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37 空島で働きたい人たちが集まりました

従業員の採用面接です。

カズヤ達は、面接官などができるのでしょうか?

「ゲオルグさん、ここに白金貨100枚があります。この100枚と、残り250枚分は世界樹の葉と樹液で支払うことは可能ですか?」

「世界樹の葉と樹液ですか? もしかしたら、世界樹の枝も入手可能ですか?」

「ああ、はい、可能です。」

「ぜひ!ぜひともお願いします!!!」

 それまで冷静でダンディだったゲオルグさんが、世界樹の名前を出したとたん、急に興奮してグイグイ来るようになった。世界樹の素材がそんなに欲しいの?


「できれば、白金貨での支払いはゼロにして、すべて世界樹の素材でお願いします!」

「はい、でも、量によりますので…。どのくらいの量を渡せばいいですか?」


「世界樹の葉は、1枚あたり白金貨1枚、世界樹の枝は、太さにもよりますが、細い枝で1本白金貨10枚、腕ぐらいの太さなら100枚です。 世界樹の樹液は、この小さなビン1つで白金貨10枚の計算でいかがでしょう。」

「わかりました。世界樹の葉なら、350枚でいいわけですね。」

「はい、そうなります。が、よろしければ、葉だけでなく、いろいろな素材をお持ちいただけたら、大変うれしいと存じます。」

「じゃあ、世界樹の葉100枚と、枝大小10本、樹液1樽でいいですか?」


 俺は、アイテムボックスから、世界樹の葉と枝を取り出した。俺のアイテムボックスには、常に世界樹の葉が1000枚は入っている。…野菜代わりに食べるために。

 枝は、樹液を飲むごとにポキポキと折っているので、折られた先の枝が大量にストックされているのだ。シャワー用にと折った枝などは結構太い。

 樹液も、もしもの時の治癒ポーションに、そして、便利でおいしい栄養ドリンクとして、常に100樽ほど持っている。樽1個は、およそ1リットルぐらいだろうか。 どんなに貴重品でも飲むのはやめられないよ!だって、おいしいんだよ。


「おお、これが伝説の世界樹の素材! 初めて見ました!」

「間違いなく、全部本物ですよ。 世界樹の妖精のお墨付きです。 効果も保証します。 その樹液は、龍でも治せなかった呪いを完治させた代物ですよ。」


「おお、なんと素晴らしい。 神様、この出会いに感謝を! 商談成立です! このお屋敷は、たった今からカズヤ様のものです!」

 ゲオルグさんが、最高の笑顔で声高らかに宣言する。

「書類とか、手続きとか、保証人とか必要ないの?」

「領主様直々の紹介であるカズヤ様には、必要ありません。」

 超一流の大豪邸が、伝説の希少素材ではあるが、カズヤにとってはタダ同然の素材と交換で、簡単に手に入ってしまった。


「これだけ大きな屋敷となると、庭の管理人や、屋敷の管理人が必要となりますが、どういたしますか?」

 そうだよね。それは大きな問題だよ。

 従業員を雇わないといけないな。でも、天樹の空島に来てくれる人なんているのかな。

「従業員を雇うのならば、紹介してもらえますか?」

「どのような人員をご希望ですか?」


「この屋敷は、天樹の空島に移設します。ですから、この屋敷で働くということは、地上を離れ、あそこに浮かぶ天樹の空島で暮らすということです。 しかも、その屋敷で暮らすのは、一般人の俺はともかく、皇女とエルフと龍と妖精ですよ。普通じゃない…。 それでもいいという人は少ないんじゃないかなあ。」

「…確かに、そうでございますね。 少々お時間をいただければ、私の商会で候補者をお探しいたします。 その候補者をご覧になって、気に入っていただけたら採用という運びでいかがでしょう。」

