昼下がりの空の下で
レミはフォークとナイフを手に、テーブルに並ぶ料理の数々に固まった。
三段に構えられたトレーには、その一番下からサンドイッチ、スコーン、デザートとが並べられ、一番下の段から順に食べていくことがアフタヌーンティのマナーである、というのはイギリス出身の母から、いつか聞いた話である。レミはそれを聞いた時、「そうなんだ」と受け止めた切り、それがアフタヌーンティの作法の全てだと解釈してしまっていた。
しかし、茶道が和菓子をいただいた後にお抹茶をごっくん飲むだけですむわけがないように、物事には大まかな流れに細かなルールが付随するのが一般だ。
意気揚々と取り上げたフォークとナイフの使い道がわからず、レミは料理を前に手を出せずにいた。石のように動けずにいるレミに、苦笑いをしてマディーが「真似してみて」と、フォークとナイフを器用に使い、トレーからサンドイッチを手前の小皿に移す。コンビニで売っているような食パンを斜めカットしたような三角サンドイッチでもない、ともすれば一口で食べきれてしまえそうなサンドイッチをこれまたナイフで半分に切り、フォークにさして口に運ぶ。
「サンドイッチって手で食べるものじゃないの?」
眉根を寄せて、「不思議」を全面に出すレミにマディーは苦笑した。
「手で食べるのはスコーンみたなパンだけ。あとはお上品に食べるのがイギリス流よ」
いい機会だからアフタヌーンティの作法覚えていきなさい、とマディーは英国風をここぞとばかりに吹かせる。マディーに倣ってレミもサンドイッチを小皿に移し、小さなサンドイッチをさらに小さく切り分け口に運んだ。
挟んであるのはトマトとキュウリのお野菜。このほかに卵のサンドイッチや、イチゴやキウイをホイップクリームと一緒に挟んだフルーツサンドもある。
なれないフォークとナイフの使い方に悪戦苦闘しながらも1段目を食べ終え2段目のスコーンに移る。まだほんのり温かく、1口口に運ぶとバター香りが口に広がった。
「本場のお味はいかが?」
「美味しい!!ジャムつけなくても十分よ」
「アハハ、食べすぎたら太るわよ」
確かに、口に広がる程なのだ、バターの量はそれなりだろうとレミは途端にペースを落としてひとくちを味わうように咀嚼した。
「レミに付き合うって言った手前申し訳ないんだけどこの後近くの病院に寄ってもいいかしら」
いよいよデザートも終盤と言った所でマディーが困った顔で言ってきた。レミは「いいけど」と、間を開けることなく返す。
「どこか悪いの?」
「ううん。そういう訳じゃなくて、その病院とは以前から懇意にしていて、私の作品を飾ってくれるお客さんでもあるのよ」




