浩宇の出自
2階に上がると灯の漏れる部屋を見つけた。なにやら話し声もきこえてくる。半ば引き寄せられるように浩宇はその部屋の扉を開いた。
扉を開くと、驚いた顔でこちらを見つめるレミがいた。
「あ、ごめん。ノックもせずに」
「全然!No.3との話はもういいの?」
「うん、君と話がしたくて」
立った浩宇は、等身大だけあってレミの伸長と近い。ドールだということはわかっていても誰か知らない人が部屋にいるような、変な感じだ。
「さっき外で話し声が聞こえたけど」
「あぁ、それはね。No.10、出ておいで。大丈夫叔母さんじゃなかったわ」
レミの声で、No.10がベッドの下からひょっこり顔をのぞかせた。
「彼女は、ドール?」
「そう、あなたと同じ」
「あなたが浩宇ね。こうして話せることができるようになってうれしいわ。これからよろしくね」
「あ、うん。こちらこそ」
すっと差し出された小さな手にどう返すべきか悩みながらも浩宇は人差し指を差し出した。
「実は状況が把握しきれていなくてレミに教えてもらいたくて。その、僕が黒蘭様の元に返されるっていう話も含めて」
「うん、私たちもあなたに聞きたいことがたくさんあるの。そうね、まずはどこから話そうかしら。
私もあまり詳しくは知らないけど、叔母さんからはあなたは数年前に李商事のオーナーとあなたのモデルとなった浩宇が、このアトリエで製作依頼されて作られたドールだって聞いてるわ。モデルの方の浩宇は余命わずかで遺していくオーナーが寂しくないようにって言っていたらしいわ。あなたが完成して李商事に引き取られてしばらく後、そのオーナーが亡くなったの。オーナーの奥様はあなたが呪い殺したって言って、気味悪がって叔母さんにあなたを引き取るように言ったの。そうしてここに戻ってきたのがつい先日のこと。
今日、李商事のオフィスで黒蘭总とお会いしたわ。私が彼と話した時間はあまりなかったから詳しくは知らないけど、叔母さんの話によると黒蘭总があなたを引き取りたいって申し出たそうよ。
それと、今日黒蘭总の息子2人にもあったんだけど、お兄さんの方はあなたにそっくりだったわ。
私が知っていることはそれくらいかしら。って浩宇、大丈夫?」
一通り話終えて浩宇をちらと見ると、再び倒れてしまいそうなほど表情が暗かった。
「あの人は、一体どうして…」
浩宇はひどく苦し気な声で、絞り出すようにうめいた。
「話せるようなら事情を聞かせてほしんだけど、大丈夫かしら」
「話したら、協力してくれる?」
「私たちにできる範囲で全力を尽くすわ」
力強く言ったレミに安心を覚えたように浩宇は表情をやわらげ、少し間をおいて口を開いた。しかし、開口一番の言葉はレミを含めドールにとって衝撃的なものだった。
「僕はドールだけど、浩宇そのものだ。
あの日、このアトリエを白蘭様と尋ねた浩宇自身なんだ。僕にはドールになる前の記憶がある」




