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57 カズヤの望みとテンジュの予言

「ジェイム、よくぞ使命を果たし、素晴らしい救援を連れてまいった。マリーン海皇国が無事であるのは、お前の働きのおかげである。よくやった!」

立派な城門をくぐると城下町になる。城下町の大通りに、出迎えの騎士が勢ぞろいしている。

「ドッドドンドン、パッパカパーン!」

 歓迎の音楽と太鼓やラッパの演奏がカズヤたち一行を出迎える。

 空には、美しい花びらも空に舞っている。


 大通りに詰めかけた人々から、大きな拍手と、声援が贈られる。

「「「「「「「「ベティシア様バンザーーーイ!」」」」」」」」

「「「「「「「「ジェイム様バンザーーーイ!」」」」」」」」

「「「「「「「「カズヤ様バンザーーーイ!」」」」」」」」

「「「「「「「「クエレブル様バンザーーーイ!」」」」」」」」

「「「「「「「「ポセイドン様バンザーーーイ!」」」」」」」」

「「「「「「「「スラニム様バンザーーーイ!」」」」」」」」

「「「「「「「「アルザム様バンザーーーイ!」」」」」」」」


 実際に魔皇軍を殲滅したカズヤとクレエブルだけでなく、国家反逆罪の汚名を被っていたベティにも、戦死したスラニムやアルザムにも声援が贈られる。

 海皇国の人々は、大切な人たちを失った深い悲しみと、再び明るい未来が訪れた喜びを感じながら、今を生きている。迎撃部隊の壊滅を知り、皇都の結界を魔皇軍に囲まれたときには、すべての人々が、間もなく訪れるであろう滅亡を意識した。しかし、今、魔皇軍の脅威は去った。そして、その脅威を退けてくれたのが、目の前にいる彼らであることを、この場にいる全員が認識していた。


 カズヤたちは、声を贈ってくる人々に、馬車から手を振って応えた。

 ベティシアは、もともと海皇国で非常に人気が高い皇女だった。そのベティシアが国家反逆罪の罪を着せられ、姿を消した時には、多くの人々がとても悲しんだ。ベティシアの無罪を訴える嘆願書も、そんな人々の手によって数多く作られ、皇宮に送られていた。

 救国の英雄を伴い、海皇国に無事戻ってきたベティシアの美しく可憐な姿を目にした人々は涙し、声をあげた。

「「「「「「「「ベティシア様! お帰りなさいませ!」」」」」」」」

「「「「「「「「ベティシア皇女様! バンザーイ!」」」」」」」」

 大きなダメージを受けた海皇国の人々にとって、ベティシアの存在は、まさに光だったのである。


「ベティ、大人気だね」

「やめてよカズヤ、恥ずかしいわ…」

 ベティは、人々に手を振りながら、照れて頬を赤くした。


 謁見の間に通されたカズヤたちは、出迎えた海皇国皇帝のポセイドンに頭を下げようとして止められた。

「皆さん、頭をあげてください。カズヤ殿、クレエブル殿、此度の救援、誠にありがとうございました」

 皇帝ポセイドンがこちらに頭を下げた。カズヤたちも皇帝に頭を下げた。


「ジェイム、よくぞ使命を果たし、素晴らしい救援を連れてまいった。マリーン海皇国が無事であるのは、お前の働きのおかげである。よくやった!」

「父上…、ありがたいお言葉、身に余る光栄です」

 いや~、ジェイム君はしっかりしているね~。

「ベティシア、会いたかったぞ。よく戻ったな」

「お父様!」

 ベティがポセイドンに駆け寄り、その胸に飛び込む。ポセイドンも、ベティをやさしく抱きしめた。

「お前がスラニムの毒殺を図ったと聞いたときには血の気が引いたぞ。 しかし、真実は従者の勝手な暴走で、お前が無実なのは調べて分かっていた。 わかっていたのに、お前を助けてやれなかった不甲斐ない父を許してくれ、ベティシア」

 感動の対面だな。ベティの罪も取り消されそうだし万々歳だ。


 ポセイドン皇帝は、俺たち11人それぞれに感謝とねぎらいの言葉を述べた。

 先日の炎帝来訪で少しは慣れたとはいえ、ガフもクレメンスも、本来ならば絶対に来ることが無い場所で、会うはずもない人に声をかけられるのだから緊張マックスである。

「皇帝様から直接お声をかけていただくなんて、恐れ多いことでございます。敵はすべてカズヤ様とクレエブル様がやっつけたんで、俺、いや私は何にもしてないんでございます。」

 冷や汗をだらだら流しながら、ガフが答える。


「料理人ガフよ、お主の料理はとてつもなく美味いと聞いている。今度、私にもふるまってくれないだろうか」

「は、はい、はい、もちろんでございます。喜んでおつくり致します」

 ガフはしどろもどろで答える。皇帝、本当に空島に食べに来そうだな…。炎帝一家が家に来たことも、もしかしたら知っているのか?


