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8 カズヤとベティシアの、初めてのランチタイム

ヒロインを登場させることができた喜びを噛み締めています。

ベティシアさん、お姫様なのに案外気さくです。

******** Side カズヤ *******


「あのアオザメン、どうする? どうしたい? 殺す?逃がす?それとも、遠くに飛ばす?」

と、俺はベティシアに聞いた。


「え? えええええ?」

「逃がすと、また襲ってくるかもしれないから、殺そうか。」

 俺が、そう提案すると、だいぶ考えてから、無言で小さく頷くベティシア。目に涙がたまっている。

 自分を狙って追ってきた相手なのに、可愛そうって思っているんだろうね。


 俺は、念動力サイコキネシスで最初に襲ってきたアオザメンを空中でサバ折りにする。

 アオザメンの首と胴体が離れる。


「きゃっ!  ・・・あああ・・・。」

 ベティシアから小さな悲鳴が聞こえる。

 アオザメンの切り口からは、血と内臓が海に落ちる。

 10匹のアオザメンを次々に頭と胴体が切り離していく。無慈悲だが仕方ない・・・。やらなきゃやられるのだ。

 元の世界で、魚は良く捌いたから、こういった作業はお手の物だ。

 釣ったボラをおいしく食べるために、頭を折ったのを思い出すなあ・・・。


 海は、アオザメンの血と内臓ですごいことになっている。

 そのままにすると、さらなる敵を呼びそうだったので、血と内臓で濁った部分を海水ごと切り取り、持ち上げ、はるか彼方に投げ飛ばした。


 ちゅど―――ン・・・・・・。遠くの海上で大きな水しぶきが上がったが、ここまで影響は来ないだろう。


「ねえ、ベティシアさん。アオザメンって食べられるの?」

「ええ、食べられるわ。高級食材よ。」


 それなら、と、カズヤはアオザメンをすべてアイテムボックスに収納した。

 アイテムボックスは、いわば異空間なので、容量は無限である。と、思う・・・。

 空中で、大きなアオザメンが、次々に消えてゆく様子に、ベティシアはびっくりしていた。。


「ねえ、カズヤ、アオザメンはどこに行ったの?」

「俺、アイテムボックス持ちなんだ。だから、全部、アイテムボックスに収納した」

「アイテムボックスって何?」

 ベティシアは、鑑定に続き、アイテムボックスも知らないようだ。

「便利な、荷物入れ・・・・・・・・・かな」

「すごいわね。どのくらい入るの?」

「俺にもわからないんだ。」


「あの・・・、ベティシアさんは、どうして追われていたの?」

「ベティ」

「は?」

「私のことは”ベティ“って呼んで」

「ベティ・・・さん」

「ベ・ティ・イ!」

「・・・ベティ」

 ベティが、にっこりとほほえんだ。女の子の名前を呼び捨てって、ハードル高いな。

 まあ、すぐに慣れるだろう。でも、お姫様を呼び捨てにしていいの?名前で呼んでいるところを、姫の家臣に聞かれたら、絶対めんどくさいことになるよ。


「さてと、アオザメンもいなくなったし。一安心かな」

「カズヤ、あなた、強いのね」

「ベティこそ、すごいスピードで泳げるんだね」

「速いだけよ」


 何気なく、ベティの姿を見ると、最初に見たときと違っていた。

 最初に助けたときには、魚だった下半身が、今は、人の足に変化しているのである。


「あれれ? ベティ・・・に、足がある。いつの間に変身したの?」

「何を言っているの?人魚族は陸上に出たら人族タイプの足になるのに決まっているじゃない。

カズヤ、そんなことも知らないの?」

「・・・知らなかった。すごいね。」

「すごくなんか無いわよ。人魚族にとって当たり前のことだもの。だいたい、人魚族って普段はほとんどこの姿で生活しているのよ。魚タイプでいる方が珍しいぐらいだし。」

「へー、そうなんだ。」

 驚きである。


「キュ~」

 ん、何か音が聞こえたな。何の音だろう。

「キュルキュル~」

 ベティが赤い顔でお腹を押さえている。・・・あぁ、お腹の音か。ベティ、恥ずかしがって真っ赤になっているな。


「ご飯にしようか。と、言っても、大したものはないけれどね。」

「・・・うん。」


