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ようこそマディーの館へ
手を引かれおそるおそる中へ入る。
さすが作家というべきか、中は作品であふれていた。
棚にぎっしり並べられた大小さまざまな美しい人形たち。陶器製のつるりとした美しい肌に豪華なゴシック調の衣装をまとい、双眸には煌めくガラスの瞳が埋め込まれている。
暗闇の中でピクリとも動かないのに気配を感じるのは気のせいか、ただ動いていないように見せているだけなのではと思ってしまうほど人形たちはリアルだ。
美しくも恐ろしい。
「ねぇジョージ、この人形って...」
人形に怖くなってジョージを振り向くも、ジョージはそこにはいなかった。
「ジョージどこなの?!」
びゅぅっといきなり突風が吹き、扉が大きな音を立てて閉じられた。
クスクス、クスクス。
後ろから忍び笑いが聞こえてくる。
コロコロと高い声から柔らかいベルベットのような、けれどどちらも嫌味なほど上品で冷たい笑い声。
(ジョージじゃ、ない)
はく、と唇をふるわせながらレミは後ろを振り向いた。
「「「「ようこそ、マディーの館へ」」」」
焦点の合わない双眸が、しかしニタリと感情を乗せてレミを見つめていた。