プロローグ
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「……もう一度言ってもらってもよろしいでしょうか?」
頭を鈍器で殴られたよう後のように思考がうまくまとまらず、何とか俺はその言葉を絞りだした。
「わかりました」
目の前の女の子がそう答える。
年下のはずなのに、純潔を表す純白の修道服に身を包み、こちらの不安を見透かし安心させるように微笑むその姿は母性すら感じてしまう。
しかもその容姿の美しさに加え、美しく滑らかな銀髪が日の光を受けまるで何かに祝福されているかのような輝きを放ち、触れてはいけない芸術品のような雰囲気すら纏っていた。
彼女はまさに俺の頭の中にある聖女のイメージ像そのままで、もしかしたらすべて俺の妄想なのではないかと本気で疑っていた。
目を閉じまた開けると、閉じる前と変わらず少女の姿が目に映る。それは当然のことのはずなのに、今はそれが信じられない。
さっきまで騒がしかったはずの広場はすでに完全に静まりかえり、周囲の視線は俺たちに集まっていた。だがそれを気にする素振りもなく、ただ俺だけを見つめ少女はもう一度、
「好きです。どうか私と付き合っていただけないでしょうか」
とありえない言葉を口にした。
それは、つい先ほど彼女自身が言った言葉と一言一句違うことのないセリフだった。
つまりさっきの言葉は聞き間違いでも幻聴でもないことになる。
周囲の男たちの殺意に溢れた圧力がますます強いものになるのを感じる。胃がキリキリしてきた。
現状が、うまく理解できない。
彼女とは長い付き合いがあるわけではない。というか、出会ったのはついさっきだ。危ないところを助けるというイベントがあったわけでもなく、突然であったと同時に告白された。
それなのに、そんなことを言われて「はい、そうですか。じゃあ付き合いましょう」といえるほど、俺は図太い性格ではなかった。
すべてが演技で俺をからかっているか金でもたかるつもりだといわれた方が納得がいくが、そんな気配は一切ない。かなりガチな告白だった。
こんな事態にどう対応すればいのかコミュ障の俺にわかるはずもなく、頼みの連れもあたふたとしているだけで全く助けに入ってくれる様子はない。本当に役に立たない連れだった。こいつはいつ俺の役に立つのだろうか?
いっそのことすべてを置いて逃げてしまおうかと思ったとき、ふとある考えが俺の頭をよぎり、
なるほど! そういうことか!
その瞬間、この訳の分からない状況がおきた理由をすべて察することができた。
自虐ではないが、俺は顔がいいわけでもないし、何か特技があるわけでもない。決して美少女にひとめぼれされるような人間ではない。
だが、今まさに『出会ったばかりの超絶美少女に告白される』という、なろう小説でもめったにないレベルの御都合主義のイベントが起きている。
なぜそんな矛盾が起きているのか?
決まっている。
チート能力だ。
これが俺のチート能力なのだ。
転生する前にもらったはいいが、どう使えばいいのかわからずずっと宝の持ち腐れ状態だった俺のチート能力が、今ようやくこういう形で発揮されたのだと俺は理解した。