昨日はよく眠れたかしら
それからしばらくして雨が降り出した。降り出してすぐその勢いは強まり、視界を遮る勢いだ。分厚い雨雲に覆われたせいで、中は夜のように暗い。電気を付けなければものにぶつかってしまいそうだ、とスイッチを探す。かくして、スイッチは見つかった。しかし、場所に問題がある。
(あの棚の前通らなきゃいけないの?)
スイッチを入れるには人形の棚の前を通らなければならない。人形がしゃべりだしませんように!と祈りながらそろりそろりと足を進め、棚を通り越してスイッチまでたどり着く。
(やっぱり昨日のあれは幻ね)
ホッと胸をなでおろすもつかの間、ゴトンッ!と背後からものが落ちる音が聞こえた。背後を振り返ると床に一体のドールが倒れていた。叔母の作品だ、傷がついていたらいけないとあわてて拾い上げる。
ツインテールを大ぶりの花飾りのついたリボンでとめ、アーモンド型の瞳にほっそりとした眉はどこか気の強さを感じさせるドールだ。
ひっくりかえしたり、さわったりしても特にそれらしい外傷はないようだ。
「よかった・・・傷はないみたいって、いたぁ!」
突然、グッと前髪をつかまれ、引き抜かんばかりの勢いて引っ張られる。手の中のドールが離せ、とばかりに暴れだしたのだ。
「いたいいたいいたい!いたいぃ・・・」
髪を引っ張るドールの指を一本ずつ開いて前髪から引きな離す。外してもなお再びひっつかもうとする手を振り払い、ドールを遠ざけた。しかしドールはガタガタガタガタッ!と手の中で暴れ続け、うっかり手を緩めたら再び襲いかからんばかりの勢いである。
(どうしよう・・・何か箱に閉じ込めた方がいいのかな)
きょろきょろとあたりを見回すがいい箱が見つからない。と、その時スっとこちらにちょうどドールをすっぽり覆えそうなペンキ缶が差し出されるように出てきた。いきなり缶がどうしてでてきたとかそういうことはすべておいておいて、缶の中にドールを押し込むと机に置き、上から重しになりそうな分厚い本を積み重ねた。
これでしばらくは安心かと胸をなでおろすもつかの間、クスリとふたたび昨日の忍び笑いが聞こえてきた。
「昨日はよく眠れたかしらぁ?」
ふっと目線を上げると、NO.3がこちらをじっと見ていた。




