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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

SSSランクパーティを追放された俺は、故郷へ戻ってスローライフをしようと思って旅に出ようとした。

作者: コロコロ

遂に私も追放系に手ぇ出したったぞ!!

「単刀直入に言う。アルバート、いますぐこのパーティから出て行ってくれ」


「オッケーお疲れ。じゃ」


 SSSランク冒険者パーティ『ブレイブソード』のリーダー、リィドから追放宣言されてしまった俺ことアルバートは、古巣"だった"冒険者ギルドを離れ、一人故郷を「待てコラ」え?


「え? じゃねぇよお前あっさりしすぎだろ」


「何だよ、お前が出てけって言うから出てくのに何で止めるよ?」


「うん、追放すんのは間違ってないんだ。間違ってないんだけど潔すぎんだろお前。しかもなんかお前モノローグで追放されてからの動き早すぎてスゲーびっくりした」


「そりゃオメェ、仕事無くしたんだから今後の生活について考えねぇとダメだろ」


「そーゆーこと言ってんじゃねぇよ。なんで追放にノリノリなんだよおかしいだろ」


「いやね、お隣のロビンソン君が役立たずだって言われて在籍してたパーティ追放されたら田舎で一発当てて金持ちになっちゃったらしくって」


「脱サラして成功したみてーに言ってんじゃねぇこのバカタレ。座れ。とにかく、座れ」


 何だこいつ。そんな感情を抱いたまま俺は言われた通りに元の椅子に座り直した。


「今『何だこいつ』って思っただろ」


「スゲーなお前。エスパー?」


「顔にモロに出てんだよバカヤロウ。あと何だこいつは僕の台詞だ」


 失礼な。


「で、何? 俺が追放されないと話進まないんだけど」


「なんで追放される側が仕切っとんねん。話すから黙って聞いてろい」


「うぃ」


「……僕たちのパーティは世界でも有数なSSSランクに属していることは周知の事実だ。剣士である僕と武闘家のシャルル、後衛には魔導士のリザと回復術師のエイナ、そして銃使いのお前。この5人で最強のパーティ『ブレイブソード』は構成されている。お陰で僕たちパーティは、国王直々に下されるクエストを請け負うこともできるようになった。ここまではいいか?」


「ああ。『何今更説明してんのこいつ? バカなの? アホなの? 死ぬの?』なんて思わずしっかり聞いてたぞ」


「そうか、ここが人目につかない場所じゃなくギルドの酒場でよかったなアルバート」


 そう言うリィドは腰の剣の柄を握り締めていた。


「……話を戻そう。で、最近僕たちはある問題に直面している。資金問題だ」


「資金問題? 何でだよ? 依頼報酬だってたんまりもらってただろ?」


「……そこでお前だ、アルバート。お前が諸悪の根源なんだよ」


「なるほど、俺の銃は銃弾に金がかかる上に消費も激しい。その銃弾の資金はパーティから出てるから必然と金の減りが早い。さらに言うなら、俺の銃は魔力付与がされてない上に物理耐性のあるモンスターには効果が薄いし、魔導士のリザの魔法ならば破壊力も攻撃範囲も上で殲滅力も高い。金食い虫な上に役立たずとくればこれはもう追放されるしかないってわけだ」


「お前さぁ! それさぁ! 僕のさぁ! 台詞なのにさぁ! ぜーんぶ言いやがってさぁ!!」


 なんだよぅ、人がせーっかく手間省かせてやったってのに。


「というよりそこまで自覚してんのかよ!? 普通そこは『俺のお陰でお前らはSSSでいられるんだぜ?』とか自信持って言うところじゃねぇのかよ!?」


「んなわけねーじゃん事実じゃん。後ろで適当にバカスカ撃ちまくってるだけの奴がパーティの要とか夢見てんじゃねぇよ」


「お前自分のことサラッと卑下してんじゃねぇよ!? 心配せずともお前の腕は100発100中だよすごい技術持ってるよ心配すんな!!」


「え? そう? ……ありがとな」


「普通にお礼言ってんじゃねえよ! しかもなんで追放する側がされる側のフォローしてんだよバカじゃねぇの!? 後お前の台詞! それ僕の台詞だし!」


「まぁまぁ落ち着けって。ここの看板メニューほうれん草スムージー飲め、ホラ」


 ここ酒場なのにほうれん草スムージーが看板商品とかおかしくね? と昔は思ったけど今はすっかり受け入れちまったなぁ。まぁ健康にいいし事実美味いから文句ねぇけど。


「ふぅ、ふぅ……! と、ともかく、お前が追放される理由はわかったな!?」


「オッケー、わかった。元気でな」


 こうして俺は冒険者ギルドを去った。かつて苦楽を共にしてきた仲間だった連中との別れは呆気ないもので、今までの人生は何だったんだろうなぁと、俺は虚しさを覚えながら歩く。こんな思いを抱くくらいなら、いっそ冒険者なんてやめて故郷へ戻ろう。それが一番だ。故郷ならあいつらの武勇を聞くこともないかもしれないし、故郷ののんびりとした空気に触れながら生活するのも悪くないだろうな。そう思った時が吉日、俺は仲間たちが住まう王都を離れ、一路故郷を目指して旅「待て待て待て待て待て待て!!」


