21 領主との面会
領主様と面会します。
カズヤは、自分の力の一端を見せるようですよ。
Side【リーベの町】
「カズヤ様、領主からのお迎えが到着いたしました。」
迎えの到着を知らせてくれたのは、カサンドラさんだ。
俺は、先日、海賊討伐の栄誉をたたえるということで、領主から招待を受けていた。
賞金の受け渡しも、その場で行われるようだ。商会の副代表リハードさんの説明では、皆の前で、大々的に賞金を渡すことで、嘘偽り無く領主が賞金を払っているのだということを知らしめ、信頼を高めるのが狙いだそうだ。
俺は、この町で、カサンドラさんの勧めで買った、普段よりもおしゃれ度の高い服を着て、迎えの豪華な馬車に乗り込んだ。もちろん、ベティも一緒である。ベティが共に行くことも、領主には事前に伝えてある。ベティもこの町で買ったドレスを着ている。着こなしも素晴らしく、見違えるようにきれいである。さすが皇女殿下。
領主の屋敷まで、馬車で3時間ぐらいだそうだ。道は、よく整備されている。
道中、盗賊襲撃などのイベントも無く、無事に領主の屋敷がある町【ベリルン】に到着した。
ベリルンは、なかなか発展した街だ。人通りも多い。地方の県の県庁所在地のような感じだろうか。
道行く人は、人族だけでは無い。頭に獣耳がある人や、は虫類のような姿の人もいる。なかなか雑多だ。これぞ異世界って感じがする。
見慣れない姿を目にすると「鑑定」をしたくなる。
こっそり鑑定! 道行く人を鑑定する。まずは、あの爬虫類みたいな人だ。
**************************
蜥蜴人族〔エーゴン〕男 怪力・水中歩行 食用可
**************************
お~っ、蜥蜴(蜥蜴)人族ということはリザードマンか~。ファンタジ~。
次っ、鑑定っ!
**************************
狼人族〔ベンノ〕男 変身・跳躍 食用可
**************************
鑑定っ!
**************************
猫人族〔アルノルト〕男 隠密・風魔法 食用可
**************************
いや~、雑多だな。みんな、何らかの能力を持っているんだな~。俺の鑑定、少しグレードアップしたのかな。説明が少し詳しくなっているようだ。
そうこうしているうちに、領主の屋敷に到着した。
「なにこれ、城じゃん!」
・・・そこにあったのは、屋敷などという代物では無かった。高い城壁に囲まれた、立派な城そのものだった。
「そうね。このハイデルベルグ領は、非常に豊かな領だから。それにここは、領主の館ではあるけれど、それだけで無く、門の中には病院や公的な事務所もたくさんあるのよ。」
・・・なるほど、県庁や病院も城壁に中にある訳か、そりゃあ大きくなるはずだ。
俺たちは、すぐに謁見の間に通された。
きっと、一緒に来たベティの皇女様効果だろう。地位でいったら領主よりも皇女の方が圧倒的に上。そんな皇女を、長く待たせるわけにはいかないだろうからね。実は、追われている身なんだけどね・・・。
「ベティシア様、お久しぶりでございます。お元気そうでなによりです。」
「ディートリヒ・ドラッチェ公、本日の招待を感謝いたします。」
「貴殿が、カズヤ・サクラザカ殿か?」
「はい、そうです。」
「絶海の海賊団および獄炎のヘルゲ、瞬光のバルブロらの討伐、誠に見事であった。」
「ありがたき幸せにございます。」
「あやつらに家族を殺されたものがたくさんいる。 凶悪な絶海の海賊団の討伐は、我がハイデルベルグ領の悲願であったのだよ。 私も今までに、何度となく討伐部隊を送っている。 しかし、すべて返り討ちに遭い、打つ手が無くて困っていたのだ。
カズヤ殿が海賊を討伐する様子については、目撃者から聞き及んでいる。数人に聞いたが、すべて証言が一致するので間違いでは無いようだが、どうにも信じられん話なのだ。
カズヤ殿の力、念動力を見せてはもらえないだろうか。」
・・・やっぱりそう来たか。予想通りだね。今後のためにも、俺の力で見せられる部分は、十分に見せておこう。
「力の一端をお見せいただけるかね。」
「わかりました。では、私の力をお見せします。 その窓から、ため池が見えますね。」
「うむ、見える。あれは、水不足に備えるために、この城に備えているため池だ。」
「あの水を、持ち上げます。それでいかがですか?」
「ほう、水を持ち上げると・・・。盗賊どもをまとめて空に上げたと聞いておるからな。」
城の中庭にある、備蓄用のため池の水を持ち上げてみせることにした。池の広さは10m×10mほど、深さは3mほどらしい。
幸い、近くに人影は無い。失敗してもけが人が出ることはないだろう。
「念動力!」
おれは、ため池の水を視認し、持ち上げるように念じた。俺から見えない手が伸び、池の水を持ち上げる。池の水は、きれいな立方体を保ったまま上空に上がってきた。
「「「おお!すごい!」」」
どよめきが部屋に広がった。
「すさまじい力だ! 水というものは、なかなかに重いのだぞ。 戦の兵站でも、一番苦労するのは水の運搬だ。 あれだけの水を移動するためには、兵站用水槽が300ほど必要になる。その水槽一つは、通常20人で運搬しておる。単純計算で、今持ち上げている水を運ぼうと思ったら、兵士6000人が必要であろう。」
「兵士6000人分と同じ働きということですか?」
と、ベティ。
「そうなるな。さて、カズヤ殿、確かに貴殿の力は見せてもらった。 ・・・あれより多くの水は上げられるのか?」
「そうですね。あの水の100倍ほどなら持ち上げたことがございます。」
「・・・なんと、あの100倍とは・・・・・・。それが誠なら、兵士60万人分であるぞ・・・。」
「カズヤ殿、・・・・・・我に仕える気は無いか? 最高の待遇で迎えるぞ。」
「ありがたきお言葉ですが、私には、どうしてもやらなければならないことがございますので・・・・・・。」
「それは何だ?」
「この世界を守ることです。」
「ワーッハッハッハー! なんと、世界を守るか! では、こんな小さな領に留まることはできんな! これは愉快! 他の者が言ったならば世迷い言だが、カズヤ殿が言うと真実に聞こえるぞ!」
どうやら、俺は領主に気に入られたようだ。
「困ったことがあったら、何でも申し出るが良い。我が力になろう!」
という言葉と共に、討伐の賞金である、白金貨300枚を受け取った。3億円だよ!
また、賞金と共に、ハイデルベルグ領はおろか、陸の皇国内なら、どこでも通行可能となる、領主直筆の証書ももらった。この証書があれば、身分的には騎士以上の待遇が保証されるので〔騎士〕を名乗っていいらしい。これは、ベティと行動を共にするうえでも、今後非常に役に立つだろう。
「騎士か・・・。じゃあ、俺は、ベティの騎士だな。」
「ふふっ、うれしい。」
その夜は、城でパーティーが開かれた。
たらふく食べて、飲んで、気持ちの良いパーティーだった。
何人もの人から、海賊討伐を感謝された。
「友の仇を討ってくださって、ありがとうございした。」
と、涙を流す若い騎士もいた。先の海賊討伐対で、その友達は海賊の返り討ちに遭い、若い命を散らせたそうだ。
ここまでお付き合いいただき感謝です。
ブックマークしてくださる方が増えてきてうれしいです。




