7 〔アオザメン〕の襲撃、カズヤの力
ようやく戦闘シーンが出てきました。
主人公も、いいところを見せられて喜んでいます。
物語が、大きく動き始めそうです。
俺と人魚族のベティシアさんを乗せた巨木〔天樹〕が少し揺れたようだ。
そいうえば、さっきベティシアさんを襲っていたアオザメンのこと忘れてた。
ドーーーーーーン! ドーーーーーーーーーン!! ドーーーーーーーーーーーン!!!
巨体のアオザメンが天樹に体当たりをしているようだ。
上の俺たちを落とそうとでもしているんだろう。
その時、一匹のアオザメンが、海から飛び出し、鋭い牙が並ぶ口を大きく開け、俺たちに迫って来た。
「止まれ!!!!」
念動力発動だ。迫ってくるアオザメンに向かって手を突き出す。
アオザメンは、俺たちの目の前で、ぴたりと動きを止めた。
「ふう、成功。」
ビバ!念動力!
空にアオザメンを浮かべたまま、俺は、ベティシアに聞いた。
「あのアオザメンは、ベティシアさんを狙っているの?」
「うん、そう・・・・・・ところで、どうして私の名前を知っているの?」
「俺、鑑定持ちだから。」
「鑑定?それは何?」
うっ、説明しづらい。
「相手に聞かなくても、種族や名前とかがわかるスキルだよ。」
「へー、便利ね。私が知っている限りでは、そんな力を持っている人の話は、聞いたことがないわ。」
ベティシアさんは驚いているようだ。
鑑定は、レアスキルなんだな。もらってよかった。神様ありがとう。
「あれは、あなたがやっているの?」
ベティシアは空に浮かびじたばたしているアオザメンを指さして言った。
「うん、そうだね。」
「すごい力ね。どんなスキルなの?・・・会ったばかりのあなたに、それを聞くのはマナー違反ね。」
「オオオオオオオオオオン!!!」
のんきにそんな会話をしていると、海中にいたアオザメンが、一斉に飛び出し、鋭い牙をむきだして、こちらに向かってきた。その、凶暴そうな目からは、怒りが読み取れるようだ。
「きゃああああああああああ、もうダメーーー!」
ベティシアは、近くにいたカズヤに抱きつき、ぎゅっと目を閉じた。
「これじゃあ、無関係なカズヤを巻き込んじゃう!」
しかし、体は動かなかった。
・・・予想していたような痛みや衝撃はやってこなかった。
おそるおそる目を開くと、けがもなく、にこにことほほえみながら立っているカズヤと、自分たちを取り囲むように空に浮かび、じたばたとする10匹ものアオザメンの巨体があった。
**** Side ベティシア *********
空に浮かぶ10匹ものアオザメン・・・何が起こっているの?
私の前に立って、にこにこしている青年の仕業なの?
「これは、あなたがやっているの?」
「そうだよ。」
カズヤは笑顔で答える。
「あのアオザメン、どうする? どうしたい?」
カズヤは私に聞く。
「どうするって?」
「殺す? 逃がす? それとも、遠くに飛ばす?」
は?何、その選択肢。全部、実現可能ってこと?アオザメンは≪死の遣い≫と呼ばれている恐怖の象徴のような化け物だ。アオザメン1匹を討伐するのに騎士団の小隊が必要とされるほどの強さをもつ。それをたった1人で、10匹同時に笑顔で瞬殺って普通じゃないわ。
カズヤって何者なの?
私は、人魚族〔ベティシア・ソプラ・マーリン〕17歳の女の子
海の国【マーリン海皇国】の第2皇女 〔ポセイドン・バリト・マーリン皇帝〕の娘だ
訳あって、海の国【マーリン海皇国】から追手がかかった私は、数名の親衛隊とともに皇宮から逃亡した。
おそらく追っ手を放ったのは、第1皇子の〔スラニム・バリト・マーリン〕だろう。
親衛隊がその身を犠牲にして、なんとか私をここまで逃げてくれた、もう、体力の限界だった。
追っ手のアオザメンに囲まれたときには、死を覚悟した。
でも、死はやってこなかった。
それは、カズヤに助けられたから。
カズヤは、大きな木の上に一人で立っていた中性的な顔立ちの、やさしそうな青年だ。
年のころは18歳ぐらいだろうか。
そのカズヤが手を突き出すと、私を追いかけていたアオザメンが、空中で止まった。そんな力は見たことも聞いたこともない。
しかも、カズヤはいきなり私の名を呼んだ。どうして知っているの?初対面よね。
鑑定って何のこと?わからないことばかりだ。
大体、この木だって、なぜ海水に浸かっているのに枯れていないの?
それに、この木の大きさ。
こんな巨大な木は、私の国でも陸の国でも見たことがない。
カズヤはいったい何者?人族よね。
私を助けてくれたけれど、味方なの?
でも、ちょっとカッコいいかも・・・・・・。
ようやくヒロイン登場。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。