「カズヤ殿、私は海皇国皇帝として、そなたに礼をしたい 。何でも望みを言ってくれ」

 俺の望みは決まっている。

「ポセイドン様、望みは2つございます」

「おお、そうか、何でも言ってくれ」

「1つ目はベティシア皇女の罪を許してください」

「なんだ、そんなことか…。もちろんである。もともとベティシアに罪はないのだ」

「2つ目は、封印の間への立ち入り許可をください」

「封印の間への立ち入り許可とは…。 なぜ、封印の間に行きたいのだ? そもそも、なぜ、封印の間のことを知っているのだ? 皇帝の私ですら、入ることのできない所だぞ…」


「それは、私が説明するわ」

 テンジュが口を開いた。

「私はテンジュ、世界樹〔天樹〕の妖精よ。封印の間には、私の友である水の世界樹が封印されているの。あの子が眠りについたのは、今から5000年ほど前ね」

「なんと、5000年…皇国の伝承にも残らぬはずだな」

「5000年ぶりに、水の世界樹が目覚めるときが来たの。 目覚めさせることができるのは、そこにいるカズヤよ」

「こんな話を聞いて、断るなど考えられぬ。 よかったら私も連れて行ってはもらえないだろうか」

「もちろんよ。 皇帝の頼みを断ることなどできないわ。うふふ」


 皇帝に仕える近衛隊員や皇宮魔導師たちが、この会話を聞きざわめいたのは当然であろう。

 「閣下!危のうございます。おやめください!」

「何が起こるかわかりませぬ!」

といった声が多く上がっていたが、皇帝ポセイドンは、反対を押し切って俺たちに同行し封印の間に行くと言い切った。


 もちろん、今すぐに行く訳ではない。

 まずは、城での祝賀食事会となった。


 さすがは海の皇国、海の幸がどっさり用意されている。

 エビン・カニン・ホタテガイン・どれもこれも美味そうだ。

 タインやヒラメンの刺身もあるようだ。生で魚を食べる文化があるのはさすがである。

 しかし、刺身を食べる文化も、海米の白米を食べる文化もありながら、寿司は無いようだ。今度、うちのシェフに寿司を作ってもらおう。

 海小麦が採れるので、麺料理も盛んだ。いろいろな麺料理が並んでいる。面の太さはいろいろだが、どれもパスタに近い感じだ。ラーメンのような縮れ麺やうどんのように太い麺は存在していない。パスタソースはトマト、クリーム、バジルなど元の世界と変わりない。


 久しぶりに顔を見せたベティシアは、海皇国の人たちに囲まれている。みんな笑顔だ。ただ、苦い顔でベティを見ている人たちもちらほら見かける。おそらく、戦死した第1皇子勢力だった貴族たちだろう。もしかしたら、あまり人気のない第1皇女カサンドラの方かもな。


「ベティシア様は、皇宮に戻られるのですか?」

 そうベティに聞いているのは、ベティと仲が良かった友人たちだ。

 ベティの罪は許された。皇宮に戻ることは当然だろう。

でも、ベティがもし皇宮に戻り空島からいなくなったら、だいぶさみしくなると思う。クララも悲しむだろうな。

「私は皇宮には戻らない。今の私の居場所は天樹の空島なの。」

 ベティははっきりと言い切った。え?戻らないの?


「そんな…、せっかくお戻りになると思ったのに…。ベティシア様、なぜですか?」

 ベティと仲が良かった貴族の娘が肩を落とす。

 この海皇国にはベティシアの帰りを待ちわびている人が多いのだ。ベティシア皇女は、海皇国の花であり太陽であったのだから。


「私たち皇家には、皇家としての使命があるわ」

 騒がしかった会場が、いつの間にか静かになっている。ここにいるすべての人が、ベティシアの言葉に自然に耳を傾けている。


「我がマーリン海皇国皇家は、神の使徒を手助けするという使命を代々持っていることは知っていて?」

「はい、ベティシア様。存じ上げております。皇家に伝わる言い伝えですね」


「カズヤは神の使徒なのよ」

「「「「「「「「 !!! 」」」」」」」」

 その言葉に、会場は静まりかえった。

「私が、追手から逃れる途中でカズヤと出会ったことは天命だと思っているわ。私は、追われていたからこそ、カズヤに会うことができた。神の使徒であるカズヤと共にいることは、私の運命であり使命なのよ。だから、皇宮に戻ることはないの…」


「カズヤ様は、本当に神の使徒なのですか?」

 貴族の娘が聞いてくる。あ~、この質問、炎帝の所でもされたな~。


「そうよ。カズヤが神の使徒であることはカズヤの行動が示しているわ。天の世界樹を復活させ本当の姿を取り戻し、妖精と龍を従える。そして、我が海皇国の危機に天龍と共に表れ、すべての敵を撃退し、救国の英雄となった。これが神の使徒でなくて何なわけ?」

 ぐわ~、二回目!恥ずかしい。ベティさん、何だか言い慣れてないかい?そんなドヤ顔で…。


「「「おお、では、ベティシア様は神の使徒にお仕えするのですね」」」

 会場中がどよめいた。そして、静かになった会場の真ん中に、ふわりとテンジュが舞い上がった。目立つ!


「私はテンジュ、天の世界樹の妖精よ」

 宙に浮くテンジュは、いつもは隠している妖精の羽を広げている。そのアゲハ蝶の羽のような美しい羽根は透き通り、淡い光の粒をまとっている。気高く美しいその顔に、やさしい笑顔を浮かべ、両手を差し出しながら会場の人々に語り掛ける。


「神の使徒カズヤは明日、この海皇国で5000年の眠りについていた〔水の世界樹〕の封印を解き、復活させるわ。あなたたちは、歴史が変わる瞬間に立ち会うことになるわよ」

「「「「「おおおおおおおお!」」」」」

 テンジュ!いきなりどうした?おまえも俺の使徒認定か? ベティへの援護射撃なのか? テンジュはすごいドヤ顔だ。


 その後の会食では、使徒のこと、水の世界樹のことについてだいぶ聞かれた…。俺も詳しくは知らないよ!笑ってごまかしたよ。ちょっとつらかったよ。いろんな人から話しかけられ通しだったから、食事は満足に食べられなかったよ…。ごちそうが並んでいたのに…。屋敷に戻ったら、ガフに食べるものを作ってもらおう。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

今後も、おつきあいいただけるようお願い申し上げます。

今後もがんばって続けますので、

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