教えてあげよう
「遊ぶって、私と?」
「他に誰がいるの?」
首を傾げ、曇りなき眼でレミを見つめる目は先ほどのわびしさ漂う彼とは一転してあどけなさを発している。
「いいわよ。何して遊ぶ?」
「探検、とか?」
「このアトリエを?怒られないかしら」
「でも、気になるでしょ?世界的ドール作家マディー・ナトリアーナのアトリエ!マディーはインタビューとかが嫌いでね、その私生活は一切の謎に包まれている。つまり!マディーの私生活をのぞけるのは今しかないってわけだ!」
「別に、叔母さんにあとで聞けばいいし、あと3週間はこっちにいる予定だからその中で分かると思うわ」
「そんなこと言わずにさ、ね!」
半ばむりやりレミの手を引いてジョージは中へと入っていった。
「マディーがマルチ作家なのは知ってる?」
「そうなの?」
「絵本に小説、絵画に陶芸。人形より作品数は少ないけどどれも高い評価を得ているんだ。例えば、これとか」
壁に立てかけてある大きなキャンバス。その上に欠けられていた埃除けの白布をめくると、そこには美しいアジアの少年の絵があった。
眉の少し下で水平に正しく切られた黒い髪は、きっとサラサラとした手触りだろうことがうかがえる。すらりとし、線の細い体は今にも消えてしまいそうな儚さがある。サイドテーブルに片手を軽く載せ、こちらを見る少年。中国の少年だろうか。白を基調としたチャイナ服には、青い紐で細やかな蓮と蝶の刺繍が入っている。シンプルだが高級そうに見えるのは細部へのこだわりだろう。
しかしそれ以前に、だ。
「なんだか艶めかしいわね」
ほっそりとした一重に、深い黒瞳。全体的にあせた色を用いているのに、形の良い唇は赤い紅をさし、少し口を開けている。ほっそりとした足の膝は、少し骨が出ているものの決して貧相とは感じさせない。
「これは中国のとある豪商がマディーに頼んで書いたものなんだよ」