「うん、そうしてくれると助かるな。」


 俺たちは、このミーニル領の観光をしたり、買い物をしたりと、のんびり日々を過ごした。街の人々は、皆、好意的だった。現代日本と違い、店に商品の各種サイズが揃っているわけではないので、服や靴を買うのに、採寸、仕立てが必要である。そうこうしているうちに、日々は過ぎた。クレエブルは、服と靴だけ買ってさっさと山に帰っているので、行動は俺とベティとエルミアの3人である。

 宿泊は、領主の館で、居心地抜群である。


 数日後、従業員候補者が集まったので見に来てほしと商会から連絡があった。


 俺たちがデカランプ商会に到着すると、ホールに従業員候補者たちが集まっていた。

「カズヤ様、ここにいるのが、カズヤ様のお屋敷で働きたいと考えている従業員候補です。」


「まずは、執事候補です。クレメンス、前へ。」

 ゲオルグさんの呼びかけに答えて、黒の執事服に身を包んだダンディーなおじさまが前に進み出た。長身、オールバック、年は40ぐらいか…。見るからに執事である。

「このクレメンスは、大変有能な男です。今まで、とある貴族の下で執事を務めてたのですが、今回、わざわざ貴族の執事を辞めて、ここに来ています。」

「どうして、貴族の執事を辞めてまで、ここに来ようと思ったんですか?」

と、俺は聞いた。

「はい、天樹の空島は男のロマンです。私は、あの天樹の空島を一目見たときから、どうにかしてあそこに行けないものかと考えておりました。そこに届いたのが、今回の募集でございます。私はどうしても空島で働きたいのです。そして、このお屋敷には、伝説の龍まで住まわれるというではないですか。これは天啓だと思いました。カズヤ様、無給でも下男でも構いません。この私を天樹の空島のお屋敷で雇ってください。」

 おう、思ったより熱い人だった…。


「次は、屋敷の中を管理する者たちです。ブレンターノ一家は前へ。」

 今度は、5人が前に進み出た。

 あれ?これは家族?両親とおじいちゃんに、子ども2人?

「このブレンターノ一家は、とある事情でデカランプ商会が預かっている状態です。皆働き者で、素性のはっきりした信用できる家族です。」

 一家の最年長、おじちゃんが口を開いた。

「わしらは、ボダーラ山にほど近い場所で山守をしておりました。 山守というのは、ボダーラ山の異変を調べ、いち早く領主様にお知らせする監視役のような役割でございます。 今回、ボダーラ山が飛び立つ時に起こったがけ崩れによって、わしらの家は壊れてしまいました。 そして、監視対象のボダーラ山もなくなってしまったので、わしらは途方に暮れておりました。それを救っていただき、今回のお話をくださったのがゲオルグ様でございます。」

 あちゃ~、これはまいった。この人たちは、俺たちの被害者だね…。

「精一杯働きますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。」

とお父さんとお母さんが頭を下げた。

 お兄ちゃん(13歳ぐらい?)も「よろしくお願いします。」と、頭を下げ、つられた妹(4歳ぐらい)も「おねがいしましゅ。」と可愛らしくお辞儀をした。

「働き場所は天樹の空島だけど、いいんですか?」

「はい、もちろんでございます。」

「なかなか地上には降りられないし、龍も一緒だけど、いい?」

「はい、精一杯お仕えいたします。」


「最後に、庭師でございます。大工仕事もできるので、屋敷の周りの管理ができます。」

 人のよさそうな顔立ちの、年若い青年が前に進み出た。

「私は、庭師のステファンと申します。 正直に申し上げますが、私はベティシア様の大ファンでございます。 以前、ベティシア様がこの国の皇都においでになったときに一目拝見してから、その気品あふれる美しさに心を打たれ、民をいたわるやさしい言葉に心を癒されました。 ベティシア様のお住まいになられるお屋敷の庭の管理ができるなど、望外の喜び、美しく咲く花を立派に育て、ベティシア様を喜ばせて差し上げたいというのが私の願いでございます。」

「採用!」

と、ベティ。さすがチョロイン。いいけどさ…。


なんだか、全員採用されそうです。

ちょろい試験です。

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