6 鮫に追いかけられているのは・・・・・・人魚さんだ!
やっと、異世界冒険モノらしくなってきました。
メインヒロインの登場です。
念動力の使い方に慣れてきたので、移動することにした。
もちろん、自分が乗っている、海に浮かぶ巨大樹である天樹と共にだ。
天樹が動くイメージをして「動け!」と命じる。
天樹は、ゆっくりと、その巨体を動かし始めた。
何せ、太さは、直径10mぐらい。長さは100mぐらいある木だ。
圧巻である。タンカーが動いているようだ。
天樹は、波しぶきをあげながら、海を進んでいく。
目的地は・・・う~ん。実はまだ無い。何しろ、見える範囲に陸地は見えない。高度100mぐらいまで上昇してみたが、陸は見えなかった。
もっと上昇しようとも思ったが、まだ念動力に不慣れな点もあるので、もっと念動力に慣れてからにしようと考えた。
今は、とりあえず「東」に向かって進んでいる。
なぜ東かというと、北や南に向かうと、気温が変化する可能性があるからだ。
今の、心地よいこの気温を維持するなら、東か西だろう。
何もない大海原を、ひたすら東に進む。変化のない毎日だった。
食事は少しづつ充実している。
カニン・タコン・イカンはおいしい。
他にも、たくさんの種類の魚を食べた。
3mほどの大きさのマグロンが捕れたときにはテンションが上がったなあ・・・。
大トロって食べ過ぎると気持ち悪くなるんだな・・・。「俺は赤みが好き」っていう人の気持ちが分かった気がする。
木の枝には、スルメイカンの一夜干しがぶら下がっている。
蟹は、タラバガニン・タカアシガニンだった。焼きガニン最高!ちなみに、タラバが一番旨い。
不便も多いが、サバイバル最高!
平和な天樹での航海に、すっかり慣れた頃、それは、突然現れた。
何かが海面を割って空に大きくジャンプする。
1.5mほどの何かは、しばらく空を飛んでから、海に戻って行く。トビウオみたいだ。
ジャンプを繰り返す何かを視認する。手がある。長髪の頭?
上半身はニンゲンだけど、下半身が魚?女性?
あれ、人魚か???
「人魚だ! 本物だ!」
・・・人魚がサメに追われている。
鑑定ッ!
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人魚族〔ベティシア・ソプラ・マーリン〕 食用可
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〔アオザメン〕 食用可
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・・・俺の鑑定って、食用可か不可しか出ないの?
「速いっ!!」
人魚〔ベティシア・ソプラ・マーリン〕の泳ぐ速度は速い。
確実にアオザメンより速いだろう。しかし、多勢に無勢だ。
アオザメンは複数、人魚は一人だ。
それに、すでに、人魚は息が切れているようで苦しそうだ。
そして、人魚の体は傷だらけだ。少し、血も出ているみたいだ。
これは助けないと!
「人魚さ――ん!今、助けるぞ―――!!」
人魚とサメのどちらが善か悪かなんてわからない。でも、人魚の方を助けたい気がした。
だって、かわいいし・・・。
両手を人魚に向かって伸ばし「上がれ」と念じた。
「きゃあああああああ。 何? 何?」
空に打ち上げられた人魚は、海上10mぐらいのところでバタバタしている。
見えないまな板の上ではねている感じ?
アオザメンは、狙っていた人魚が、突然海からいなくなり、戻ってこないので戸惑っているようだ。ぐるぐる回遊している。
空に浮かべた人魚を、自分の方に引き寄せる。
「あなたは誰? 私をどうするつもり!」
人魚さんは、俺をにらみつけて言う。
おぉ、言葉がわかる!ありがとう神様!
「助ける!!」
「は?」
「君を助けたい! 今、アオザメンに追われていた君を見て、どうしても助けたくなった!」
人魚さんはポカ―――ンとしている。が、気を取り直したようだ。
「私、今、空に浮かんでいるんだけど、どういうこと? あなたの仕業?」
「そうだよ。俺がやってる!」
ドヤ顔で言った。
「あ、あぁ、ありがとう・・・。」
人魚さんを天樹の上にそっと下ろす。
この子、水の外でも呼吸は大丈夫そうだ。陸上でも呼吸ができるか少し心配だったからね。
人魚さんをじっと見る。
かわいい顔しているなー。
髪は深い緑色で緩いウエーブがかかっているなー。
長さは、腰ぐらいまで。
下半身は魚。映画とかで見た感じだ。
上半身は、残念ながら服を着ている。泳ぐのに邪魔にならないような、体にぴったりとした服だ。
素材は謎だな。
「なななな、何をじろじろ見ているのよ!」
見過ぎて怒られた・・・。
「俺は、サクラザカ・カズヤ! カズヤと呼んでくれ! よろしく!」
自己紹介でごまかした。
「あなた、人族?」
「たぶん・・・。」
「多分って何よ。まあ、助けてくれてありがとう。」
「おっ、おう。どういたしまして。」
こうして、俺と、人魚姫〔ベティシア・ソプラ・マーリン〕は出会った。
お読みいただいた方。
私の文章におつきあいいただき、本当にありがとうございます。
「もしかしたら、一人も読んでくれないのでは・・・・・・。」
と思っていたので、励みになります。