ここはイギリスですもの
「まぁ、実際に私たちも自分が人形たるゆえんっていうのはよくわかってないのよ。気が付いたらこのツルツルの肌にきれいな衣装を身にまとって棚に座っていたっていうのが一番初めの記憶。
私は妹や弟たちの製造過程は見てきたけれど、マディーがどうして人形を作っているかは知らないの」
「みんなあなたのように『生きてる』んですか?」
「そうとも言い切れないわ。例えばあの子たち」
御覧なさいと指された方向には棚に並べられているドールとは異なりシンプルなデザインの男と女のドールが数体並べられている。棚のドールとは違い、彼らからは気配を感じない。レミが普段目にする「人形」である。
「あれもマディーが作ったドールだけど彼らは私たちとは違う。もちろん量産モデルだから見た目が違うのは当然として。あのドールたちはいずれ販売されるものなんだけど、このアトリエには何体か販売されずに残っている量産型のドールがいてね。ふぅ、ちょっと疲れたわ。なにか軟らかーいクッションでもほしいのだけれど・・・」
おもむろにNo.3がそういうと、棚の陰から量産型モデルの男型のドールがクッションを大切そうに抱えて出てきた。棚をよじ登り、他のドールの邪魔にならないようにNo.3の前まで行くと、恭しくクッションを差し出す。「ありがとう」とNo.3はうけとるものの態度はそれが当然と言わんばかりである。
「しばらくすると何かの魂が人形に入ってくるのよ。でもきっと器への定着が不完全なのね、しゃべることはできず、ただ私たちに従う。感情もあるのかないのか分からない。まぁ、こっちとしては妹たちのケンカの後始末をしてくれるから助かってはいるんだけど」
「もう戻っていいわよ」というと彼は踵をかえしてもと来た道を戻っていく。棚を降りると、棚の脇でもたれかかるようにして動きを停止した。機械的なその動作は目の前のドールたちはまた違う恐ろしさを感じさせる。
「ちなみに女の子がキティで男の子はパピよ」とNo.3は付け加える。
「魂とか、器とか、まるで・・・」
「魔術みたい?だってここはイギリスですもの。そういうのがあっても不思議じゃないわぁ。もしかするとあなたも3週間のうちに人形の中に閉じ込められちゃったりして・・・大丈夫!私たちの妹になったらたっぷり可愛がってあげるからぁ」
ひたりと足元に何かが触れる。ハッと足元をみるといつの間にか数体のキティとパピに囲まれ、動きを封じられていた。
「女の子だもの、キティがいいわよねぇ」
じりじりと上ってくるドール。足元を固定され、手首もつかまれ拘束される。背中に回ったドールの腕が首元に触れたあたりで、レミは意識をとばした。




