73 バンパイア対討伐隊
頭がつぶれたりします。
残酷描写が苦手な方はお気を付けください。
バンパイア討伐隊は、襲撃に備えて一塊の陣形を作り、周囲を強力な結界で囲んだ。
バンパイアには、変身能力を持つものが多く、物理的な壁はあまり役に立たないのだ。
夜のバンパイアは不死身である。
不死身であるという自信があるので、その身を隠さず彼らはやってくる。
討伐隊の周りを、バンパイアたちが取り囲み始めた。しかし、何かに阻まれて、獲物に近づくことができずにいた。
「何だ!見えない壁があって進めないぞ!結界か!?」
バンパイアたちは、力任せに結界を破ろうとする。しかし破れない。
その結界は、討伐隊に加わっている皇宮魔導士10人がかりで張った、帝国最強の結界なのだ。
バンパイアたちには、その結界がどうしても破れなかった。
そこに、バンパイアの王シャイターンが現れた。
「おやおや、これは強力そうな結界ですね」
シャイターンは、結界のすぐそばまで歩みを進める。
「ハッ!」
シャイターンが結界に向かって蹴りを放つ。
「ドガーーーン!」
細身の体のどこにそんな力があるのかと思える蹴りが結界に当たる。それまで、全く揺るぐことのなかった結界が少し震えた。
「なかなか丈夫ですね。これならどうでしょう?」
両手をあげるシャイターン。その手の先の空中に、黒い靄の塊が現れる。
その靄の球は、2mほどの大きさになった。球の表面には稲妻が走り、巨大な力を感じさせる。
シャイターンは、稲妻をまとったその球を結界に向かって放った。
「ズッガーーーーーーーーン!!!」
球は結界に当たると大爆発を起こした。結界は、大きく揺れはしたが、その衝撃に耐えきった。
「さあ、面白くなってきましたよ」
次にシャイターンが用意した黒球は10個である。
「これに、耐えられますかね?」
10個の靄の黒球が結界に放たれる。
結界は、その攻撃に耐えきれず、パリンと硬質な音を立てて砕け散った。シャイターンはにやりと笑った。
「さあ、お仕置きの時間です。哀れな人族に、身の程を教えて差し上げましょう。さあ、お前たち、獲物は目の前ですよ。楽しい食事会にしましょう」
「「「「イエーーーーーーー」」」」
それまで結界に阻まれて先へ進めなかったバンパイアたちが、討伐軍の騎士や兵士たちに一斉に襲い掛かる。
「ここからが勝負だ!朝まで持ちこたえれば我らの勝ちだ! 死ぬ気で耐えろ!」
「「「「「おう!」」」」」
討伐軍とバンパイアたちの激しい戦いが始まった。
戦いは、精鋭を揃えた討伐軍側が優勢である。迫りくるバンパイアたちを剣で切り伏せ、魔法で燃やしていく。
数の上でも、討伐軍はバンパイアたちの5倍である。バンパイア1体につき、5人がかりで対応できる。
…しかし、バンパイアは死なないのだ。倒しても倒しても、切っても切っても、燃やしても燃やしても、また立ち上がり襲いかかってくる。しかし、倒し続けるしかないのである。
討伐隊は、ひとかたまりになって守りを固める。追撃は一切しない。
倒しても倒しても、すぐ復活してくるバンパイアたちと戦い続けるために、討伐隊は攻撃隊を3つに分けている。
1番隊が戦っている間、2番隊と3番隊は休息する。一定の時間戦ったら、1番隊は後ろに下がり2番隊が前に出る。こうして長時間の防衛戦を成立させているのだ。休んでいる間に、負傷した者をポーションや世界樹の葉や樹液で回復する。この戦いにおいて、天の世界樹のもたらした世界樹の葉と樹液は、討伐隊の大きなアドバンテージになっていた。
しかし、配下のバンパイアたちの相手は、討伐隊員でも何とかなったのだが、6魔将の一人シャイターンの相手ができる者は、ごく限られていた。また、シャイターンのそばで控える2人の側近も、非常に厄介な敵だった。
「シャイターンとやら、俺は獅子王イルメラだ。お前の相手は俺だ!」
ムヘンジ領の英雄にして将軍のイルメラが進み出た。
イルメラは、獅子の獣人だ。3mもの体躯を誇る物理攻撃型の武人である。元々の体力に加え、強化魔法によって威力の増加した拳は岩を砕き、鋭い爪は鉄を削る。
イルメラは、シャイターンに向かって突進する。その動きは巨体に似合わず素早く鋭い。
イルメラの拳がシャイターンの顔面にヒットする。大きな拳の強打を受けたシャイターンの頭は、水風船のようにはじけ飛んだ。
しかし、はじけ飛んだはずの頭は、数秒後には元通りになっていた。
「いきなりだなあ。だから獣人は嫌いだよ。髪型が乱れちゃうじゃないか」
長い髪を手で梳きながらシャイターンは言う。
「化け物め・・・、つぶれた頭が3秒で戻るか」
わかってはいたことだが、その不死身性の高さにイルメラは驚愕を隠せなかった。
「では、これならどうだ?」
イルメラは、再度シャイターンに襲いかかる。
イルメラの拳が、爪がシャイターンを蹂躙する。シャイターンの腕はちぎれ、足はもげ、胴体が細切れになり、頭は2つに割れた。
しかし、数秒後、無傷のシャイターンが、そこには立っていた。
「なんで服まで元に戻ってんだよ!」
結構現実的なイルメラであった。
「ひどいなあ、私にだって、少しは痛覚があるのですよっ!」
シャイターンがイルメラに蹴りを放つ。
シャイターンの細い足が、イルメラを打つ。
「ガッシャーーーン!!」
イルメラの鎧が信じられないような音を立てた。
しかし、イルメラも陸の皇国最強の武人である。
「ん?今、鎧にハエでも止まったか?」
さすがは不動のイルメラと呼ばれるだけはある。イルメラの防御力は皇国最高。防御が大事なこの討伐隊の性質に合致しているからこそ、今回参加しているのだ。
「ふ~ん、なかなかやるね」
「お前もな、シャイターン」
二人の戦いは、始まったばかりである。
日の出まで、あと6時間。




