ちょっとうるさいかしら?
「こわぁい。髪の毛引き抜くなんて、人のすること・・・あ、間違えた。人形のすることじゃないわぁ」
「うるさい!No.8、だいたいあんたが私を棚から突き落とすからこんなことになったんでしょ!先にあんたのそのうざったい2つのコロネからちょん切ってやろうかしらっ?!」
先ほどNo.4がいっていた「ふっかけた」とはこのことか。レミを驚かそうとNo,8がNo.6を棚から突き落としたらしい。してやったりと満足気な顔のNo.8は、意地の悪い顔で上からNo.6を見下ろす。それがまたNo.6の癪に障ったようだ。
「ペンキ缶もあんたの仕業でしょ!」
「やっていないことまで攻められる覚えはないわぁ。まぁ私なら?使いたての黒のペンキ缶を出すけどぉ」
「このっ!」とNo.6がいよいよ鋏をつかみ、応戦しようとNo.8がGペンを手につかもうしとたところで「静かに」とNo.4がいさめた。とたんにピタッと動きを止める二人。
「もう十分に楽しませてもらったわ。これ以上はちょっとうるさいかしら?ねぇNo.4?」
「はい、お姉さま。あなたたち手に持っているものをおいて戻りなさい」
腹の虫は収まらないものの、二人とも苦々しい顔のまま棚に戻っていく。それを満足げに見るNo.3。どうやら発言力のパワーは圧倒的にNo.3にあるようだ。
「妹たちが騒がしくしてごめんないさいねぇ。ちょっとおいたが過ぎたみたい」
コロコロと鈴のような声で笑い、さも些末なことような体で謝罪を口にするものの、彼女の発するオーラは「何も問題ないわよね?」と脅迫する勢いだ。「あ、いえ。大丈夫です(というかそれしかいえない)」とレミは今にも消えそうな声で答えた。
「さぁて、何から話したものか。あっ!そうそう。そういえばあなたが誰なのかまだ聞いてなかったわね。あなたは、だぁれ?」
「は、早見レミ、13歳。マディーおばさんの姪で、夏休みの3週間こっちに滞在することになりました」
「マディーが電話でレミレミいってたけど、あなたのことだったのねぇ。ふぅん」
興味深げにじっとNo.3がレミを観察する。まるで新しいものを見るかのような目は普段人が人形を眺めるときの目で、レミは自分がまるで人形にでもなったかのような気分になった。
「あの、ところであなたたちは人形なのに、どうして動いたり話したりできるんですか?」
視線に耐えかねたレミがおずおずと問いかける。話しかけらたことにきょとんとするNo.3。「何を言っているのかしら、この子は」とも言いたげである。
「あぁ、そうね。普通はしゃべらないのよね。私たちだってマディーがいる間はしゃべらないもの。というよりしゃべらないようにしているというべきかしら?
私たちみたいな、しゃべるし動くし知能だってあるの。こういうの『生きてる』っていうのかしら?」
まぁ心臓はないし、息がなくたって動くことは可能なんだけど、と後付けでさらりとレミの「生きる」という定義を壊していく。映画で見るような、おとぎ話で聞くような、そんな話が現実としてレミの目の前で起こっている。




