表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

コンビニ店長

「ハネケ、どこいってたんだ? お前がいないと店の売上げが下がってしまうので困るんだよ」


 コンビニの犬神店長がハネケに話しかけてくる。

 結菜と別れて、真夜中過ぎにハネケは猫目町三丁目のコンビニに辿りついた。

 猫又退治でへとへとになっているので眠りたいところだ。


「眠いのか? ベッドを用意してるからここの棚で寝てくれ」


 犬神店長に抱え上げられて、レジ前の上段の棚の楕円形のふかふかベットに横たわる。

 ハネケ目当ての深夜の客が途端に群がってくる。 

 そこはハネケの特等席で周りにはキャットフードやら猫砂やら服などの猫グッズが陳列されている。

 最近のヒット商品はハネケに似た『三毛猫リュックサック』で学生を中心によく売れていた。

 とりあえず、猫関連グッズにしてしまえば本当によく売れる。

 ハネケが睡眠中は『撫でるの禁止、見るだけ』の張り紙がしてあるが、お客はハネケの寝顔に満足して猫グッズを買っていく。一応、ハネケのエサ代やら何やらにもなるというポップがついているので、投げ銭とか募金のようなものである。

 それ用の安い猫のイラスト入りのお菓子なども置いていた。


「深夜パトロールのネズミ狩りで疲れたか?」


 犬神店長はハネケに話しかけるのが日課になっていて、ハネケに話しかけてくるというか、いつもひとりごとをいう。

 メガネをかけていて、短く刈り上げた髪、人の良さそうな笑顔を振りまいてる。

 コンビニのユニホームが似合う温和な感じの人間である。

 猫がネズミを狩るのは夕方薄暗い頃か夜明け前後と言われていて、その時間帯にネズミがよく動く。

 その縁で稲作をはじめて穀物を貯蔵するようになった人類にとっては猫は益獣になり、人の便利なパートナーとして長い付き合いがはじまった。

 今では飼い猫が増えたので、ネズミもあまり捕らない猫が増えてるが、ハネケは元は野良猫なのでよくネズミを狩っている。

 猫は夜行性だが、真夜中はひと休みしてることも多いのだ。

 ハネケは昼間もゴロゴロしたり昼寝ばかりしている。

 一日のうちほとんどは遊んで暮らしていることになる。

 いい生活である。

 とりあえず、疲れたのでハネケはついにすやすやと眠りはじめた。


「ハネケ、眠ったのか?」


 犬神店長はしばらくハネケを見ていた。


「……猫又は強かったか? これからも頑張ってくれよ」


 犬神店長は小さな声でつぶやいた。

 瞳に不思議な光が宿った。

 それはまるで野生の狼のように一瞬、みえた。 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