団に所属しているミランダに対して、任務を課すことは出来ない。だからこそ、第九騎士団に移籍してでもこの魔物の正体を探らないかというのがこの話の主旨であった。

 第九騎士団以外の騎士団は魔物の対応には消極的な考えの者が多い。オリバーの潔白を証明するために、魔物に関する任務に携わる覚悟があるのであれば、第九騎士団に移籍するというのはミランダにとってもメリットのある話だ。

「何故私なのですか?」

「先に言っただろう。魔物との戦闘経験があるからだ」

 ミランダにはグールと戦った経験がある。今後魔物と戦うのであればその経験は間違いなく生きるだろう。

「本当に、それだけですか?」

 それでもミランダはそのローベルグの言葉に裏があるのではないかと疑っていた。

「しいて言うなら、魔物と戦闘をした上で、生きて帰ったからだ」

 先日ミランダはグールと戦闘し、生きて帰ってきたというのは事実だ。その実績を聞きつけて、対魔物用の任務に向かわせる騎士として勧誘を掛ける。ローベルグの話に筋は通っている。

「分かりました。お引き受けします」

 グールを討伐したという自身の実績を理由としての勧誘に、ミランダは悪い気はしていなかったが、それ以外の理由もあるだろう事は、彼女自身自覚していた。

 それでも、オリバーが悪魔憑きとなった真相を明らかにできる可能性があるのであれば、彼女がこの勧誘を承諾するのには十分な理由であった。


 ●


 オリバー一行はガヌラスの村に付いていた。移動手段は徒歩であった。馬車を使うと言う手もあったが、財政的な面と、オリバーがお尋ね者であるという点と、歩いても行けない距離ではないという事から、目立たずに徒歩で行くという結論になったのである。

 王都からガヌラスの村まで徒歩で移動となれば一日は掛かる。王都を出発したのが朝であったが、もう日は暮れていた。

「今日はもう、宿屋に泊まるか」

 町の中に入るなりそう提案したのはオリバーだった。

「そうだねぇ。もう夜だし、さすがに今から森に入るのは無いよねえ」

 ギルスもため息交じりに返し。歩き疲れたといった様子をアピールしている。ギルスの言う通り、夜の森は危険が多い。今森に入っても森の中で一泊野営する事になるだろう。

「あそこに宿屋がある」

 そう言ってヴァネッサがある建物を指さす。彼女もまた、今から森に入るぐらいであれば村で一泊する事に賛成のようだが、オリバーはそれよりも気になる事があった。

「そうね、行きましょうか」

 リリアがそれに同意するが、オリバーはリリアとヴァネッサの言動に驚いた様子でギルスに視線を向けると、ギルスがオリバーの気持ちを代弁した。

「二人とも、よく見えるね」

 日が落ちた町の中、入り口にランタンが灯っているが、それが宿屋である事はオリバーには確認できなかった。王都であれば夜でもある程度の明かりがあるが、この町はそれほど大きくはなく、夜となれば明かりが限られている。

「あれぐらい見えるでしょ。ほらさっさと行くわよ」

 リリアが見えない方がおかしいといった口ぶりで、歩みを進める。

「そうかなあ」

 ギルスは首をかしげながら、その後を付いて行った。

 オリバーはふと思い出す。リリアとヴァネッサが魔族である事を。リリアがサキュバスで、ヴァネッサが吸血鬼である事を考えると、夜でも物が見える事と何か関係があるかもしれない。一方でギルスにはまだその事を伝えていないため、これ以上この事には触れなかった。

 店の入り口を潜ると、受付で座っていた店番が顔を出した。

「アンタ達冒険者かい?」

 座っていたのは妙齢の女性で、いかにも女将といった風貌であった。

「ええ、そうよ、四人だけど泊まれるかしら」

 受け答えをしたのはリリアだった。オリバーはお尋ね者であり、ヴァネッサとギルスも放浪の身で身元が保証されないため、何か名前を出す必要がある場合は、冒険者としての身元がはっきりしているリリアが代表となるのが暗黙の了解となっていた。

