中国からやってきた客人 弐
「早く会いたくて、連絡をもらってすぐ朝早くにとんできました。あぁ...彼ですね。本当にきれいに仕上げてくれた。感謝しきれません。お代は先ほど振り込みましたのでご確認ください。足りなければすぐに振り込みます」
興奮を隠せない様子でオーナーはドールに触れると、パーツを確かめるように肌に手を滑らせた。しばらくドールを眺めた後「寒いだろう、服を持ってきたんだ」と、思い出したように持ってきた服を着せた。それはあの絵の中の服と全く一緒の服だったという。
「この服は浩宇の一番お気に入りの服でしてね、ドールの浩宇の初めての服はこれにしてくれと本人にたのまれまして」
丁寧にドールに服を着せていく。服を着ると球関節が隠れ、まるで一人の人間が椅子で静かに眠っているようだった。
「飛行機の貨物質で傷がつかないように、梱包しないといけませんね。運び出せるように用意しますので少しお時間いただけますか」
「お気遣いありがとうございます。しかし自家用機できておりますので大丈夫です」
ドールを横抱きに抱え、「これで失礼します」とオーナーはアトリエを後にしたという。それから連絡が来ることはなく、今日こうして連絡が入るまでその後二人がどうしていたかマディーは全く知らなかったそうだ。
「まさか、オーナーも早くに亡くなってしまうとは思わなかったわ。心臓発作で亡くなったと言われたけど、実際はどうかしらね」
「叔母さんは違うと思うの?」
「さぁ、もともと不思議な人だったし、何か隠していることがあるのかもと思って。それに、人形が生きているって大真面目に言ってくるような家だもの。何かあるのかもって思っても不思議じゃないじゃない?」
「はは・・・そうかもね・・・」
実際生きてるんだとは言い出せず、レミは不自然な笑顔でごまかした。
「でも今回はアトリエで話さなかったのね」
「ああ、それはね。それからしばらくして作品たちが公で評価されるようになってインタビューとかの仕事を持ちかけられるようになったんだけど、私生活まで晒すのは嫌だったから住所がわからないように仕事の話は外でするようにしたからよ。あの時のオーナーは、いつも私と依頼主の仲介をしてくれる業者の知り合いらしくて、それで住所を知ったそうよ」
『仲介業者』とは長い付き合いのようで、何がきっかけだったのか叔母がまだ学生の頃に趣味で作っていたドールを、これは売れるから是非自分に売らせてほしいと言われ、そこからの付き合いだという。何度か販売を任せていくうちに正式にうちの作家になってほしいと言われ、現在は美術商として付き合っているのだとか。
「その仲介業者が私に仕事を持ってきてくれるのよ。材料も支給してくれるから本当に助かるのよね」
「材料って自分で買い付けるものなんじゃないの?」
「さぁ、私はいままでそうだったから普通がわからないのよね。用意してくれる分に困ることはないし、いいんだけどね」




