76 カズヤ対シャイターン
クエレブルではシャイターンを倒せませんでした。
さて、カズヤの力は通用するのでしょうか?
すさまじい力を持った超人たちの戦いは苛烈だった。
互いに強大な魔法の力と、フィジカルを持っているもの同士の戦いなので、地面は陥没し、岩は削れ、木々はなぎ倒され燃やされた。
しかし、互いに決定打は打てず、膠着状態となった。
「私たちバンパイアを相手に、なかなか粘りますねえ。でも、体力と魔力が尽きかけているのではありませんか?」
実際に、長く戦っているシンノウは、既に限界ギリギリの状態だった。
「こりゃあ、まずいかな?」
シンノウが笑う。この男は、窮地になればなるほど笑うのだ。
クエレブルも、既にブレスを10回ほど放っている。龍のブレスは強力だが、そう何度も打てるものではないのだ。
パルメも満身創痍だ。
「あ~、いたいた! みんな、先に行っちゃうんだもんな~、迷っちゃたよ。まあ、すごい音がしていたから見つけられたけどさ」
そこに、カズヤが気の抜けたセリフと共に、のんびり到着した。
「うわ~、みんな傷だらけじゃん!大丈夫?」
「大丈夫ではないわ!暢気な声を出しおって!」
シンノウからツッコミが入る。
「じゃあ、みんな回復してよ。世界樹の樹液がここにあるからさ!」
カズヤは、アイテムボックスから樹液を取り出し、3人に配ろうとした。
「「回復などさせるか!」」
シュベルトとランスレーがカズヤに迫る。すさまじいスピードだ。
「念動力固定!」
カズヤが、迫ってくるシュベルトとランスレーを固定した。二人の吸血鬼は、カズヤの強力な念動力の前では無力だった。襲い掛かる姿そのままで停止している。
まともに戦うこともなく敵の動きを問答無用で止めるカズヤの攻撃は、バンパイアたちにとって非常に相性の悪いものだった。念動力の固定に対して、不死性は何の役にも立たなかったのだから。
「あと一匹だね」
カズヤがシャイターンを睨む。のんびり構えているように見えても、カズヤはパルメたちを傷つけられて怒っていたのだ。
カズヤは、声も発さず、シャイターンに固定の念動力を仕掛けた。
シャイターンが動きを止める。
「ほう、これがプレシオルとドラウグルを倒した力か」
シャイターンの声が聞こえる。おかしい、固定されたものは口も舌も動かないので、しゃべれないはずなのに・・・。
前方を見ると、シャイターンが二人存在する。
「我が呪いを受けよ! 呪いの息吹!」
後から表れた方のシャイターンから黒い靄が発せられカズヤに迫る。カズヤは回避しきれず、黒い靄に包まれた。
「ハーッハッハー! その呪いは龍にさえ解除できぬ死の呪い! 貴様の命はあと数秒だ!」
「カズヤ様―――!」
パルメの悲痛な叫びが響く。
「う~ん・・・、わかった! 体の形を自由に変えられるシャイターンは、固定されていない部分から固定の外に抜け出したんだ! だから外側だけが残っていて、二人いるように見えるんだ!」
カズヤが笑顔で言う。探していた答えをやっと見つけた子どものようだ。
「カズヤ様! 何を暢気に謎解きしているのですか! 呪いで死んでしまうかもしれないんですよ!」
「そうだ、カズヤ殿、体に異変は感じないのか? 樹液を飲むか?」
パルメとシンノウが、平常運転のカズヤに駆け寄り、必死の形相で声をかける。
「ああ、俺に呪いの類は一切効かないんだ」
カズヤが不敵に笑う。
「バカな! そんなことがあるはずがない! この世界で最も強力な、私の一族の秘儀の呪いだぞ!」
「ん~、効かないんだなぁ。残念」
龍をも蝕む世界最強の呪いを受けながら平然と立っているカズヤの様子に、シャイターンは唖然としている。
「ならば、この炎を受けてみよ! 『燃やし尽くせ、悪魔の熱風!』」
シャイターンがカズヤに火魔法攻撃を仕掛ける。呪いなどの闇魔法を最も得意とするバンパイアだが、魔力自体が高いので、火魔法や水魔法にも長けているのだ。
炎を含んだ極大魔法の熱風がカズヤを取り囲み、燃え上がる。一瞬カズヤの姿が見えなくなる。
「カッ、カズヤ様ッーー!」
パルメがへたり込んでいる。
「効かないな~」
燃えさかる炎の中から声がする。カズヤは無事のようだ。
「ねえ、パルメ、この鎧すごいでしょ。あれだけの炎にさらされても全く燃えないんだよ」
炎の嵐の中から歩み出てきたカズヤがパルメに声を掛ける。
「・・・ええ、すごいですね」
パルメの返事に力が無くなってきたようだ。
「バカなバカな! 何なのだお前は!」
「俺? う~ん、神の使徒かな? 障壁!!!」
カズヤは、念動力の固定が効かなかったシャイターンを、球形の障壁で囲った。
「障壁!」
「障壁!」
「さらに障壁!」
「もひとつ障壁!」
障壁を次々に追加し、5重障壁とした。
シャイターンは障壁の中で、見えない壁を叩きながら何かを叫んでいるようだ。
障壁の中で暴れても、叫んでも、外には一切聞こえない。
不死身のバンパイア王シャイターンも、カズヤの規格外の力によって捕縛された。
「バンパイアたちは、このまま拘束しておいて、朝日を当てればいいんだよね」
「それはそうだけど、本当に体は大丈夫なの? 突然、呪いで死んだりしない? それに、どうしてあんな炎の中でも平気なの?」
パルメがカズヤの腕をつかみながら聞く。
度重なるショックを受け、カズヤに直接つかまっていなければ安心できなかったのだ。
「俺は、神様から健康な体をもらっているから、呪いや状態異常はすべて無効化されるんだ。 炎だけど、火の世界樹に炎と熱無効の加護をもらったから、俺に火魔法は一切通じないんだ」
「何て反則的な力・・・、非常識ね」
念のために呪い解除の効果がある世界樹の樹液を飲み、世界樹の葉を食べてリフレッシュをしながら、カズヤたちは朝が来るのを待った。
朝日が昇り、森に光が差し込んでくる。
バンパイアたちは、逃げることも抵抗することもできず、まばゆい朝日を浴びて、次々に灰になっていった。
それは、シャイターンも例外ではない。カズヤの作り出した障壁の中で真っ白に燃え、灰になった。
その様子を、遠くから気配を消して見ている者があった。
クエレブルの鋭い感覚もすり抜けて戦いを観察する者はゴッドホルト、三つ目の鬼、6魔将の一人である。
「シャイターンほどのものでも敵わぬか・・・。カズヤ・サクラザカ、脅威だな」
ゴッドホルトは、音もなくその場から掻き消えた。
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