約束の日まで
「愛人ってこと?」
「世間でうわされるようなことには必ずその元があるんだよ」
ジョージはにこりとつかめない笑顔をこちらに向けて「次に行こうか」と隣の本棚にうつった。本棚には創作活動における資料がぎっしりと詰め込まれており、その中に数冊うもれるように絵本がある。ジョージがそれを引っ張りだし、ほこりを払う。『約束の日まで』と、金字で書かれたタイトルにベンチに満点の星空の下、満開の花の咲く野原で寄り添うように座る男の子と女の子が表紙に描かれていた。
「この絵本はマディーが自分用に描いたもので、市販はされていないんだ」
「どんな話なの?」
「この表紙の女の子は魔法使いの卵でね、いろんなことができるんだ。冬の寒さの終わらない村に春をもたらしたり、枯れ果てた山のに緑をもたらしたり。引っ込み思案で、自分に自信がない小さな魔女だけど心根が優しくて、本人は気づかないけど周りに愛された魔女なんだ。ある日魔女は男の子に出会う。その男の子はとても病弱で、いつも病院にいるんだ。出会った二人は友達になる。それも大の親友になるんだ。でも男の子は不治の病に侵されていて残された時間はあまりなかった。男の子は最期のとき、魔女にどんな形でもいいからもっとずっと一緒にいたいと頼んだ。魔女はまだ力が十分じゃないから、今は無理だけどかならず叶えると約束し、彼を看取った。それから月日を経て、魔女はついに約束を叶える。満点の星空の下、花の咲き乱れる野原で再開を果たした二人はその後、離れることなくずっと共に仲良く過ごす、っていう話」
「こっちはかなりロマンチックね」
「この話ももとはリクエストされて作った話なんだよ。っと今日はもう時間だ。僕はもう行かないと」
本棚に絵本を戻すと、思い出したようにジョージは言った。いつの間にか時間は過ぎてお昼ごろになっていた。
「用事でもあるの?」
「ちょっと人に合う約束があるんだ。また来るよ。あと、今日は午後から天気が悪くなるらしいから森には入らない方がいいよ」
「じゃぁね」と、ジョージは玄関を出て森を出ていく。空はいつの間には灰色の雲で覆われ、今にも雨がふりだしそうだった。




