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幼馴染とでぇと……?

一番変わったところから案内しようということになったので、バスで駅までやって来た。

何か変わったところはないかと辺りをキョロキョロ見渡す空良に、俺は話しかける。


「さて、とりあえず駅に来たワケだが」

「駅自体は変わってないね。ショッピングモールの中身が変わったの?」

「あぁ。二階のパン屋が無くなって服屋になった」

「ええっ!!あそこのパン好きだったのに……」


なんて駄弁りながら、駅のショッピングモールに入る。

早々に服屋に立ち入り、空良の服選びを手伝う。

結果、大きめのビッグニットにカーゴスカート、上着として俺のパーカーを袖に手を通さず羽織った空良が生まれた。ちなみにパジャマも買った───さすがに金を渡して選ばせた)。

謎の力でパーカーがずれない空良はずっと上機嫌で、スキップなんかしてらっしゃる。

ため息をつく俺と対照的だ。


「まさか服がここまで高いものだとは思わなかった…」


いつも安心安全のユニシロで服を買っている俺にとって、ブランドとして名がつくような店はまさに魔王の居城。

買えなくもないしお金にも問題はないのだが。

表情には出さなかったものの、それなりのダメージは負った。

…でもまぁ。


「ありがとっ、(せん)くんっ」


こうして笑う空良の顔は、買った服以上の価値があると思った。

そこから先は、空良がきゅうりの浅漬けの次に好きな『もげるチーズ』の新しい味を買ったり、駅周辺でやっているパントマイムを見たり。

暇がなくて駅周辺に来ることはあまり無かったので、どれも新鮮だった。

あぁでも、これは一番記憶に残っている。



服を買って、次は三階───ゲームセンターを見て回ろうと思ったその時。


「……?あれ、先輩?」

「どした、さな?」

「あれ、(せん)先輩に似てません?」


聞き覚えのある声に、俺は声の主をさりげなく見る。

すると、そこにいたのは知り合いの早奈(さな)───と、その彼氏、親友にして悪友の(れん)がいるではないか!?

彼らは空良とも仲が良く、一年経った今でも空良の顔を覚えているだろう。

今は俺が重なって空良の姿は見えないだろうが、それも時間の問題。


「……ってかアレ、仙先輩ですよね。本人ですよね」

「……そうだな。あいつ、空良がいなくなって傷心してたけど、立ち直ったのか?……っと、後ろにだれかいるな」

「うまく重なってて見えませんねー」


空良が帰ってきたことを打ち明けるか?

いや、お祭り好きな二人のこと。『帰ってきたんですね!お帰りなさい!』って言って空良の家に走る様子が眼に浮かぶ。

空良がここにいることがバレたらまずい……。

そう思った俺は、クレーンゲームに悪戦苦闘していた空良の手をとり、曲がり角を曲がった。


「ちょ、仙くん!?どしたの急にわぷっ!?」


空良の口をふさぎ、耳をすます。


「あっ、行っちゃいましたよ、先輩!」

「追いかけるぞ!あいつ、黒髪の美女連れてやがる!」

「どこで捕まえたか聞きますよ、心配かけさせやがってです!」


俺らを捜索する気だ、あいつら!?

空良の耳元でそっと口を開く。


「少し場所を移動するぞ」

「う、うん……?ってか、あの声って蓮く……」

「早く」

「あっ、ちょっと」


なんとか人気のないところまで移動する。

ゲームセンターの端まで来てしまい、ここで追い詰められたらもう何も出来ない。


「せ、仙くん」

「今あいつらに見つかったらマズイだろ。お前の立場的に」

「あ……」

「しばらく、逃げるぞ」


しばらく隅で小さくなっていた時。

案の定、彼らはやってきた。


「はぁ……はぁ……!あいつ、どこに行きやがった…!(大声)」

「なにがなんでも捕まえますよぉ……!(大声)」

「なんなんだよアイツらの謎の執念!(小声)」

「ど、どうしよう……?(小声)」


あいつらの足音が近くなる。

俺はどこか入り込めるところはないか探して…!


「あそこだ!」


ゲームセンターの店員がアクシデントに対応するときに寄るカウンターにすべりこんだ!


「どこにいるのかなぁ~」

「先輩がこっちに気付いてることは知ってんすよぉ~」


カウンターごしにいやらしく響く二人の声。

ひとまず安心して下を向くと……


「せ、仙くん……」

「────っ!!」


目の前に、空良の顔があった。

すべりこむ時に押し倒す形になってしまったらしく、カウンターの高さも低いため、顔が触れるか触れないかの距離だ。


「っかしいなぁ。ここら辺に逃げ込んだと思ったんだけど」

「もしかしたらもうゲーセンの外に行っちゃったのかも知れないですねぇ…」


だんだん遠ざかっていく二人の声。

未だうるさい鼓動。


「諦めた……かなぁ……?」

「そうっぽい……な……」


足音がしなくなったのを見計らって、カウンターから這い出る。

辺りを見回すも、二人の姿は見当たらない。


「撒いた、な」

「そうみたいだね……」

「あのぉお客様……?そちら店員カウンターとなっておりますが…」

「「すみませんでしたッ!!」」



……思い出すとすごい恥ずかしい。

となりの空良だって、駅のゲームセンターの辺りをちらりとみては、顔を赤くしている。


「……帰ろうか」

「……うん。ありがと、仙くん」


既に日が傾いており、(そら)空良(そら)と同様に赤く染まっている。

周りを見渡せば、互いに別れを惜しむカップルがわんさかいる。

微妙に意識されるムード。

……まあ、俺たちは帰る家が一緒なんだけどね。

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