95 オケアノスとサーリン、いよいよ天樹の空島観光へ
オケアノスとサーリンが天樹の空島にあるエルフの里で食べ歩きを初めて数日後、世界樹へと向かう日がやってきた。
オケアノスは、貴族令嬢のアノスという名で参加している。
写し身を使っているので、魔力はほとんどない。
従者のサーリンに至っては、普通の人族で、魔力も戦闘力も全く無い。
集合場所はエルフの里入り口にあるカフェだ。
そこには、マルコという若い案内人が待っていた。
年は15ぐらいに見える。若いのに、しっかりした印象を受ける青年だ。
落ち着いていて、品のあるカフェでは、ホットチョコレートという飲み物が提供された。
茶色い飲み物だ、苦そうに見える。匂いは?嗅いだことのないにおいだ。
マルコがホットチョコレートについて説明する。
「これは、この天樹の空島の樹海で採れた木の実を使った甘い飲みものです。熱いのでやけどをしないようにご注意ください」
変わった匂いである。紅茶でもジュースでもない。焦げたような匂いである。
まずは、従者のサーリンが毒見として口をつける。
「甘~い! アノス様、この飲み物甘いです! おおーいしぃぃい!」
サーリンが興奮した様子で報告してくる。
そんなにおいしいのかしら?
オケアノスもホットチョコレートに口をつける。
「これはっ! なんという上品な香り! 滑らかな甘さ!」
この数日間、エルフの里の料理店や甘味処に通い、大抵のものは食べ、飲んだつもりだったが、この飲み物はなかった。
口の中いっぱいに広がる、苦いような、それでいて甘いような香りは今まで嗅いだことが無いものだ。この私が、まだ知らない食材があったとは!
「美味い! 何の木の実を使ったら、このような飲み物ができるのかいら?」
私は思わず聞いてしまった。木の実の名前はカカオと言うらしい。しかし、それ以上は島の秘密だそうだ。
カフェで素晴らしい飲み物を堪能したら、樹海冒険への出発である。
「今から、皆さんをお乗せするデスキングコブラがやってまいります。脅威度Sランクのモンスターと言われておりますが、この島の魔獣は、すべて天の世界樹の眷属となっておりますので安全です。また、もしも皆様に何かあったときには、この世界樹の樹液を使って即座に回復いたします。この樹液は、即死状態でない限り、どんな傷も病気も呪いも治しますのでご安心ください。もしも、デスキングコブラが暴れても、天龍クエレブルがすぐに駆け付けます。」
案内役のマルコが透明な瓶を見せながら説明する。あの瓶に入っているのは世界樹の樹液か…。
たった1瓶で、白金貨30枚もするらしい。
魔皇国でも手に入れようと躍起になったのだが、ごく少数しか手に入らなかったと聞いている。
この観光旅行の目玉の一つが、世界樹の樹液を買える可能性があることだ。
天の世界樹の妖精の気が向けば、売ってもらえるらしい。
もしも、購入できるのならば、今後の研究のためにも手に入れたいものだ。




