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マディードール
「....っは...ぁ」
「そんなに怖がらなくてもよろしくてよ」
コロコロと鈴のような美しい声の持ち主がレミに話しかける。同時にれみはぶわっと冷や汗が全身から吹き出るのを感じた。
「私たちはマディードール。人形作家マディー・ナトリアーナが作った人形よ」
「にん、ぎょう...?」
「そうよ。この体、瞳、衣装、何から何までぜーんぶマディーが作ったもの」
声の主は棚の中でも特別なあしらいが施してある位置に座る黒い衣装に、ハーフアップにまとめた髪を細やかなレースの施してある大きな黒いリボンで止めたドールである。愛らしい体躯に愛らしい容貌だが、話す雰囲気のせいか大人びてみえる。
「自己紹介が遅れたわね。私はNo.3。こう見えてもここの人形の中では古株なのよ」
ゆるりと腕をあげ 、クスリと笑う口元を手で隠すその一連の動作はレミよりも年上のように思わせる。
「さぁて、あなたは誰なのかしら?」
再びその双眸がじっとレミを見つめた。