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43 メイドの独り言

今回は、メイドさん視点です。

Side メイドのアデリナ


 私の名はアデリナ。数日前に天樹の空島に働きに来たメイド。

 私の家は今にもつぶれそうな小さな商店。父と母が二人で懸命に働いているけれど、商売はあまりうまくゆかず、日々の暮らしは貧しかった。

 私も小さいころから働いている。家が貧しいからしょうがない。凍えるような寒さの中、母と二人で貴族の館の掃除や片付けまでしたわ。


 ある日、街にドラゴンが飛んできて大騒ぎになったわ。

私の家は、領主様の館から遠く離れているのでこの眼では見ていないけれど、本物のドラゴンを見た友達が、興奮してその様子を語ってくれたの。すごく大きくて強そうな灰色のドラゴンが領主様のお城に降りて行ったんですって。そして、そのドラゴンの背中に人が乗っていたから、すごくびっくりしたんだって。

 街の外には、いつの間にかすごく大きな山がやってきていたわ。その山は『死の山』と言われるボダーラ山、山には恐ろしい魔獣がいっぱいいて、入った人はみんな殺されちゃったんだって。そんな山が空に浮いて、街の近くまで来ているんだからびっくりよね。

 でも、私は、怖さよりもドキドキ感が強かったの。おとぎ話が現実になったようで、あの山に行きたいって本気で思ったわ。ドラゴンもこの眼で見たかったの。


 ある日、天樹の空島にある屋敷で、働き手を探しているという噂を聞いたの。

 私は、父と母の反対を押し切って、すぐにデカランプ商会に行って申し込んだわ。

 デカランプ商会のゲオルグさんと私の父は、若いころからの友人なんだって。父が『娘を頼みます』と頭を下げてくれたのがうれしかったわ。


 面接の日、天樹の空島のお屋敷のご主人様と初めてお会いしたわ。この方が、龍の背に乗ってお城に行ったというカズヤ様ね。思ったよりもお若くて、やさしそうな方だったわ。


 私は、見事合格して、お屋敷で働けることになった。すると、メイドに合格した私たち5人全員に金貨が50枚ずつ渡されたの。もう、びっくりよ!金貨50枚よ!そんな大金見たことも触ったこともなかったわ。

「このお金で、これからの準備を整えるように。」

と言われたけれど、何をどう準備したらいいか全然わからなかったの。

 他の4人も同じだったようで、私たち5人そろって、執事のクレメンスさんにどうしたらいいか聞いたの。そうしたら、お屋敷で使う服や下着、靴、たんす、布団なんかを買いなさいっていうことだった。住み込みで働く私たちのお部屋には、ベッドはあるけれど、布団や枕は無いんだって。冬用と夏用と両方用意しなさいって言われたわ。たんすは小さめのものを買いなさいって。


 パンを買いに行くぐらいしか経験のなかった私たちは、5人で一緒に買い物に行くことにしたの。こんな買い物、一人じゃ心細くてできないわ。買い物には、大きな商店で働いているレベッカのお母さんもついてきてくれたの。とても物知りで、心強かったわ。

 今まで、入ろうと思ったこともないおしゃれなお店で服や下着を買い、お布団屋で、5人おそろいの毛布を買ったわ。金貨をお財布から取り出して、お店の人に手渡すときには手が震えたの。私はもう、幸せで、楽しくて、その先の不安なんて忘れちゃったぐらいよ。たんす選びも楽しかったわ。たくさんのお店を回って、お気に入りのたんすを選んだの。お屋敷にふさわしいような、質のいい物を買いなさいって言われていたから、思い切って高いタンスを選んじゃった。


 天樹の空島には、ご主人様の不思議な力で空を飛んで行ったの。

 自分が冒険物語の主人公になったみたいで、思わず「キャーーーーーーっ!」って叫んじゃったの。空から見た景色はきれいだったなあ。でも、ビビアンは高いところが怖かったようで、ずっと目を閉じて震えていたわ。


 天樹の空島のお屋敷は、思っていたよりも、ずっとずっと立派なお屋敷だった。ここで働くんだって思ったら、もっとうれしくなっちゃった。

 お屋敷の皆さんは、私たちを歓迎してくれたわ。

 歓迎会のごちそうは、ほっぺが落ちるくらいおいしかった。世界樹の葉っぱのサラダを食べたときには、あまりのおいしさに気を失いかけたわ。全部のお料理が、見たこともないようなご馳走だったの。感動しすぎて、ちょっと涙が出ちゃった。


 食事の後に、私たちが暮らすお部屋に案内してもらったんだけど、このお部屋にも驚いたわ。すごく広いの。5人一緒で済まないねって言われたけれど、5人一緒の方が心細くなくって嬉しいわ。

 広いお部屋には、かわいいベッドが5つ並んでいたわ。小さな机と椅子まで5つずつあったの。あの机と椅子も、私たちが使っていいのかしら?

 それぞれのベッドの横に、私たちがそれぞれに選んで買ってきたタンスを置いたわ。そして、たんすの中に買ってきた新品の服を入れ、新品のお布団をベッドに置いたわ。

なんて素敵なのかしら。本当に、これからここで暮らせるの?小さい頃に1回だけ泊まったことがある高級宿屋のお部屋よりもずっといいお部屋よ。


 私、こんなに幸せでいいのかしら?

 お屋敷のお仕事頑張らなくっちゃ!ご主人様のために、どんなお仕事でも一生懸命やるわ!そして、お金をためて、私のお店を持つの!


こういう話が大好きです。

これは書いていて、すっごく楽しかったです。

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