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97 オケアノス、その後

 地面に横たわるアノスはピクリとも動かない。

 アノスの案内をしていたルーカスが、慌てて駆け寄る。

「お嬢様、大丈夫ですか!?」

 サーリンも、フンフから飛び降り、転びながらアノスに駆け寄る。

「お嬢様! アノスお嬢様!」 

 おろおろしながら、倒れたアノスにすがっている。


 そこにテンジュとクエレブルが現れた。 


「テンジュ様! 大変です、アノス様が結界に弾かれてしまいました!」

 ルーカスは初めてのハプニングに気が動転している。

 自分のせいで事故が起こってしまったと、自分のせいで可憐な少女を傷つけてしまったと狼狽していた。


「ルーカス、落ち着きなさい。あなたのせいではないわ」

「えっ?」

 ルーカスは、すがるような目でテンジュを見た。

「この者は、世界樹に対する明確な敵対意思を持っていたから結界に弾かれたのです」

「ええっ!こんな可憐なお嬢様が!?」

「結界で弾くときに、この者の思考を読んだのです。この者は、魔皇国の魔女オケアノス・・・の操り人形ね」

「操り人形?」

ルーカスがテンジュに問いかける。

「そう、操り人形。魔法で遠くから操る魔法が使われていたわ」


「警備兵!」

「はっ、ここに!」

「この倒れている少女と、その従者を拘束しなさい。魔大陸からの侵入者よ」

 意識を失い倒れている少女はもちろん、従者のサーリンも警備兵に拘束された。


 オケアノスの抜け殻の少女とサーリンは、エルフの里郊外にある警備兵の事務所に連れて行かれ、尋問された。

 サーリンは、連行される間も尋問中もずっと泣きじゃくっていた。

 エルフの里の警察組織に厳しく追及された二人だが、もともと何も知らされていなかったので、大した情報は持っていなかった。

 目を覚ました少女も、オケアノスに体を使われている間の記憶はなく、大した情報は出てこなかった。


 二人は間もなく解放された


□□□□□□□□□□□□魔皇城


「グッ、ハアハアハアハアハアハア・・・」

 自室で荒い息を吐いているのはオケアノスである。

 世界樹の結界に弾かれたことで、写し身の魔法が解け、意識が本体に戻ってきたのだ。


「なんて強力な結界・・・この私をここまで弾くとは・・・」

 落ち着くために、用意されたアップルティーを飲む。

「ふう、結界に弾かれてしまったけれど、世界樹は間近に見られたし、おいしい料理はたくさん食べたし、目的は達したわね」

 写し身でよかったと、ほっと胸をなでおろす。

「さて、あちらに置いてきた二人を迎えに行ってあげなくては」


 オケアノスが鈴を鳴らすと、音もなく執事が現れた。

「お呼びでございますか?」

 執事は悪魔族の青年だ。 

 見た目は人族と変わらない。ただ、内包する魔力がけた違いに大きかった。

「あちらに置いてきた、サーリンと写し身に使った女の回収をお願い」

「場所は、どちらですか?」

「陸の皇国、ハイデルベルク領の港町リーベよ。一旦は捕まったようだけど、解放されたみたい。まあ、あの二人は何にも知らないんだから当然。きっと、今頃途方に暮れて泣いているわ。迅速に迎えに言ってちょうだい」

 普段は、従者にはほとんど無関心なオケアノスだが、今回の旅で、少しサーリンのことが気に入ったようだ。

「罠が張られている可能性もあるから気をつけなさい」

「はい、かしこまりました」

 悪魔の執事は、音もなく消えた。


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