65再び火の世界樹の元へ
ほのぼの回です…。オチもヤマもありません。
読まずに跳ばしても、本編には影響ありません。
ブレンターノ一家が全員で力を合わせて働くところと、
クララがエリーザを天樹の空島に誘う場面を書きたくて…。
そうしたら、こんな話になりました。
エルフの里再建のめどが立ったので、カズヤたちは再び火の世界樹の元に行くことにした。
たびたび移動をしているので、空島を動かすテンジュも島に住んでいる者たちも慣れたものである。上昇と下降のときには、それなりに身構えなくてはならないが、ただの横移動では、島の中は揺れもせず平常通りに生活できる。
空島が火の世界樹の待つザグレブ領まで空を飛んでいる間も、エルフの里再建作業は問題なく続いていた。
食料も、おばば様と里長エルニオールの働きで十分手に入れることができたので、当分飢えることはないだろう。
「この天樹の空島は暖かくていいのう」
「ほんに、ほんに、ザグレブのエルフの里は寒かったからのう」
「泉で水浴びができる生活なぞ、想像もしていなかったわい」
「うまいものもたくさん食えるし、夢のような生活じゃ」
エルフの里の老人たちの会話である。
ただ、エルフ族は老化が今一つ姿かたちに表れないので、しゃべっている内容や言い方は老人なのに、見た目が老人ではないという違和感が拭えない。おばば様も、エルミアたちがそう呼んでいるから俺もおばば様と呼んでいるが、見た目は人間の40歳程度である。あの人は、いったい何歳なのだろう?
冬には平均マイナス10度ほどの極寒の地ザグレブでは、なかなかおいしいものも食べられず、水の確保も難しかったそうだ。火の世界樹の恩恵で少しは作物が実ることと、工芸品や高級家具等を販売することで収入を得て、生活できていたらしい。
天樹の空島は、火の世界樹の封印を解くために、一路ザグレブへと海上を飛んでいだ。
**** ブレンターノ一家の買い物
side ブレンターノ一家
<ブレンターノ一家紹介>
おじいちゃん・ジモン56歳
お父さん・ルーカス35歳
母・デリア33歳
兄・マルコ13歳
妹・クララ4歳
【キャスタル商会】
副代表〔リハード〕40歳
リハードさんの妻〔マルガレーテ〕38歳
リハードさんの長男〔カール〕16歳
リハードさんの長女〔アメリア〕14歳
リハードさんの次女〔エリーザ〕7歳
カズヤの屋敷の管理を任されているブレンターノ一家は、リーベの街に総出で買い出しに来ていた。
「お母しゃん、久しぶりのおかいものだね~。」
デリアと手をつなぎながら、ご機嫌のクララである。
「クララ、今日は遊びに来たんじゃないのよ。 お屋敷で使う掃除用具や、お客さんや用のおふとんやシーツなんかを買いに来たんだから。」
「は~~い」
先日の、陸の皇国炎帝一家が屋敷を訪れた際に、屋敷にはまだまだ様々な足りないものがあることに気付いたのだ。身分の高い客が来ると、必ず、その従者も一緒にやってくる。そうすると、そんな従者たちのために、一度にたくさんの寝具やタオル、食器なども必要になるのだ。そんなことは想定外だったので、全く用意していなかったのだ。
もちろんリハードさんや商会の人に頼めば、必要なものを揃えてくれるのだが、今回は突然訪れた機会だったので、今回の短い滞在の間に、街で買えるだけブレンターノ一家が買いそろえるということになったのだ。
ジモンとルーカスが、買ったものを乗せるための荷車を引き、その荷車に付き添ってデリア、マルコ、クララが街道を行く。
このリーベの街を初めて訪れるブレンターノ一家は、リハードさんが副代表を務めるキャスタル商会の人に道案内を頼んだのだが、キャスタル商会の従業員たちは、エルフの里に搬入する資材や物資の調達で手いっぱいだった。
だから、今回の買い物の道案内は、今回の騒動でも手が空いていたリハードさんの娘のアメリアとエリーザである。
クララはさっそくエリーザと仲良くなった。クララの右手には母デリア、左手にはエリーザと両手に花である。ちなみにアメリアは一行の先導である。
クララは、空島のことを一生懸命エリーザに説明しようとした。
「あのね、おやちきは、すっごくちれいで、大っきいの!」
「おやちきの近くには、いっつもデスキンがいて、大きい声で呼ぶと、すぐに来るんだよ」