「じゃあ、そこの用紙に名前だけ書いておくれ」

 そう言われてリリアがカウンターに置かれていたペンで、宿泊の申し込み用紙に記入を始める。

「もしかして、ミベラの森に行く気かい?」

店主がこちらの事情を尋ねてきた。

「そのつもりですけど、何かあるんですか?」

 店番の口調が、興味本位というよりも、何かを心配しているような雰囲気が伝わってきたため、オリバーは理由を尋ねる事にした。

「最近ゴーレムを見たっていう噂が広まってね、冒険者が腕試しにミベラの森に行く事が多いんだよ」

「ゴーレム?」

 店主の言葉に反応したのはギルスだった。

「何か知ってるのか?」

 オリバーがそれを見て問い返すが、その回答は煮え切らない内容だった。

「ああ、後で話すよ。ここじゃちょっと」

「もしかして、知り合いの冒険者が返り討ちにされたのかい? ゴーレムを見たっていう話は聞くけど、倒したって話は聞かないからね」

 明らかに何かを知っていそうなギルスの反応に、店主がつい口を挟む。

「いやあ、そういう訳じゃ無いんですよ」

 ギルスの声は強張っており、いかにも何か知っているといった様子であったが、ここでは話したくはないという姿勢を崩さなかった。

「あまりにも目撃情報が増えてきたから、騎士団に調査依頼をしたって村長が言ってたけど、相手がゴーレムだからね。騎士団が動いてくれるかどうか」

ギルスの態度を見た店番はギルスの事情には深入りはせずに、自分の知っている情報を話す事にしたようだ。

「騎士団に?」

 驚きの声を上げたのはオリバーであった。

「ああ、ギルドに依頼を出せるほど、この村は財政に余裕がないからね。まだ死人がでたわけじゃないけど、犠牲者が出る前にって村長がとりあえず騎士団に相談をしてみたんだという話だ。まあ、相手がゴーレムじゃ、騎士団が動いてくれるかは微妙だけどね。魔物に関する依頼はギルドに任せてるっていう話だしね」

 その口ぶりから、店番も騎士団が動いてくれるかどうかは懐疑的なようだ。

「確かに…」

 騎士団が魔物討伐に対して消極的というのは、元騎士であるオリバーも良く知っている話だ。

「終わったわ」

 台帳への記入を終えたリリアが顔を上げ、記入の終わった台帳を店主に渡す。

「これでいいのかい?」

 中身を見た店番は意外そうな反応をした。

「どこかおかしかったかしら?」

 一方のリリアは店番が何を気にしているのか分からないといった様子だ。

「いや、おかしくはないけどね」

 店番の回答もまたはっきりしないものであった。

「男女別々で。オリバーとギルスで一部屋、私とヴァネッサで一部屋。何か間違っていたかしら?」

 リリアは念のために自分が書いた内容を読み上げる。

「え?」

 それを聞いたギルスが声を出した。

「何よ?」

 リリアもまた意外そうに振り返った。

 リリアとしては特段おかしなことを言ったつもりは無く、ギルスが何に対して反応しているのか分からないといった様子だ。

「いや、新参の僕が言うのもなんだけど、君たちの関係性が今一まだ分からなくてね」

 四人の中でギルスは最後に加入したメンバーである。

「冒険者仲間って説明したでしょ」

 リリアはそれが当然の様に答える。

「あー、いや、そういうことじゃ無く、あれ? 僕がおかしいのかな?」

 そう言いながら、ギルスはオリバーを見るが、オリバーも何を言われているか分からない様子で、ヴァネッサは無表情のまま。ただ一人、店番だけが笑いながらこう続けた。

「いいのかい? 本当に男女別々で」

 店主が何故笑っていたのか、ギルスには分かっているようだった。

「いいわよ。男女別々で」

 しかし、そう答えたリリアは、分かっていないようだ。

「一応、四人部屋もあるけど、そっちにするかい?」

 男女別々でも良いと言うリリアに対して、店番がこれが最後のチャンスと言わんばかりに変更の提案をしてきた。

「何言ってるの?」

 それでもリリアは店主の質問の意図が理解できていないようだ。意図を正しく理解していたであろうギルスはただ苦笑いしている。

「早く部屋に行こう」

 今までのやり取りを黙って聞いていたヴァネッサが口を出す。全く疑問を口にしないという事は、ヴァネッサもまた店番の意図が分かっていたのかもしれない。

次話は7/22に投稿予定です。

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