ドールの出戻り
「ここが私の故郷の日本、で、いま私たちがいるのがここ、イギリスっていう国なのよ」
「ふぅん、あなたの故郷も私の住んでる国もずいぶん小さいのね。もっと大きければいいのに。ほらこことか!あなたと国のとなり!大きいわ!」
「ここは中国っていう国よ。文化的にも日本と近くてね、日本の言語は中国の言語がもとになってできたのよ。ちなみに、ここら一帯の国々をアジアっていうの」
「アジア、なんだかいい響きね!私たちのところはそういうのないの?」
「イギリスは―――「わ、私も話にいれてよぉ!」
話に花を咲かせているうちにかなり時間が進んでいた。NO.10は好奇心旺盛で、何か話題になるようなものをとキャリーケースの中身をあさっていると、課題資料として持ってきた地図帳に興味を示し、手当たり次第にページを開いてはこれはなんだ、あれはなんだと矢継ぎ早に聞いてきた。生徒がみんなNO.10のようだったなら学校の先生もさぞ教えがいがあっただろう。レミも教えることを楽しんだ。さすがに「このぐにゃぐにゃした線は何かの記号なの?」と、授業中に眠りこけたときのだろう、蛍光ペンの暴れた跡について真剣な面持ちで問われたときは思わず言葉に詰まったが。
車のエンジン音がして、マディーが帰ってきたのだと気づく。マディーが中に入ってくるまでに彼女たちをもとの場所に帰さなければとひとり焦っていると、二人は「またいっぱいお話してね」と、そそくさと部屋を出ていった。おそらく、これまでもマディーが留守にしている間自由に過ごし、帰ってきたときは気づかれないように戻っていたのだろう。レミは手をふって二人を送り出した。
「おかえりなさい!早かったね」
「そう?でも今日は大変だったわ。ずいぶん昔に送り出したドールをね、引き取ってほしいって言われたのよ」
そういえばやたら大きな袋があるなと思えば、中にその人形が入っているらしい。
もともとの持ち主が亡くなり、人形をどうするかとなったところで捨てるには忍びなく、なにより持ち主が大層大切にしていたそうで、捨てたら呪われそうだと恐れたところ、作った本人に返せばいいのではということになったそうだ。
「しかもいわくつきなんですって。そのご主人がドールと二人きりでいる時、部屋の中で話し声がしてたっていうのよ。それを何人もの人が聞いてるらしいのよ」
「人形が生きてるってこと?」
「らしいわよ。人形ってそういう系の話多いわよね」
「はは、そうだよね・・・」
「まぁとりあえず、おかえりなさい浩宇」