「デスキン、大っきいの! 大っきいのにクララがなでなですると、しっぽフリフリで喜ぶんだよ。 デスキンの他に、ふぇんもいるの!」
クララよりも、少し年上のエリーザは、ニコニコしながら話を聞いている。でも、デスキンという謎の生き物の説明に首をひねった。
「クララちゃん、デスキンって何?」
「ん?デスキンはね、…おっきなへびさん!」
「へび?」
エリーザがギョッとしている。目を白黒させているエリーザに、兄のマルコが説明を付け加えた。
「デスキンはね、デスキングコブラだよ。 大きさは、大人が四人、背中に乗れるぐらいかな。」
「クララね、いっつもパパとデスキンに乗って森に行くんだよ!」
もはやエリーザの理解と想像力の限界は越えたようである。
エリーザは遠くを見つめながら「へ~すごいね」と、あまり感情のこもっていない声で答えた。
「ねえ、エリーザちゃん、今度、おうちに遊びにおいでよ!」
「うん!行く! 行きたい!」
エリーザが興奮気味に答える。それを聞いていたデリアがクララをたしなめる。
「クララ、そんなこと勝手に決めてはだめよ。ちゃんとカズヤ様に相談して、カズヤ様がいいよって言わないといけないわ」
「うん、わかった! 今度、カズヤしゃまに言ってみる!」
ポジティブな幼児である。
「みんな、お店に着いたわよ!」
案内役のアメリアが皆に告げる。そこは、布団やシーツを取り扱う寝具屋だ。
この世界でも綿は盛んに栽培されているので、布団の中身は綿である。シーツなども綿製だ。一般庶民にとっては高級品であり、なかなか買うことができない、憧れの品である。
「こんにちは~」
アメリアが慣れた様子で店に入っていく。
「いらっしゃいませ、あら、アメリアお嬢様じゃないですか。今日は何の御用ですか?」
アメリアは、この町一番の商会の娘である。まだ若いが、なかなか顔が広かった。
「こちらの方は、お父様の友人のお屋敷で働いている皆さんです。よい店を紹介してほしいと頼まれたので、こちらの店に伺いました」
14歳の少女なのに世慣れたい言い方である。さすがは商人の娘。
「私たちはカズヤ・サクラザカ様の屋敷のものです。はじめまして」
デリアが挨拶をする。この一家の外交担当はデリアだ。
「カズヤ・サクラザカ…海賊討伐の英雄の?」
「私たちは、ミールニ領の者ですので、そのことは詳しく存じ上げないのですが、海賊を討伐したというお話をカズヤ様からお聞きしています」
「おお!英雄カズヤ様のお屋敷で使う品ですか! これは、最大限のサービスをしなければいけませんな! で、何をお求めですか?」
「はい、シーツや布団、枕などの寝具を100組ほどいただきたいです。」
「100組!? それは、とてつもない数ですな! 今すぐにご用意できるのは40組ほどですが、何日間の猶予をいただけますか?」
「はい、この街には4日ほど滞在する予定ですので、あと3日後まででしたら大丈夫です」
「わかりました。では、3日後までに必ず残りの60組をご用意いたします。」
突然100組もの寝具が売れたのだから、店主はホクホク顔である。小躍りしそうなほど足取りが軽い。
「今ご用意できる40組は、どうされますか?」
「はい、持てるだけ持って帰ります。そのための荷車も引いてきています」
「わかりました。しかし、寝具40組となると、その荷車1台では到底載せきれません。 店の荷車をお出しします。」
ブレンターノ一家の引く荷車に乗った寝具は20組。残り20組は店の用意した荷車に載せられ、それを引く人員も貸し出された。
寝具20組を乗せた荷車の重さは相当である。
「よいしょ!よいしょ!」
帰り道は、一家全員で荷車を押して帰った。仲良し一家である。
もちろんアメリアとエリーザも手伝ったことは言うまでもない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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今後もがんばって続けますので、
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