 ベティとカズヤの初めてのランチだ。


 俺は、アイテムボックスからダイオウエビンを取り出した。

 適当な大きさに切り、串に刺す。味付けは塩だ。


「ベティは好き嫌いとか無い?ダイオウエビンは食べられる?」

「もちろん食べられるわ。大好きよ。人魚族にもエビはごちそうよ。」


 100gぐらいの大きな切り身の塊を3つ、1本の串に刺し、塩を振る。

 それを、太陽光レンズで焼く。ジューという音とともに、食欲を高めるいい香りがしてくる。

 ベティの目は、焼けていくダイオウエビンの身に釘付けだ。


 付け合わせは、天樹の葉3枚。ちなみに、お皿も天樹の葉だ。

 エビの巨大切り身の塩焼きと生の葉っぱだな。贅沢なんだか質素なんだか・・・。


「いただきます。」

 ベティがエビの塩焼き串に豪快にかぶりつき・・・ということはなく、一口大に手でちぎって、その身を口にする。上品だ。

「フーフー、ぱくっ。おいしい!」

 さすがお姫様、こんなアウトドアメニューでも気品を感じる。

 お姫様のお口に合って何よりだ。


「この葉っぱは食べられるの?」

「うん、おいしいよ。食べてみて。」

ベティは、天樹の葉を1枚つまみ、「あむ」と口に運ぶ。シャクシャクシャクと食べている。


「おぉいしぃぃ!なにこの葉っぱ!信じられないおいしさだわ!!」

 ベティは、夢中で3枚あった天樹の葉を一気に食べてしまった。

 すると、ベティの体が薄く光る。そして、その光が、ベティの体にあった傷や痣を癒やしていく。

それを見ながら、俺も、ベティも目を丸くしていた。


「痛みが消えたわ。それに、あんなにだるく重かった体が羽のように軽いわ。 まるで、最上級のポーションを飲んだときのようよ。」

「この葉っぱのおかげかなあ?」

「そうとしか考えられないわね。 これって、すごい事よ!」


「たくさんあるから、気に入ったのなら何枚でも食べて。」

 葉っぱは、たぶん何万枚もあるだろう。それに、いくら採ってもどんどん生えてくるみたいだし。


「ベティはのど渇いていない?」

「乾いているけれど、ここに水があるの? こんな海の真ん中で? 無かったら、わたしが作れるわよ。」

 人魚族の固有魔法で、海水から塩を抜いて水を作れるそうである。人魚族ならみんな使える魔法で、珍しくはないそうだ。 海で生きていくためには必須の魔法らしい。


「天樹の樹液を飲んでみる? すっごくおいしいよ。」

「是非、飲んでみたいわ。」

俺は、近くにある細い枝を適当に折り、そこに口をつける。


「こんな風に枝を折ると樹液が出てくるから、ストローみたいに口をつけて吸って。」

 ベティは、俺が折った新しい枝に口をつける。

「おおいしいぃぃぃぃぃぃーーーー!」

「でしょう! すごく、おいしいよね」


 おいしさがわかってもらえてよかったよ。あ、またベティの体が少し光っている。

「これは、気が遠くなるほどのおいしさだわ。 こんなの飲んだら、もう他の飲み物飲めなくなっちゃう・・・。しかも、この感じだとポーションの効果もありそうだし。 王宮で飲んだ、どんな飲み物よりもおいしいわよ、これ。」


 俺たち二人は、ダイオウエビンの塩焼きと天樹の生葉3と樹液いう、豪華なんだか、質素なんだかわからないけれど、とてもおいしいランチを堪能した。


「ふう、お腹いっぱい。どうも、ありがとう。 とてもおいしかったわ。 体の調子も元に戻ったし。」

「どういたしまして、パンとかご飯とかがあれば最高なんだけど・・・。 小麦も米もないからなぁ。」

「あら、そんなの、採ってくればいいじゃない。」

「えっ?どういうこと?」

「この辺の海底になら、海小麦がたくさん生えているわよ。 それを採ってくれば、あなたなら自分でパンを作れそうな気がするんだけど」

「海小麦!?小麦がとれるの?海で?」

「カズヤはそんなことも知らないの!? 当たり前じゃない。 子どもだって知っているわよ」


「この近くで採れるの? 採りに行こう! 今すぐ!!」

 カズヤは、興奮した声で叫んだ。


こんなつたない文章を、お読みいただき申し訳ありません。

感謝申し上げます。

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