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これは人形ですか?  作者: caizia
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マディードールの真実

重い空気が流れる。浩宇の話はどのシーンも全てが衝撃的だった。人身売買、監禁、殺人。これまで無縁だった世界にいつの間にか足を踏み入れていたレミはすでに頭が混乱していた。


「今日会った黒蘭总が、殺人・・・?それ以前に人身売買?え、どういうこと?」

「全て真実だ。そしてマディー先生は自分の知らないところでこの事件に巻き込まれているんだ。今、旦那様の遺骨は黒蘭様の、李家本家のお屋敷にある。僕はそれを取り返したい。そのために、事情を知っているレミに協力してもらいたいんだ」

「待って!・・・少し頭の中を整理したいの」


どの情報も内容が濃く、頭がおいつかないのも当然だった。理解を示すようにNo.10が


「当り前よ、あまりにも情報が多すぎるわ。それに私たちにとってもとても重要な話が聞けた」


碧の話は本当だった。マディードールには人骨が入っている。それも作者の知らないところで。その事実だけで人形がしゃべるよりも、犯人の分かる家族間の殺人よりも重大事件だ。


「あなたたちドールは、もとは人間だったってこと?」

「浩宇の話を聞く限りその可能性が高いわ。

大きく違うのは生前の記憶がないことね。浩宇は生前の記憶を事細かく覚えているけど、私をはじめここのドールにはその記憶が全くない。だから私たちにとってはこのドールの生がすべてなの。それが、人間のときがあったですって?信じられない」

「生まれた瞬間の記憶なんて、人間だったら覚えてないわ。目が覚めたらドールだった。それ以前の記憶は覚えていない。まるで事故のあとの記憶喪失ね」

「こんな大事な話、私だけにとどめておけないわ。お姉さまに伝えない

「聞いていたから結構よ」


いつからいたのか、ドアのすぐそばにNo.3が立っていた。


「とても興味深い話だわ。これまで姉妹が生まれて、キティとパピ達を見てきた中で、私たちはマディードールという特別な器の中に入った魂や精神、意識のようなものなのではないかと感じていたわ。そしてあなたの話を聞いて確信した。


ただ私たちと浩宇、そしてキティとパピでは明らかに違いがある。その違いを魂を基準に考えるとしたら、『その完成度』かしら。


ここにいる私たちにはマディードールになる前までの記憶が全くない。レミが言った通り記憶喪失というのがふさわしいわ。でも浩宇には記憶がある。キティとパピに至っては記憶以前に自我がないように見えるけど。この違いがどこから来るものかが、私たちの出自につながる鍵になるはずよ。


目覚めた場所?それとも製造過程?なにかあるはずよ」


次々と論理を展開するNo.3の話を聞きながら、レミは浩宇の話を思い返していた。浩宇は、器には自分の骨が入っていると言っていた。そしてNo.3は、器に入るのは魂だと言っていた。はっと閃いて思わずNo.3を見ると、彼女も気づいたようにレミを見ていた。


「もしかすると、意識の完成度は生前の器と魂の一致しているかどうかによるのかも・・・」

「どういうこと?」

「つまり、浩宇に生前の記憶があるのは魂と器が一致しているからじゃないかっていうこと。No.3、もしかしたらあなたを含めたここのマディードールを作るときに使われた材料は、つまり骨は、誰のものかわからないんじゃないの?」

「そんなの、あたりまえでしょ。マディードールの材料は全て業者を通しておろされるのよ。マディーがそもそも材料に人骨が使われているのを知らないのに、だれの骨が入っているかなんて私たちにわかるわけないわ。


ただ一つ確かなのはここのナンバー持ちのドールは、その度ごとに新しくおろされた材料からできたドールなの。つまり、もし業者が卸す土が毎回一人分の人骨しか含んでないとしたら、私たちの器はその人一人の人骨のみで形成されている混じり気のない器だということ。


これに対してキティとパピは、私たちの余った材料を混ぜて作ったものなの。つまり彼らの器は複数の人骨が混ざっているっていうこと。


これを踏まえて考えると、骨は生前の記憶をもつ記憶(メモリー)の役割を果たしているのね。でもそのメモリーは器と魂が一致しないと記憶の役割を果たさないっていうことかしら」



一歩真実へと近づいたことに喜びを隠せないNo.3は、合点がいったというようにあくまに冷静に頷いたが声に興奮の色が隠しきれていなかった。しかし、No.10はNo.3の話に怯えているようだ。


「お姉さまが言ったことは理解できたわ。でも、裏を返せば私たちは墓荒らしの産物ってことよね。だってお姉さまの話だと、私たちはわざわざ一人分の骨から材料を作っているのよ。材料の土が集団墓地だったとかそういう可能性はないっていうことでしょ?」

「そうとも言えるわね。いつの、どこの誰かの骨も分からない。けどこの器の本来の持ち主は死後に墓を荒らされたことは確かね」


No.3はその恐ろしい事実を冷静にとらえているようだ。もしかすると客観的にとらえることで衝撃を和らげているのかもしれない。

No.3の言葉を補うように浩宇が口を開いた。


「ショックかもしれないけど、人身売買も殺人も墓荒らしも事実だ。もっとひどいことが君たちの知らない場所で起こっている。僕はこうした社会の裏側からやってきたんだ」

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