「んもう何だよ! 人がこれからスローライフを送って成功するための人生設計を考えてたところなのに邪魔すんじゃねぇよ!」


「ちーがーうーだーろー違うだろぉ! キレるポイント違うだろぉ! もう追放された体で進めてんじゃねぇよ!!」


「いいだろ別に! お前あれだよ? このままだと作者からヘイト稼ぐシーン入れられて後の展開で『主人公追放した自称最強パーティ冒険者(笑)ざまぁwwwww』されんだぞお前? そんな役回り請け負うことになっちまうんだぞ? 作者と読者の玩具にされんだぞ? そうなる前にこの話終わらせた方がいいじゃねぇか!!」


「メッタい話してんじゃねーよバカ! このバカ! 追放系ジャンル書いてる作家とそういう系好きな読者全員にボコボコにされるから言うなそれ以上!!」


「別に俺は怒られませーん。怒られんのはこれ書いてる作者だしー。ボッコボコのぐっちゃぐちゃにされんのも作者だしー」


「もうだーまーれー! お前黙れ! 話が脱線した上そのまま大暴走してんだよ! 障害物なぎ倒しまくってんだよ!!」


 お互い肩で息をしていたのをどうにか落ち着かせ、改めて向かい合った。


「……で。とりあえず追放される理由は伝えたけど、お前から何か言うことはあるか?」


「無いっスね」


「コンマ1秒で答えんな。仮にも3年組んできてそれはねぇだろ」


「えー? うーん……じゃ仲間に言伝を頼むかな」


「ああ、それくらいならお安い御用だ」


「流石リィド! そんじゃそこらのざまぁ要員にはできないことをしてくれる! そこに痺れる、憧れるぅ!!」


「安易なパロネタに走ってんじゃねぇよ。はよ言え。コロスぞ」


「うす」


 割と本気で殺る目をしていたので素直に頷いておいた。そして俺はパーティメンバー全員に送る言葉を考えた。


「そうだな……」


 俺は脳裏に、仲間たちの顔を思い浮かべた。


 孤高の男シャルル。世界一の武闘家を目指して旅をしていたのをリィドがスカウトしたのがキッカケでパーティに入ったんだよな。寡黙で、最初何考えてんのかわからなかったけど、誰よりも不義を嫌い、そして誰よりも真っ直ぐで、弱きを助け強きを挫くを地で行く男。


 負けず嫌いのリザ。俺たちが駆け出しだった頃からの付き合いで、プライドが高くって第一印象最悪だった女。最強の魔導士と自負してたけど、性根は優しくて、自分を強く見せるためにあえて高飛車な態度をとっていた奴。俺らの中で一番度胸があったよな。


 お淑やかなエイナ。俺たちの後ろから見守るような立場にいつもいた奴。その美しさを鼻にかけず、誰にでも慈愛の手を差し伸ばしてきた、まさに聖人。けど、その見た目と性格とは裏腹に、その体に熱い物があることを俺は知っている。


 そして、俺らのリーダー、リィド。ガキのころからの付き合いで、こいつのことは何でも知っている。だから俺は、例え追放されるとしても、最後の最後に、これだけは伝えておかなきゃいけないんだ。


 俺は意を決して、伝えたい言葉を紡いだ。


「シャルル、昨日の夜にお前が指しゃぶりながら寝言で『ママァん』って言ってたのをリィドから聞いた」


「は?」


「リザ、お前本当はゴキが苦手で『いやーーーーこっち来ないでーーーーー!!』って両手ブンブンしながら泣き喚いてたのを影でリィドがめっちゃ笑ってたぞ」


「へ?」


「エイナ、お前が本当は男でそっちの気があったとしても俺は受け入れるって、リィドが声高らかに宣言してたぜ」


「ファッ!?」


「リィド……あとは頑張れ」


「ちょ」


 俺はサムズアップして白い歯を見せながら笑顔をリィドと背後の3人に向けた。


「………リィド……貴様」


 武闘家の身軽な服に身を包んだ厳つい顔をした男、シャルルがその身から憤怒のオーラを立ち昇らせて、


「アンタ…………知っちゃいけないことを知っちゃったようね……」


 大きなとんがり帽子を被った少女、リザがこめかみに血管を浮かせたまま両手に火の玉を浮かせ、


「リィド様……あなたのことが好きだったんですよ」


 純白の天使のような装いの美しい少女の見た目をしたエイナが、その美貌に似合わない野獣の眼光をリィドに飛ばし、


「それじゃ、俺は故郷でスローライフしてきまーす! アデュー!」


 追放された俺はそんな彼らの前からウィンクしつつ走り去っていったのだった。


「………………」


「………………」


「………………」


「………………」


「…………オーケーわかった。俺がすることはたった一つ。とりあえず……」








「待てコラアルバーーーーーートーーーーーーー!!!」







 SSSランク冒険者パーティ『ブレイブソード』リーダーリィドのブチ切れた咆哮が木霊する。そして始まる、追放された者と追放した者による追走劇。それを見ていた冒険者ギルドと街の住民たちは、全員同じことを思っていた。



『まぁたやってるよあいつら』



 哀れリィド、幼い頃からの腐れ縁アルバートを今日も追放できなかった。今はとりあえずあのバカとっ捕まえて濡れ衣を晴らすため、今日も走る。


 頑張れリィド。負けるなリィド。回復術師からお尻を守れ。





一部淫夢語録があることをお詫び申し上げます。センセンシャル。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと笑ってしまいました(笑) てかこのPT追放劇割とよくやってるのか…
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