幼馴染みと詮索
キーンコーンカーンコーン。
校舎の鐘が鳴り、昼休みに入る。
「なんかやけに疲れた…」
授業中、隣の席の蓮から視線を感じ続けていた。
用事かと思って顔を向けても、机の下でスマホをいじくりはじめる始末。
なんなのかと頭を捻っていると、蓮は急に立ち上がり話しかけたきた。
「仙さんや、お昼一緒にどうですかい?」
「…え?まぁ良いけど昼飯は食堂で済ませるつもりだったからとりあえず焼きそばパンを買ってこい」
「アイアイサー!」
◇
「はい先輩、あ~ん」
蓮に連れてこられた屋上。
現在の状況は早奈が箸でつまんだウインナーを蓮に差し出している。
いつものことだ。
「なんだテメェ俺にイチャイチャを見せるためだけに呼んだのか」
「あ~ぐ…違う違う。お前にゃ聞きたい事があんだよ」
ムシャムシャとウインナーを補食する蓮はそう言ってきた。
「聞きたい事?勉強ならお前はすぐに寝るから教えな────」
「お前、なんか隠してるだろ」
「───ッ!?」
早奈が無言でスマホを取り出した。
しばらくスマホをいじっていたが、何かを見つけるとその液晶を俺に向けてくる。
そこに写っていたのは黒髪の女。
ブレてはいるものの、その背景に俺の家があることはハッキリとわかった。
蓮はパックのお茶を飲みながら刑事のごとく俺を追い詰めようとする。
「今朝、我が愛しの恋人、さながお前ん家付近でとった画像だ」
「………」
「さなによると、ここに写っている女はお前を見送った後、祈里家の家に入っていったそうじゃないか」
「その女の人の横顔はとても美しかったです」
「仙…」
「仙先輩…」
「「オメェ…」」
ヤバイ。何がとは言わないがヤバイ。
あいつらの事だから帰ってきた空良を受け入れるとは思うが、弁明するまでが問題だ!
良くて噂、悪くて帰還した事による通報!
そう考えている間にもキツイ表情で俺を見る二人は息を合わせて……!
「「彼女できた????」」
予想外の言葉であった。
「……カノジョ?この流れでなんでカノジョ?」
「いや、しかし先輩!先程も報告した通り、その女の人は仙先輩の家に入っていきました!」
「ふむ……だが、ルームシェアや家出の可能性もありえるだろ?」
「むむむ……複雑怪奇」
俺を混乱させるだけさせておいて、二人は議論を交わす。
つまり、それって……
「俺が彼女できたってのは……」
「それは」
「もちろん」
「「言いたかっただけ!」」
イタズラを成功させた子供のような顔でグッと親指を立てサムズアップする仲良しカップル。
なにげに最初の蓮のルームシェア&家出がかすっていただけに、変な汗をかいたな。
「もしかして、家政婦と二人きり!?」
「いや、家事全般それなりにこなす仙のことだ、家政婦などは雇わないだろう。となると……」
とりあえずは空良の事がばれなかったことを神に感謝しながらも、俺は残りの焼きそばパンを口に詰める。
このアホどもは一度シメよう。
そう薄い決心をした俺は、二人を残して屋上を後にした。
「……はあ」
油断した。
まさか一番気づかれたかないヤツらに見つかるとは思わなかった。
……いつか、話さなければならない。
あの二人にも、空良のご両親にも。
どうすれば、何事も無く収まるだろうか?
それは、俺にはよくわからなかった。