中国からやってきた客人
袋から取り出されたドールはレミにとって記憶に新しい顔していた。なぜなら浩宇という名前のそのドールは、今朝方ジョージが見せてくれたあの絵の少年そのものだったからだ。
「浩宇って、いうの?その人形」
「そうよ、あんまり詳しいことは言えないけれど、7年くらいまえに中国の李商事のオーナーが等身大サイズで作ってほしいって依頼してきたのよ」
依頼されたときはその内容に戸惑ったらしい。若干30代にして、中国を代表する大企業のオーナーが一人の青年を連れてアトリエを訪ねてきて、「この子とそっくりのドールを作ってほしい」と頭を下げたのだ。詳しく話を聞くと、青年は病に侵されて残された時間があまりないらしい。二人がどういう関係かは察するにおいておいて、青年いわく「この人を遺していくのは忍びない。たとえ体が朽ちてもこの人の隣にいたい」とのこと。
「その話を聞いて昔のことを思い出してね、依頼を受けることにしたのよ」
「あそこにかかっている絵はその時に描いたものなのね」
「そうそう。等身大のドールを作るのは初めてだったし、彼を理解するためにも描いたのよ。とはいっても彼が今の体は病気のせいで見た目が悪いからって少し前の時のきれいな感じで描いてほしいっていわれてね、まだ元気な時の彼をイメージして描いたの」
出来上がった絵を見て二人は大層満足し、この絵の通りのドールを作ってくれと頼んだ。
「後日こちらで用意した材料を送るからそれを使って作ってほしい。作り始めるのはそれからで構わない」
ずいぶんと奇妙な注文だと思うものの、公然にはできないようなこともあるのだろうとその時深くは聞かなかったという。
材料が届いたのはそれから季節が2つ廻ったころ。丁寧に梱包されて届けられた。事前に何が必要かを聞かれていたため、材料はどれも不足なく揃っていた。
「どれもこれも一級品でね、多分あれはオーナーがドールのためにあつらえたものだわ。彼の為に一から自分で集めたんでしょうね。時間もかかるはずだわ」
制作過程は2年。試行錯誤を繰り返し、ドールの浩宇が出来上がった。早速連絡を入れると、翌日すぐに依頼主はやってきた。オーナーは少しやつれたような顔をしていたという。




