63 エルフの里、火の世界樹
海皇国の世界樹は横たわっていたが、ここの世界樹は、きちんと根を張って立っている。しかし小さい・・・。
この世界樹は小さい、高さ10m程度しかないだろう。そして、形が変わっている。細長い幹の上に、槍のような葉がボンボンのように茂っている。椰子の木のようだ。世界樹の雰囲気ゼロである。
「エルミア、エルフの里の住民がどこに隠れているかわかる?」
「はい、全員、この里の一番安全なところに隠れていると思います~」
「その場所まで案内できる?」
「もちろんです~」
エルミアの案内で俺たちはエルフの里に入った。
里は、惨憺たる状況だった。
建物はすべて壊され、見る影もなかった。
行方のわからないエルフたちを探すために、ジャイアントたちが壊したのだろう。
「こりゃあひどいな。 あいつ、何も壊していないって言ってたのに~!」
しれっと嘘をかまして、逃げやがった・・・あのチャラジャイアント・・・。
カズヤたちは、エルミアの案内で、山の斜面にあった割れ目に入った。その割れ目は小さく、体の大きなジャイアントでは通れなかっただろう。それに、その入り口は樹木やツタで巧妙に隠されていた。ここが入り口だと知っていなければ絶対に気づかないだろう。
中は鍾乳洞である。海皇国で通った海底鍾乳洞に似ている。
「エルミア」
「何ですか~、カズヤ様?」
「今、火の世界樹に向かってるのか?」
「はい、その通りです。 よくわかりましたね~。 この洞穴は~、火の世界樹の間に行くための通路です。 普段は世界樹の巫女しか入れないんですよ~」
「どうして、里のみんながそこにいると思う?」
「火の世界樹の間は~、結界で守られていて、この里で一番安全な場所ですから~」
なるほど、世界樹の加護のある場所が一番安全なのは言うまでもない。
俺たちは、暗く長い鍾乳洞を、奥へ奥へと進んでいった。
しばらく歩くと、突き当たりたどり着いた。一見すると、ただの行き止まりである。目の前には岩壁しかない。
エルミアが、何か呪文を唱えながら岩壁に触れると、海皇国の封印の間のように、奥へと続く道が現れた。
その先にあったのは大きな洞窟である。これも、海皇国の時と同じである。
今までの世界樹と違っていたのは、その状態である。
海皇国の世界樹は横たわっていたが、ここの世界樹は、きちんと根を張って立っている。しかし小さい・・・。
この世界樹は小さい、高さ10m程度しかないだろう。そして、形が変わっている。細長い幹の上に、槍のような葉がボンボンのように茂っている。椰子の木のようだ。世界樹の雰囲気ゼロである。
「エルミア、これ、本当に世界樹? 小さくない? 形も変だし・・・」
「カズヤ様~、それは失礼です~!!変じゃありません!!」
エルミアがぷんぷん怒っている。
そんなやりとりをしていると、奥から声がした。
「エルミア! そこにいるのはエルミアかい?」
「おばば様、よくぞご無事で~」
声の主は、火の世界樹の巫女たちの長おばば様だった。本名は知らない・・・。
「エルミア、久しいのう。 元気そうで何よりじゃ」
おばば様に続いて、里のエルフたちが続々と現れた。
「おばば様~、里の皆さん、サラにミアも~、元気そうで嬉しいわ!」
エルミアは、同じ年ぐらいの女の子と抱き合って喜んでいる。
「火の世界樹の妖精様が、『里は危ないから、ここに逃げてきなさい』って私たちに危機を教えて下ったの。 妖精様が呼んでくださったから、私たちは全員無事よ」
「火の妖精様、ありがとうございました~」
エルミアが頭を下げる。その先にいたのは小さな妖精である。
俺が最初に会ったときのテンジュと同じぐらいの大きさだ。身長60cmぐらいかな。背中からは羽が生えている。テンジュの羽は蝶のようだが、この子の羽はトンボのようだ。 速く飛べそうである。髪型もショートヘアで、気の強そうな顔立ちだ。
「久しぶりねエルミア。 立派に役目を果たしたようね。 うれしいわ」
「はい、あの日、妖精様にリーベの町に行きなさいと命を受けたときには、不思議でならなかったのですが、こうしてテンジュ様をここまでお招きすることが叶いました~」
「カジュ、久しぶりね」
「あら、テンジュ。 立派になったじゃない。」
「あなたはずいぶん、ちっこいわね」
「フン!ちょっとぐらい早く封印が解けたからって、いい気にならないで! 私も、すぐに封印を解いて大きくなるわよ!」
火の世界樹の妖精カジュが、テンジュの周りを飛び回りながら怒っている。
「カジュ、落ち着いて。 紹介するわ、この人がカズヤ、<天の皇石>と<水の皇石>の持ち主よ。」
飛び回っていたカジュが、カズヤの眼前で停止する。
「あなたがカズヤね。 待っていたわ。 さあ、私の封印を解いてちょうだい!」
押しの強いちびっ子である。カズヤが自己紹介する暇はない。
「まって、まって、封印を解くってどうやるの? どうしてほしい?」
「何よアンタ、そんなこともわからないの? 神の使徒なんでしょう? しっかりしなさいよ」
わからないよ、カジュ・・・。無茶言わないで・・・。
「私、火の世界樹の力の源は、この地中深くにある火の水よ!」
「地中深くの火の水?・・・ああ、マグマか!」
「マグマ? あなたは火の水のことをそう呼んでいるのね。 じゃあ、マグマでいいわ。 マグマをこの部屋まで引っ張ってきてちょうだい!」
「マグマをこの部屋に? 世界樹が燃えちゃわない?」
「燃えるわけがないじゃない! 私は火の世界樹なのよ。 火はごちそうよ! 今は力が弱くなっちゃって、深いところにあるマグマまで根が届かないのよ。 今、届くのは、ほんの小さなマグマだまりだけ・・・。 ずっと深いところにある、大きなマグマだまりまで道ができれば、私は復活できるわ!」
「よし、わかった! 地中のマグマまで道を造るよ!」
「やったあ! そうこなくっちゃあ!」
カジュは喜びで飛び回る。おばばたち巫女は心配そうに見ている。テンジュはなんだか嬉しそうだ。
「さあ、やって! 今すぐやって!」
「カジュ、待って。今すぐは無理!」
この部屋までマグマを引き込むとなると、この部屋のエルフたちを避難させなければならない。この部屋にいたら、全員マグマで焼け死んでしまう。
「準備に5日ぐらいかかると思うから、待っててね。カジュ。」
「え~~~~~!」
カジュはだいぶ膨れたが、本質的には聡明な妖精なので、こちらの事情をわかってくれた。
エルフの里はジャイアントによる破壊活動でめちゃめちゃである。食料もほとんど食い荒らされていた。
「おばば様、俺たちの住んでいる天樹の空島に来ませんか?」
カズヤはエルフたちに、空島への移住を提案した。
空島は大きく、この里のエルフたち1万人をすべて受け入れても余裕である。
「カズヤ様、本当に良いのですか?」
空島移住の提案は、一も二もなく受け入れられた。一旦移住をした後でも、火の世界樹が復活してこの地が安定したら、ここに帰ってきたいものたちが帰ってくればいいだろう。そのときには、火の世界樹の力で、この寒冷の地が少しは暮らしやすくなるんじゃないかと思う。
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