第6話、ホワイトデー⑦
昼休みになると俺はまず生徒会長の所に行った。立夏の話では彼女は昼食をいつも生徒会室で食べているらしく、ホワイトデーのプレゼントを渡すなら先に生徒会長から済ませておいた方が後で困らないだろうと思った。
放課後の事で頭がいっぱいだったが、とりあえず今は目の前の事に集中しよう。
俺は生徒会室の扉をノックして返事が来るのを待った。するとすぐに中から声が聞こえてきたので俺はゆっくりとドアノブを引いた。
そこには椅子に座って足を組み、優雅に紅茶を飲む生徒会長の姿がある。ぽつぽつと窓にぶつかる雨粒を眺めていた生徒会長はくるりと椅子を回して、生徒会室の入り口の方へと振り返った。
「雛倉くん、こんにちわ。そっちから来るって珍しいわね、今日はどうしたの?」
金髪碧眼のポニーテール女子、こうして紅茶を飲んでいるだけでも様になるなと感心する。
「えっと……ちょっと話があって来たんですけど……今大丈夫ですか?」
「ええ、ちょうど暇していたところだから。むしろ話し相手が出来て嬉しいくらいね」
椅子に座るよう促されてパイプ椅子に腰かける。ホワイトデーのお返しにクッキーを渡したらすぐにでも帰ろうかなと思っていたのだが、生徒会長は俺の分の紅茶まで用意してくれて湯気の立つティーカップを差し出した。
「お砂糖とミルクはお好みで。好きなように飲んで」
「ありがとうございます、これ凄く香りの良い紅茶ですね」
「あら、雛倉くんってそういうのも分かるのね。そうよ、イギリスから取り寄せてるものでね、結構良いやつなのよ」
「でも、それって高いんじゃ」
「ふふん、気にしないでいいわよ。私のおばあちゃんが海外旅行のお土産に買ってきたものだから」
「なるほど、それじゃあ頂きます」
湯気の立つティーカップを口元に運ぶ。
口に含むと香ばしい匂いが鼻を抜けていき、味はというと渋みがなくほんのりとした甘さがあり飲みやすいものだった。ホワイトデー用に作った手作りクッキーとの相性も抜群だろうなと思って、ちょうど良いタイミングなんじゃないかと俺は鞄へと手を伸ばす。
「生徒会長、これ。バレンタインのお返しです」
「あら、ちゃんと覚えていてくれたの。律儀ね、雛倉くん」
綺麗にラッピングしてある小袋を取り出して、それを生徒会長へと差し出した。彼女は嬉しそうに微笑んで受け取り、その場で中身を確認するためリボンを解く。
「クッキーね、それも手作りの。珍しいわね、お菓子を作る男子だなんて。それに凄く可愛いクッキーだしびっくりしちゃうわ」
「喜んでもらえたら嬉しいんですけど……どうでしょう?」
「それじゃあ早速一つ頂いても良いかしら?」
「もちろんです、どうぞ」
生徒会長は丸い形のクッキーを袋から出して一口かじる。サクッといい音が鳴り響いた。
彼女は咀噛しながら目を瞑り、ゆっくりと味わいながら喉へと通す。
「うん、美味しい。さくさくしてて甘みもちょうど良いわ、紅茶にとっても合いそう。ありがとうね、雛倉くん」
「いえ、こちらこそ。生徒会長の作ってくれたチョコレートも凄く美味しかったです」
「来年はもっと張り切るわね、こんなに美味しいクッキーを返してくれるんだもの。期待していて」
「はい、楽しみにしてます」
それから他愛もない話を少しだけ交わし、俺は生徒会室を後にした。廊下を歩きながらクッキーの入った小袋を眺める。まず一つ渡す事は出来た。次はユキと秋奈の分。彼女達も喜んでくれる事を祈りつつ、一旦教室の方へと戻る事にした。




