置いていかないで
プルルルル、と中から着信音。
「あらあら、朝からどちら様ですか」
慌ててマディーが中に入って行くのを見送り、レミは前方の池をぼんやり見つめる。
(昨日は道に迷うわ、よく分からない男の子に会うわ、まぁ?助けてもらったから感謝はしてるんだけど。でも、急にいなくなったわよね。あの後人形に脅されるわなんやら...ってあれ全部現実なのよね...)
「レミ、ごめんなさい。ちょっと仕事で街にでないと行けなくなったわ。もしかしたら戻りがちょっと遅くなるかもしれないわ。今日街のこととか案内しようと思ってたのに」
「全然大丈夫!おばさんはいつも通りに生活して空き時間に色んなこと教えてよ!それに宿題もあるし今日はそれをしようかな」
申し訳なさそうに謝るマディーに、慌ててレミは返す。そう?と言うようにマディーがこちらを見るから、そうそう!とレミは全力で首を縦に振った。
「ごめんね...。晩御飯には帰るように頑張るから!お昼は冷蔵庫の中のもの適当に食べておいて!」
作業箱や制作中のドールやらをカバンに詰め込むとマディーは慌ててロッジを出ていった。
「さて、本当はここで1人にはなりたくないんだけど...。」
パシャリ、鯉がはねた。